国会ではTPPに関する審議が行われているが、野党の要求に対して政府が出してきた資料がタイトル以外すべて黒塗りだったことで紛糾している。というわけで、今回はTPPに関して書きたい。以前書いた記事と重複する部分もあるが、政府の問題行動をときどき思い起こそうという当ブログのコンセプトにしたがって、あらためて書いておく。
まず第一にいっておきたいのは、自民党がかつてはTPP断固反対といっていたことだ。
2012年の衆院選で自民党が「ウソつかない。TPP断固反対。ブレない。」というポスターを掲げていたということは、去年の大筋合意の際にも取り上げられ、画像が拡散されていた。
この「約束を破ったと」いうことにくわえて、「黒塗りの文書」に象徴される交渉経緯の不透明さも大いに問題だ。
政府の説明によれば、交渉の過程は4年間は公表しないことになっているそうだが、その取り決め自体がそもそもおかしいわけである。4年間も隠しておかなきゃいかんようなことをやっているのかという話になってくる。
しかも、それでありながら自民党の西川議員が出版予定の本にはその交渉経緯が書かれているというのだから、いったいどうなっているのかまったく理解不能である。国家間の取り決めで秘密にしておかなければならないというのなら、その内幕を本に書いた人物が特別委員会の委員長を務めているというのは、問題があるのではないか。
そして、政府が主張する「経済効果14兆円」という数字も、じつに胡散臭い。
というのも、この数字は政府が数年前に試算として出した数字から跳ね上がっているのである。この点に関しては、昨年12月にこの数字が出てきたときに共産党の小池晃議員が辛らつに批判しているので、その発言を紹介したい。
《2年前、環太平洋経済連携協定(TPP)の経済効果を内閣が試算したときは、実質国内総生産(GDP)が3・2兆円増加するとしていたのが、今回は約14兆円。4倍以上になった。びっくりしましたね。同じ内閣で2年たってなんでこれだけ変わるのか。キツネにつままれた気分です。「この内閣が計算するものは信用しないでくれ」と、言っているような感じがする。ほとんど手品師の世界。》
さらには、アメリカ側の大統領候補者は、民主党・共和党いずれでも、勝ちそうな見こみのある候補はほとんどTPP反対もしくは慎重姿勢という問題がある。仮に日本国内での手続きが進んだとしても、このまますんなり行くかは不透明なのだ。
また、TPPは食糧安全保障という観点からも問題があるといわれている。
TPPによって、日本国内の農林水産業は大きな打撃を受け、食糧自給率は低下する可能性が高い。その状況で、海外で食糧危機が発生したら、食糧供給が滞るおそれがある。
さらには、コミケなどいわゆる「二次創作」の世界からも懸念の声が出ている。
TPPによって、著作権侵害が親告罪でなくなると、二次創作の描き手がある日突然起訴されるというような事態が生じるおそれがあるともいわれている。そういうおそれから、これまではオリジナル作者の側が黙認することで成り立っていた二次創作の世界が萎縮してしまうという懸念だ。二次創作の世界は、海外でも高く評価されている日本の漫画・アニメ・ゲームといった業界を下支えする広い裾野をになっているといわれていて、そこが萎縮していけば、いわゆる“クールジャパン”にも悪影響を与えるかもしれない。
最後に、「TPPによって輸入品の価格が安くなる」というのも、アベノミクスにとってよいこととはいえない。
リフレ派の主張というのは、たとえ輸入品価格の上昇によるものであろうと物価が上昇すればそれはそれでよしとする発想に立っているはずである。その考え方が正しいかどうかはともかくとして、そういう前提に立つなら、輸入品の価格が下がるということは経済にとってむしろよくないということになる。輸入品の価格が下落して倹約志向を強めている消費者がその輸入品に殺到すれば、国内の生産者は大きな打撃を受け、デフレ基調が強くなっていくだろう。そうなれば、ただでさえもう不可能観がただよってきている物価上昇2%の目標が遠のくばかりだ。現状での物価上昇はほとんどが円安による輸入品価格の上昇によるともいわれていて、そうすると「TPPによって輸入品の価格が安くなる」というのは「よいこととはいえない」どころではなく、リフレ政策に致命的な一撃となるかもしれない。
まず第一にいっておきたいのは、自民党がかつてはTPP断固反対といっていたことだ。
2012年の衆院選で自民党が「ウソつかない。TPP断固反対。ブレない。」というポスターを掲げていたということは、去年の大筋合意の際にも取り上げられ、画像が拡散されていた。
この「約束を破ったと」いうことにくわえて、「黒塗りの文書」に象徴される交渉経緯の不透明さも大いに問題だ。
政府の説明によれば、交渉の過程は4年間は公表しないことになっているそうだが、その取り決め自体がそもそもおかしいわけである。4年間も隠しておかなきゃいかんようなことをやっているのかという話になってくる。
しかも、それでありながら自民党の西川議員が出版予定の本にはその交渉経緯が書かれているというのだから、いったいどうなっているのかまったく理解不能である。国家間の取り決めで秘密にしておかなければならないというのなら、その内幕を本に書いた人物が特別委員会の委員長を務めているというのは、問題があるのではないか。
そして、政府が主張する「経済効果14兆円」という数字も、じつに胡散臭い。
というのも、この数字は政府が数年前に試算として出した数字から跳ね上がっているのである。この点に関しては、昨年12月にこの数字が出てきたときに共産党の小池晃議員が辛らつに批判しているので、その発言を紹介したい。
《2年前、環太平洋経済連携協定(TPP)の経済効果を内閣が試算したときは、実質国内総生産(GDP)が3・2兆円増加するとしていたのが、今回は約14兆円。4倍以上になった。びっくりしましたね。同じ内閣で2年たってなんでこれだけ変わるのか。キツネにつままれた気分です。「この内閣が計算するものは信用しないでくれ」と、言っているような感じがする。ほとんど手品師の世界。》
さらには、アメリカ側の大統領候補者は、民主党・共和党いずれでも、勝ちそうな見こみのある候補はほとんどTPP反対もしくは慎重姿勢という問題がある。仮に日本国内での手続きが進んだとしても、このまますんなり行くかは不透明なのだ。
また、TPPは食糧安全保障という観点からも問題があるといわれている。
TPPによって、日本国内の農林水産業は大きな打撃を受け、食糧自給率は低下する可能性が高い。その状況で、海外で食糧危機が発生したら、食糧供給が滞るおそれがある。
さらには、コミケなどいわゆる「二次創作」の世界からも懸念の声が出ている。
TPPによって、著作権侵害が親告罪でなくなると、二次創作の描き手がある日突然起訴されるというような事態が生じるおそれがあるともいわれている。そういうおそれから、これまではオリジナル作者の側が黙認することで成り立っていた二次創作の世界が萎縮してしまうという懸念だ。二次創作の世界は、海外でも高く評価されている日本の漫画・アニメ・ゲームといった業界を下支えする広い裾野をになっているといわれていて、そこが萎縮していけば、いわゆる“クールジャパン”にも悪影響を与えるかもしれない。
最後に、「TPPによって輸入品の価格が安くなる」というのも、アベノミクスにとってよいこととはいえない。
リフレ派の主張というのは、たとえ輸入品価格の上昇によるものであろうと物価が上昇すればそれはそれでよしとする発想に立っているはずである。その考え方が正しいかどうかはともかくとして、そういう前提に立つなら、輸入品の価格が下がるということは経済にとってむしろよくないということになる。輸入品の価格が下落して倹約志向を強めている消費者がその輸入品に殺到すれば、国内の生産者は大きな打撃を受け、デフレ基調が強くなっていくだろう。そうなれば、ただでさえもう不可能観がただよってきている物価上昇2%の目標が遠のくばかりだ。現状での物価上昇はほとんどが円安による輸入品価格の上昇によるともいわれていて、そうすると「TPPによって輸入品の価格が安くなる」というのは「よいこととはいえない」どころではなく、リフレ政策に致命的な一撃となるかもしれない。