鎖だらけの国を指弾しろ
なに? 自由の国だって?
お前にそう教えたやつこそがお前の敵さ
――Rage against the Machine, ‘Know Your Enemy'
最近、当ブログでは音楽ネタもよく扱っているので、今回はその流れでいきたい。
もうだいぶ前のことになるが、10月18日にSEALDs などによって渋谷で街宣が行わた。この街宣に、ヒップホップグループのスチャダラパーが登場したという。
こうなると、例によって、「ミュージシャンが政治的な発言をするのは……」的な文句をつける人たちがいるわけだが、これはとんでもないいいがかりというものである。
ヒップホップは、政治的な発言をしてなんぼというジャンルなのだ。レゲエもそうだが、(“レゲエ”という言葉自体が、“抗議する”という意味の言葉からきているといわれる)ヒップホップもまた、社会批判を出発点とするレベルミュージックなのである。Public Enemy などを聞けば、それはよくわかるだろう。
そして、その Public Enemy からも影響を受け、ヒップホップを取り入れたサウンドでヘヴィロック最強との呼び声も高いバンドが、Rage Against The Machine。というわけで、今回はこの RAM について書く。
RAMといえば、ディープな政治的メッセージをのせたゴリゴリのサウンドで知られる。
たとえば、冒頭に引用した Know Your Enemy という曲。タイトルを訳すれば「お前の敵を知れ」という意味だが、本当の敵から目をそらすさまざまなプロパガンダが行き渡ったアメリカ社会で、お前の本当の敵が誰なのかを認識しろという歌である。
闘え 常識なんかクソくらえ
もう我慢はできない
無関心にはうんざりだ
と、激しい言葉が連なる。
あるいは、Bullet in the Head の一節。
鉤十字を黄色いリボンでくるんでも
お前のプロパガンダはデタラメだ
愚か者たちはルールに従い
やつらが“青”といえば血の色も“青”になる
そうやって お前の頭は銃弾でぶっとばされるのさ
政府が独裁化していくのを立ち尽くしてみているだけの生ける屍たちに
俺は叫んでやる
スクリーンの上には静寂
そしてお前たちは眩惑されてしまった
「黄色いリボン」というのは、遠くに行っている家族の帰りを待つ家が黄色いリボンを掲げる習慣を表しているということだが、「鉤十次を黄色いリボンでくるむ」というのは、侵略的な戦争を兵士の美談にすりかえるアメリカの欺瞞を糾弾したものだろう。ウソと欺瞞に満ちた戦争を引き起こしながら、「国に尽くす兵士とその帰りを待つ家族」という美談でそれを覆い隠す。メディアもそれに加担する――そんな姿は、もう日本にもせまってきている。いや、あるいは、すでにそうなっているのかもしれない。上の引用部分は、まるで今の日本を歌っているようではないか。
次に、No Shelter の一節。
第四帝国のハゲタカ、アメリカ
“アメリカンドリーム”に縛られて、お前たちは求め続ける。
娯楽と戦争とのあいだのあやふやな境界線を
避難場所はどこにもない
前線はいたるところにある
アメリカの目 アメリカの目
世界をアメリカの目で見るんだ
過去は埋もれさせ 盲目の民から奪えるだけ奪い
あとには何も残すな
「第四帝国」というのは、もちろんヒトラーのドイツ第三帝国を意識した表現である。RAMは、ここまでゴリゴリにアメリカを批判しているのだ。私も彼らのメッセージに必ずしも全面的に賛同するわけではないが、ヴォーカルのザック・デ・ラ・ロッチャが紡ぎだす言葉の破壊力は抜群である。
そして、ギタリストのトム・モレロもまた、負けず劣らず政治的にラディカルだ。
RAMがいったん解散した後の話になるが、トム・モレロは、System of a Down のメンバーらとともに Axis of Justice という政治団体を結成して、反ブッシュキャンペーンをはったりもしている。この団体名は、訳すると「正義の枢軸」ということで、ブッシュが使った「悪の枢軸」という言葉をもじったものである。ミュージシャンなら、これぐらいやって当然なのだ。ちなみ、トム・モレロは The Nightwatchman 名義でソロ活動もしているが、こうした活動はあのマイケル・ムーア監督ともつながっている。
2000年に一度解散したRAMだが、最近になって再結成した。そして再結成してからも、そのラディカルさは変わらない。
2012年のことである。米共和党で若手のホープと目され、当時共和党の副大統領候補となっていたポール・ライアン下院議員がRAMのファンだというのだが、これに対してトム・モレロは「笑える」と一蹴。「彼は、われわれが20年間怒りをぶつけてきたマシーンの体現者だ」「どのバンドが好きでもいいけれど、富裕層に富を集める彼のビジョンは、我々のメッセージと正反対だ」と、鋭く批判している。繰り返すが、ミュージシャンならこれぐらいやって当然なのである。
さて、最後に、彼らの代表曲の一つであるGuerrilla Radio という歌を紹介する。この曲では、2000年当時のアメリカ大統領選についてこう歌う。
ゴアか、それとも麻薬王の息子か
どっちもクソくらえだ コードを切れ
ゴアとは、民主党のアル・ゴアのことで、「麻薬王の息子」というのはブッシュ前大統領のことである。結果としては、さまざまな不正を疑われながら、総得票数で敗れているにも関わらず、ブッシュが勝利し、アメリカを泥沼の戦争に引きずり込んでいったのは周知のとおり。RAMのメッセージにもっと多くの人が耳を傾けていたなら……と思わずにいられないではないか。最後に、この歌のもっとも盛り上がるパートを引用して、この記事を結ぼう。
どこかで はじめなけりゃならない
いつか はじめなけりゃならない
だったら、ここではじめろ
今はじめろ
なに? 自由の国だって?
お前にそう教えたやつこそがお前の敵さ
――Rage against the Machine, ‘Know Your Enemy'
最近、当ブログでは音楽ネタもよく扱っているので、今回はその流れでいきたい。
もうだいぶ前のことになるが、10月18日にSEALDs などによって渋谷で街宣が行わた。この街宣に、ヒップホップグループのスチャダラパーが登場したという。
こうなると、例によって、「ミュージシャンが政治的な発言をするのは……」的な文句をつける人たちがいるわけだが、これはとんでもないいいがかりというものである。
ヒップホップは、政治的な発言をしてなんぼというジャンルなのだ。レゲエもそうだが、(“レゲエ”という言葉自体が、“抗議する”という意味の言葉からきているといわれる)ヒップホップもまた、社会批判を出発点とするレベルミュージックなのである。Public Enemy などを聞けば、それはよくわかるだろう。
そして、その Public Enemy からも影響を受け、ヒップホップを取り入れたサウンドでヘヴィロック最強との呼び声も高いバンドが、Rage Against The Machine。というわけで、今回はこの RAM について書く。
RAMといえば、ディープな政治的メッセージをのせたゴリゴリのサウンドで知られる。
たとえば、冒頭に引用した Know Your Enemy という曲。タイトルを訳すれば「お前の敵を知れ」という意味だが、本当の敵から目をそらすさまざまなプロパガンダが行き渡ったアメリカ社会で、お前の本当の敵が誰なのかを認識しろという歌である。
闘え 常識なんかクソくらえ
もう我慢はできない
無関心にはうんざりだ
と、激しい言葉が連なる。
あるいは、Bullet in the Head の一節。
鉤十字を黄色いリボンでくるんでも
お前のプロパガンダはデタラメだ
愚か者たちはルールに従い
やつらが“青”といえば血の色も“青”になる
そうやって お前の頭は銃弾でぶっとばされるのさ
政府が独裁化していくのを立ち尽くしてみているだけの生ける屍たちに
俺は叫んでやる
スクリーンの上には静寂
そしてお前たちは眩惑されてしまった
「黄色いリボン」というのは、遠くに行っている家族の帰りを待つ家が黄色いリボンを掲げる習慣を表しているということだが、「鉤十次を黄色いリボンでくるむ」というのは、侵略的な戦争を兵士の美談にすりかえるアメリカの欺瞞を糾弾したものだろう。ウソと欺瞞に満ちた戦争を引き起こしながら、「国に尽くす兵士とその帰りを待つ家族」という美談でそれを覆い隠す。メディアもそれに加担する――そんな姿は、もう日本にもせまってきている。いや、あるいは、すでにそうなっているのかもしれない。上の引用部分は、まるで今の日本を歌っているようではないか。
次に、No Shelter の一節。
第四帝国のハゲタカ、アメリカ
“アメリカンドリーム”に縛られて、お前たちは求め続ける。
娯楽と戦争とのあいだのあやふやな境界線を
避難場所はどこにもない
前線はいたるところにある
アメリカの目 アメリカの目
世界をアメリカの目で見るんだ
過去は埋もれさせ 盲目の民から奪えるだけ奪い
あとには何も残すな
「第四帝国」というのは、もちろんヒトラーのドイツ第三帝国を意識した表現である。RAMは、ここまでゴリゴリにアメリカを批判しているのだ。私も彼らのメッセージに必ずしも全面的に賛同するわけではないが、ヴォーカルのザック・デ・ラ・ロッチャが紡ぎだす言葉の破壊力は抜群である。
そして、ギタリストのトム・モレロもまた、負けず劣らず政治的にラディカルだ。
RAMがいったん解散した後の話になるが、トム・モレロは、System of a Down のメンバーらとともに Axis of Justice という政治団体を結成して、反ブッシュキャンペーンをはったりもしている。この団体名は、訳すると「正義の枢軸」ということで、ブッシュが使った「悪の枢軸」という言葉をもじったものである。ミュージシャンなら、これぐらいやって当然なのだ。ちなみ、トム・モレロは The Nightwatchman 名義でソロ活動もしているが、こうした活動はあのマイケル・ムーア監督ともつながっている。
2000年に一度解散したRAMだが、最近になって再結成した。そして再結成してからも、そのラディカルさは変わらない。
2012年のことである。米共和党で若手のホープと目され、当時共和党の副大統領候補となっていたポール・ライアン下院議員がRAMのファンだというのだが、これに対してトム・モレロは「笑える」と一蹴。「彼は、われわれが20年間怒りをぶつけてきたマシーンの体現者だ」「どのバンドが好きでもいいけれど、富裕層に富を集める彼のビジョンは、我々のメッセージと正反対だ」と、鋭く批判している。繰り返すが、ミュージシャンならこれぐらいやって当然なのである。
さて、最後に、彼らの代表曲の一つであるGuerrilla Radio という歌を紹介する。この曲では、2000年当時のアメリカ大統領選についてこう歌う。
ゴアか、それとも麻薬王の息子か
どっちもクソくらえだ コードを切れ
ゴアとは、民主党のアル・ゴアのことで、「麻薬王の息子」というのはブッシュ前大統領のことである。結果としては、さまざまな不正を疑われながら、総得票数で敗れているにも関わらず、ブッシュが勝利し、アメリカを泥沼の戦争に引きずり込んでいったのは周知のとおり。RAMのメッセージにもっと多くの人が耳を傾けていたなら……と思わずにいられないではないか。最後に、この歌のもっとも盛り上がるパートを引用して、この記事を結ぼう。
どこかで はじめなけりゃならない
いつか はじめなけりゃならない
だったら、ここではじめろ
今はじめろ