奈良県中部 田原本町に存在している医療法人坂根医院は、発熱外来として登録しており、奈良県のHPに掲載されております。(28P)
今年に入って1,000例以上、第7波になった7月以降でも700例以上の陽性者を診断して来たのですが、困っていることがあります。
タクシーを利用して来院される発熱患者さんがおられるのです。先日もタクシーで来院された患者さんの新型コロナ陽性が判明し、帰っていただく手段がなくなりました。患者さんは、タクシーで来たのだから、タクシーで帰ると、言われたのですが、新型コロナ陽性が分かった方を乗せてくれるタクシーはありません。陽性であることを黙っているわけにも行きませんですしねぇ。
そのときは,自治体(田原本町)と、何度も何度も交渉し、何とか陽性者を乗せてくれる介護タクシーを要請することが出来ました。
昨日は、来院される前に電話が掛かってきました。「発熱しています。タクシーで今から行きます。」高齢独居の方でした。
おうちの場所を尋ねた所、医院からは相当遠くて、歩いたら往復で3時間近くかかります。かといって近くに他の医療機関も見当たりません。
田原本町にも交渉したのですが、どうしても来院していただく手段が見つかりませんでした。
発熱されている高齢患者を放っておくわけにもいきません。
結局、その日予定していた訪問診療の最後に往診させていただき、抗原検査を施行しました。結果は陰性でした。酸素飽和度も良好で、熱も37度台で重症感も無かったので、解熱剤のみ頓用で服用していただいて様子を見る事にしました。(坂根医院では簡単には抗生物質を出しません)
その後、解熱しておられるようで、安堵しています。
独居老人で来院手段を持たない方の発熱には毎回困っております。往診での新型コロナ検査は、往診する側にとって相当に危険を伴うと思っているので、私は可能な限り避けています。今回の様な場合や、保健所に頼まれた場合は致し方ないので行きますが、新型コロナ陽性が分かっている患者さんや、陽性の可能性がある患者さんに対する訪問診療・往診は、いくらN95マスクやPPEフル装備で身を固めていても、感染の危険が高いです。それは、相手が全くこちらの危険性を理解してくれていないのにかかわらず、相手の土俵で相撲を取らざるを得ないからです。
私は、患家に近づいたら、電話をして、出来るだけ窓は解放していただいたうえで、可能であれば、患者さんに玄関まで出て来ていただきます。玄関先の屋外で診療可能であれば屋外で診察を済ませます。
最初の頃、一家5人全員が陽性の家にお邪魔した折に、一番弱っておられたお爺ちゃんに点滴をしたのですが、それが終わるのを待っている間に、歓待を受けてしまい、断りづらいけれどとても怖い思いをしました。それ以来、出来るだけ奥に入らないようにしています。寝たきりの方だと、入っていかざるを得ませんけどね。そして、そんな家に限って、狭い廊下を長く歩いた奥に寝室があることが多くてやきもきします。
窓を開けてもらう事は重要だと思っています。窓もドアも出来るだけ解放していただきます。PPEよりも換気の方が重要だと私は思っております。
PPEなんて、ウィルスから見たら、巨大な隙間だらけです。PPEは侵入してくるウィルスの量を減量するのが役目です。ゼロになんて絶対に出来ないですから、勘違いしないようにしましょう。
おかげさまで、これまでのところ、私も、坂根医院のスタッフのだれもが未だ感染しておりません。有難い事です。いずれは感染してしまうのでしょうけれどね!!出来るだけ、先延ばしさせようと、日夜努力を続ける所存です。