湖のほとりから。

花と空と心模様を写真と詩と文に託して。

メビウス10ミリのタバコ

2017-12-13 12:27:40 | 日記
昔から
タバコの煙は嫌だったけれど
タバコの匂いは
何故か
父親の匂いのような気がしてた


好きな人が出来るたびに
その胸にしがみついた時の
タバコの匂いを嗅いでみたりして
嫌いなはずの父を
身近に感じていたいような


それほどのヘビースモーカーだった父


いや、それほど
父が嫌いと言いながら
どこかで父を探していたような私だったかもしれない


破天荒で女好き
博打好きで情深い


ここ数年は
介護の名のもとに
大人しく私に面倒を見させていて
私は、コンビニに
『メビウス 10ミリ ソフト ワンカートン』と

なかば呪文に似た言葉で買いに走らせ
自分はデッキで煙を燻らしていた


肺がんと言われても
これぞ男の本懐とばかりに
タバコをやめなかった人が
たった4日間
タバコを吸えなくなったまま


今生に別れを告げて逝った


家から
旅立ちたいと言った最後の約束を
ちゃんと果たせたでしょ?
良い娘に恵まれたでしょ?
わたし、いい子だったでしょ?


もう
コンビニに
タバコを買いに行かなくて済むのが
かなり寂しくなったよ






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