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『女中たち』ストーリーと感想

2015-07-13 10:37:12 | 劇場・多目的ホール
『女中たち』をシアタートラムにて、7月12日(日)13:00開演、Bパターンを観劇しました。

ストーリーと感想を備忘録として書きます。
※ネタばれがありますのでご注意ください。
※文中の敬称は省略させていただきます。





【作】ジャン・ジュネ
【翻訳】渡邊守章
【演出】中屋敷法仁
【美術】土岐研一
【照明】松本大介
【音響】鈴木三枝子
【衣装】太田雅公
【ヘアメイク】小林雄美
【舞台監督】白石英輔、村田明
【キャスト】矢崎広、碓井将大、多岐川裕美(Aパターン:ソランジュ(姉)矢崎広、クレール(妹)碓井将大/Bパターン:ソランジュ(姉)碓井将大、クレール(妹)矢崎広)


【ストーリー】
裕福な邸宅に住み込みで働く姉妹の女中。姉がソランジュ、妹がクレール。
二人は奥様のお留守にお部屋に入り込み、こっそりと「奥様と女中」ごっこをしている。現実逃避のためのごっこ遊びがやがて…。


【感想】
客入れ、無機質な音が延々と繰り返される。現代音楽のようだが…?
美術はシンプル。あまり観たことのない感じで舞台が三方向に向いている。奥様の部屋らしい。
中が透けて観える格子状の棚があり、これがぐるっとコの字型に囲んでいる。上部のみが上下に可動。始めに上がり最後に下がる。
中央にコバルトブルーのフットレスト付き猫足の肘掛け椅子、同じ色のベッド、タッセル付きの光沢あるブラウンの枕、奥には真紅のドレスや毛皮が掛けられた洋服ダンスが2棹。
棚にはクラシカルな電話、化粧品の乗ったトレーなど。
転換なしのワンシュチュエーション。暗転もなし。

観ていると、他人の部屋を覗き見しているような背徳感すら感じる。
照明がシンプルだけど印象的。ラスト、ソランジュ(姉)の長台詞のとき客席側から照明があたり、背景に大きな黒いシルエットとなって浮かび上がる。
それはまるで生気のない亡霊のよう。

衣装とメイクは女中たちと奥様とで対照的。女中たちはノーメイク。丸首、半袖、すとん!としたシルエットをした短い丈の黒いワンピース。美しさなど微塵もなく、安っぽく実用本位な印象を与える。
奥様のほうはといえば、白い肌、細く整えた眉、真っ赤な口紅、明るいセミロングの髪を美しくセットで波打たせている。流れるような模様の入った淡いグレーのロングドレス、豪華な毛皮のロングコート。富裕層の奥様そのもの。

原作は未読だし不条理劇というので難解かと身構えていたが、そんなに??ということもなく、ちゃんと作品として楽しめた。
支配する者とされる者、抑圧する者とされる者、蔑む者とされる者。決して対等ではない関係性。
貧しさ、抑圧、同族嫌悪、無邪気という名の残酷さ。悪意よりもっとたちが悪いのは、善意や優しさの形をした他者への攻撃だ。
これが一番人を傷つけ憎悪の温床となり、やがて事件へと発展していくのだ…。
ソランジュとクレールはこの結末を予想していたのだろうか? それとも、気づいていながらそこに向かっていったのだろうか…。

女中たちの役は膨大な台詞を早口でまくし立てる。これを演じる矢崎広と碓井将大、A・Bと2パターンあるとは大変だ~。
中屋敷法仁はやっぱり噂どおりのSだね(笑
時折、セクシャルな台詞もあるのだが、色気のある役者さんが発するとどきっ!とする。お二人とも透明感があって男の色気があるからなぁ。。
奥様役の多岐川裕美、映像以外で初めて拝見したのだが佇まいが堂々としていて、華があってお美しい。

カーテンコールは1回。カーテンコール中も役のまま、という演出だった。


【余談】
韓国映画『ハウスメイド』と美内すずえの古い漫画を思い出した。どちらも裕福なお宅に住み込みで働く若い女性のお話。
『ハウスメイド』では、先輩で年かさのメイドが、「汚くて。。恥ずかしくて。。ここの連中はお金でなんでも解決するのさ!」と憎悪と怒りを吐き出す。
漫画では、こっそりお嬢様のドレスを洋服ダンスから取り出し、土足で踏みつけているのを本人に見られてしまう。
純真なお嬢様は心底から驚き理由を尋ねる。メイドは自分を愛していると思い込んでいたから…。
メイドは憎悪に満ちた表情で、彼女を指差しながら激しい言葉を浴びせる。「憎かったのよ!あんたが!同じ年なのに‥ !」
>誰もが仮面をかぶっていて、その下に本当の顔がある。
というラストだったと記憶している。
どの作品にも共通するのは対等でない関係性。富める者と貧しい者、抑圧する者とされる者。
歴然とした違いからくる差別は、心を傷つけ歪ませていく…。
はるか昔から現代、そして未来へも続いていくだろうと思われる関係性に身震いし、人が生きていくことの残酷さに哀しみを覚える。

そういえば、演出家の板垣恭一のブログに「人には物語が必要」という言葉があった。
『女中たち』のごっこ遊びは彼女たちの物語。奥様には奥様の物語がある。
それは、傍から見たら事実にそぐわなくて、破綻していても滑稽でも必要なのだろう。
小説、映画、ドラマ、舞台、空想や妄想でもいい、それぞれの物語が必要なのだな…。人が生きていくっていうことは。しみじみ。


【画像】
フライヤーの裏。




パンフレット1500円。
役者さんたちの麗しいお写真、対談など。読み応えあり!




気になる公演だけ持ち帰ってきたフライヤー。
なんと、柿喰う客は柿生めこちゃんのクリアファイル入り♪




今年の9月は観たいものが多い!多すぎる!
なんで重なるんだろう~時間とお金と体力がもっと欲しいよ~。苦笑。


【リンク】
 

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