クリスマスが間近に迫ったある日から、突然Mさんは私の前に現れなくなりました。
会えない日が重なるにつれ、私はだんだんに仕事が手に付かなくなってきました。
ピッキング中に棚の端に横付けして置いたオリコンの位置を忘れて、探し回るようなミスもしばしばです。
(Mさんはなぜ姿を見せないのだろう。私に家庭があることを誰かから聞いたのだろうか……)
ストーキングをやめたとしても、偶然廊下ですれ違うくらいのことはあってもよさそうなのに、影も形も見えないのです。
(まさか仕事を辞めたとか?私に一言も言わずに?)
もっとも私たちは仕事以外で言葉を交わしたこともない仲です。黙って消えたとしても不思議はありません。
ようやくMさんに会えたのは、10日近くも経ってからでした。
食堂の鉄扉を開けた瞬間、ちょうど出てきたMさんと鉢合わせしそうになったのです。
すれ違った瞬間、Mさんは私の顔を何とも言えない泣きそうな表情でちらりと見ました。
私はまたその場に凍りついてしまいました。
小さい子を泣かせてしまった時のような居心地の悪さで胸がいっぱいになりました。
けれど同時にホッとしていました。
やっぱり、誰かから私のことを聞いたんだ。これで宙ぶらりんな状態から解放される。
どうせかなうはずもない恋だったのだから、ここで終わりにすればいいだけのことだ。
あまり深く傷つけずに済んで、本当によかった……。
ところが翌日の朝。Mさんはまたエレベーターホールに現れたのです。
何事もなかったように、例によって空の台車を押して。
その上すれ違いざまに、小さな声で「お疲れさまです」と言いました。
今まではすれ違っても挨拶なんてしなかったのに……。
私はびっくりして金魚のように口をパクパクさせるばかりでした。
えーと、どう受け止めればいいのかな?人妻でもいいって開き直った?
それとも、職場の仲間として普通に接しましょうってこと?
その数日後から、私たちリストラ候補生は今度は補充の応援に駆り出されることになりました。
例によってMさんの監督の下に……。
会えない日が重なるにつれ、私はだんだんに仕事が手に付かなくなってきました。
ピッキング中に棚の端に横付けして置いたオリコンの位置を忘れて、探し回るようなミスもしばしばです。
(Mさんはなぜ姿を見せないのだろう。私に家庭があることを誰かから聞いたのだろうか……)
ストーキングをやめたとしても、偶然廊下ですれ違うくらいのことはあってもよさそうなのに、影も形も見えないのです。
(まさか仕事を辞めたとか?私に一言も言わずに?)
もっとも私たちは仕事以外で言葉を交わしたこともない仲です。黙って消えたとしても不思議はありません。
ようやくMさんに会えたのは、10日近くも経ってからでした。
食堂の鉄扉を開けた瞬間、ちょうど出てきたMさんと鉢合わせしそうになったのです。
すれ違った瞬間、Mさんは私の顔を何とも言えない泣きそうな表情でちらりと見ました。
私はまたその場に凍りついてしまいました。
小さい子を泣かせてしまった時のような居心地の悪さで胸がいっぱいになりました。
けれど同時にホッとしていました。
やっぱり、誰かから私のことを聞いたんだ。これで宙ぶらりんな状態から解放される。
どうせかなうはずもない恋だったのだから、ここで終わりにすればいいだけのことだ。
あまり深く傷つけずに済んで、本当によかった……。
ところが翌日の朝。Mさんはまたエレベーターホールに現れたのです。
何事もなかったように、例によって空の台車を押して。
その上すれ違いざまに、小さな声で「お疲れさまです」と言いました。
今まではすれ違っても挨拶なんてしなかったのに……。
私はびっくりして金魚のように口をパクパクさせるばかりでした。
えーと、どう受け止めればいいのかな?人妻でもいいって開き直った?
それとも、職場の仲間として普通に接しましょうってこと?
その数日後から、私たちリストラ候補生は今度は補充の応援に駆り出されることになりました。
例によってMさんの監督の下に……。