まくとぅーぷ

作ったお菓子のこと、読んだ本のこと、寄り道したカフェのこと。

いもくりぎんなん。

2017-09-23 20:40:58 | 日記


金曜の晩、ライブから帰って
やおら始めたケーキ作り。
とりあえずビスキュイだけでもと
思ったけど作り始めたら止まんない。
ムスメがハンドミキサーぶん回してる横で
粉計ってたりして。
おうちケーキ作りのゆるいのも楽しいんだよね。
そしていちいち二人して
あ、それいけないんだー、とか
いいつけよっと、とか言い合う。
誰にだよ。

栗の渋皮煮を満足に作れた試しがない。
今回もちょっと硬いし甘さは足りないし。
でも平気、牛乳と一緒にブレンダーで
ガガガッと回して
薩田商店の美味しいこしあんも入れて
鍋で温めたらゼラチン投入。
生クリームを泡立てて
温度下げた栗ベースにふんわり混ぜ込む。

っていうのをムスメがやってる間に
私はトヨ型に合わせてビスキュイをカット、
渋皮煮シロップをポンシュして型に敷き込み
冷凍庫にぽいっと。
ムースができたら冷凍庫から型を取り出し
ザサッと注いで底生地のせて再度冷凍庫。
余ったムースはプリンカップに入れて。

ムスメは何やら端切れビスキュイと
ムースを使ってこそこそプチアントルメ作成。

時刻は深夜未明。
ベッドに倒れ込む。

遅い時間に起きだして
熱いお風呂の半身浴で
やっと目が覚める。
ケーキを型ごと保冷バックに入れ
出発。

実家そばのバス停を降りたら
何やら懐かしいような
むせかえるような匂いが。
道端に落ちてるぎんなんに気づいて
うわ、もうそんな季節か、と
ムスメが顔をしかめる。


ふと見上げた樹には
鈴なりの薄オレンジの実。
姿だけなら可愛らしいじゃないの。

以前聞いた話では
ホームレスがこの時期に拾い
熟成させて洗って干した銀杏は
高級料亭に卸されて
何十万という収益になり
彼らはそれで1年分の暮らしを賄うと。
それを話して聞かせるとムスメは
でもそれって窃盗だよね、
だって公園の桜の樹から葉っぱを取ったら
窃盗なんだもんねという。
道に落ちてるんだからいいんじゃない?
あーそういうこと?
私なら下にビニールシート広げて
樹にケリ入れるね、というと
それは今度は傷害だよねという。

とか言ってる間に実家にたどり着く。
呼び鈴鳴らして出てきた母は
服の前が点々と濡れてて
「ごめん、今、顔洗った」だって。

ジムに行ってる父はもう直ぐ帰宅。
私はサルシッチャのサンドイッチを拵えようと
買ってきた豚肉を細切れにして塩を揉みこんだあと
まな板の上でばんばん叩く。
帰ってきた父は玄関開ける前から
その物騒な物音に気付いて
あ、チカちゃん来てるな、と
思ったらしい。

パンは駅で買ってきたふわふわ焼きたてパンドミ。
バターを塗り、ルッコラをたっぷり挟んで
サルシッチャとチーズを乗せる。
本当だ、ソーセージっぽいねと母。
好評で満足。

コーヒーを淹れる。
コーヒーポットなんて洒落たもんはないので
家の中で一番細くお湯をたらせるもの
つまりお急須でお湯を落とす。
このへんてこなスタイルは今や
実家では定番になっている。
っていうかポット買ってやれよ自分。はい。

そうこうしてる間に妹登場。
有名なタルト屋の大きな箱を抱えて。
ケーキがかぶるなんてよくあることだ。問題ないない。
中には綺麗な紫イモのタルトが。
センターにかぼちゃムースまで仕込んである。
秋だねえ。

すると母が対抗するように
私も甘いもの作ったの、という。
珍しいこともあるな。
ムスメに生クリームを泡立てさせる母。
キッチンでタッパーから何かを小皿に
盛り付けている。

父がひそひそと
たぶんこんにゃくだよ
という。
え?嘘だーと妹。
こないだテレビでやってたやつだよ。ひそひそ。
こんにゃくをどうしたらスイーツになるの?ひそひそ。
まあ見たらわかるよ。ひそひそ。

という会話は全てキッチンの母に筒抜けている。

小皿には生クリームのかかった
グレーの小さい角切りの何かが。
食べたらコーヒーの香り。
でも食感は間違いなくこんにゃく。

面白い。すごく斬新。
でも残念、美味しくはない。

すると母はちょっとムキになって
今度はしらたきでパスタを作ってあげるという。
なんかそういうブームが来てるのね。
しばらく立ち寄らんとこ。

そろそろタイムアップとなりそうで
無理やりみんなに持参のケーキを振舞う。
うんと薄切りにして上品に。

父が
これは中身何が入ってるの?とか
この生地はどうやって作るの?とか
あんこの味も栗の味もすごく良い、美味しい、
って一生懸命褒めてくれた。

そりゃもちろん嬉しいんだけど
不思議だなあと思って見てた。
小さかった私が見てきた父は
出された食べ物にそんな風に
関心を表したり賞讃したりはしない。
80年、何度か命の危機があったのに
持ち前の強運でそれをかわしてきた父は
治療してくれる医者や支えてくれる家族に
素直に感謝するようになったのかもしれない。

そんな父はこの誕生日で
自分は米寿になったと勘違いしてたらしい。
惜しい。あと8年だから。すぐだから。

その時にはもっと美味しいやつ作る。
たくさん食べて
また褒めてください。



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