ボランティアのために仕事を一日休んだら、その日に出入りの宅配業者が来て、手紙を置いていった。送料値上げのお知らせで、実施は1月からだという。手紙の日付は11月だったが、置いていったのは12/20なので、一瞬怒りが込み上げたものの、留守してたのも悪いかなぁと思い、ちょっと深呼吸してみる。
他の業者の見積もり取るか、と、あらためて今月の明細をよく見ると、宛先種別に二つの異なる表示がある。どちらも一件600円。手紙をよくよく読んでみると、値上げは個人宅宛だけで、法人は据え置きとのこと。
おそらく、あのいつも来るぼーっとした集荷担当のおっさんの独断で、○○教室宛となってると法人扱い、個人名宛だと個人宅扱いにしてるんじゃないかと思われる。
ボスの席に近づいていって、ちょっと相談していいですか?と話しかける。
セイ○ーがこんな手紙持ってきたんですけどね。ちょっとシメようかとおもって。つきましてはご同席いただけますか?
攻撃プランを話していると、そばで聞いてる新人営業さんがぶるぶる震えてる。おっと、言葉の選択に気をつけねば。
そうこうしてるうちにボーッとしたおっさんがやってきた。応接ブースに連行。まずは手紙を提示する。
この手紙を先週金曜にうちのスタッフが受け取ったそうですが。御社の支店さんの振り出し日は11月ですよね。念のため支店さんに確認したら、このレターは確実に担当ドライバーに11月に渡していて、うちに持っていくようにと指示があったとか。なぜ、こんなに日数が経過してしまったんでしょうか。
おっさん、額に汗をかきながら視線を泳がせ、言葉を探している。沈黙が流れる。5秒。10秒。あれ?これっていじめ?わたしおっさんをいじめて楽しんでる?いやいやそんなことはない、ないけどさすがにあと5秒返事無かったらなんか助けてやらないとまずいかな。と思ったその時、おっさんが口を開いた。
こ、これ、もう、本社からそっちに渡ってるとおもってたんで。でももうすぐ値上げだから、念のためとおもって見せたら、初めて見るっていわれたんで。俺のミスですすみません。
あーなるほど。これはご自分で渡すものだとは思っていなかったわけですね。そうでしたか。
そういって今度は先月の請求明細を提示する。
これ、ミニっていうのと、宅配っていうのがありますよね。おそらく法人宛と個人宛の違いだとおもうのですが。これは集荷のときに、あなたが仕分けなさってるんですよね。判断基準はなんですか?
えっと、宛先に会社名とか、教室名とか書いてあると法人扱いにしてます。
そうですか。うちが個人名宛で出す荷物は、ご自宅で教室を運営されてる先生宛のものです。法人扱いにするには、教室名を併記すればよいですか?
はい、それを書いてもらえれば、俺のほうでうまくやるんで。
あ、何も不正をはたらいてくれとか、便宜をはかってくれとか申し上げているわけではありません。事実を正しく扱っていただくにはどうしたらいいか、お聞きしてるんです。
若干キレてるわたしを抑えるようにボスが言う。
もちろん、個人に送ることもありますので、そのときはきちんとそう書きますよ。とにかく、うちは本社は大きなところなので、送料値上げについても本来でしたら一ヶ月以上かけて稟議通さないとならないんです。でも御社もご事情あって一月からの値上げはもう動かせないんですよね?宛名は気を付けて書きますので、またよろしくお願いしますね。
おっさんはちょっと元気取り戻して、すみません、申し訳ありません、と言った。
応接ブースから出ておっさんを見送り、席に戻ってくると、新人営業さんに、坂本さんこっわーい。。。あたしもうミスったとか言えなーい。。。と言われた。パーティション越しの会話に怯えて震えてたらしい。わたしはめいっぱいの笑顔を作って答える。
わたしが口に毒持ってて、相当な威力であることは十分知ってる、仲間にはまちがっても向けることがないように細心の注意を払って生きてますので、だいじょうぶです。
大事な手紙は渡しそびれちゃだめだし、かわいい新人さんは怖がらせちゃだめなんだ。