
そんだけ長い事通ってるんだから
もう教えたりして金儲けできるんじゃないの?
とは旦那様の弁ね
習い事っていうものに対する考え方は
男と女とで違うのかもしれない
大金かけて技術を習得したのなら
それを使ってペイバックを狙うべし、というのが
多くの男性の考えで
通ってること自体に意義があるんだよ、
という女性は少なくない
ような気がする
私にとってのお菓子教室の意義は
未知なる美味しさとの遭遇
感性の近い人たちとわーきゃーする楽しさ
面白すぎる師匠の観察
とはいえ
10年を費やしているので
パウンドケーキくらいなら
教えてーって言われたら
オチャノコです
ハンドミキサーやら木べらやら持って
指定の時間にチャブダイカフェへ行くと
お客様が相撲中継をつまみに
楽しそうに飲んでいらっしゃる
どうせ日曜日の夜なんて誰もこないから
って言ってたのに
まあありがたいことではある
ついでに私もごはん食べちゃえ
しかし、考えてみたら
営業中の合間にちょろっと作ろう
だなんてさ、初心者のくせにナメてないか?
さらに
こんばんは〜、なんて可愛いお嬢さんのお客がやってきて
大将に誘ってもらったんで見学に来たんですー
とかってさ、ますますナメてるよね?
私の中のS魂(スパルタのS)がちょっとメラッと来た
とそこへ
なんと我が師匠まで登場
こちらは全くの偶然で
「なになに、何すんの?パウンド?あたしプリンの方がいい」
と、やっぱり面白いことをおっしゃる
相撲中継が終わり、お客様が帰られたところで
さあ、スタート
大将と私、1台分ずつ同時に作りながら進める作戦
まずはとにかくバターを出さないと
チャブダイのめちゃくちゃよく切れる包丁で
さっきまで冷凍されてたバターを薄くカットする
全部カットしちゃってから残りを冷蔵庫に入れておくと
次から使いやすいよ、というと
ほほ〜、と感心される
材料を計量しておく入れ物は
角バットもプリンカップもないので
丼、お冷のコップ、小皿を流用
先に全部を計って並べるんだね、とまたもや感心される
な、なるほど、お菓子作らない人はそんなことも初耳なのね
パウンド型に敷く紙の切り方もえらく感心されて
「これを知ることができただけでもう今日は十分」だって
いやいやこれからなんですけど
準備が整ったら、あとは必殺「ひたすら混ぜるだけ」
柔らかくしたバターに砂糖を少しずつ入れて
その都度50回
卵黄を少しずつ入れてその都度50回
見学のお嬢さんが私の動きを見て
「わー、はやーい、綺麗〜」
10年やってますんでね・・・
大将が途中で木べら放置して腕をフリフリしてる
ふぇふぇふぇ、どーだ疲れるだろー
混ぜるだけっていっても
均一にむらなくやるのは
なかなか大変なんだぞ
と、すかさず女将にゃんが交代する
二人がかりだなんてずるいな
泡立てはこれでいけるはず、と女将にゃんの用意した
ブレンダーではうまくいかなかったので
私のハンドミキサーを交代で使う
卵白の余剰があってよかった
ビーターで混ぜ込む速度とか
粉を入れるタイミングとか
あれこれ喋りながら作る
できた生地を型に流す時
後ろにいるムスメが
(一体どんだけギャラリーいるんだ)
「そこのゴムべらの使い方は見えるようにしてあげて」
という
さすがMFでバイトしてるだけのことはあるな
ようやくオーブンに入れてひと安心
大将がコーヒーを振る舞ってくれる
いやーこんなに一つ一つ丁寧にやるんだねー
って言われて
とはいえこれは代官山の振り切れちゃった大師匠のレシピで
世の中のパウンドはもっと楽に作ってるはず
と言わずにはいられない
でも、こうやって作るからこその
唯一無二のあの味なんだよね
焼き上がりにポンシュをたっぷり刷毛で塗る
「可愛い」連発の女将にゃん
自作のケーキが可愛いっていう感覚、わかる気がする
さあこれで、チャブダイの壁に
「パウンドあります」って貼り紙がされる日も近いか?
全て終わって夜の22時
パウンドは焼きたてだとまだ味が馴染んでいないので
1日経ってから食べてね、といったのに
翌朝
「食べてみた。まだポンシュのお酒がたってる。」
って
だから
朝じゃダメだってば