落葉の積もる場所

- The way I was -
 

 結 婚   

2014年01月23日 | WEBLOG
 





















 















































ハワイ ワイキキにあるリゾートホテル。



観光客の6~7割はアメリカ人だろうか。

















ホテル中央の通りを歩いていく花嫁は27歳。






身体が小さくて華奢で、


外国人から見ると「小学生のコスプレ」に見えなくもない。














多くの観光客が笑顔で写真を撮っていた。





「なんて可愛い花嫁さん!」



「人形みたいにステキだわ」






「花婿は介添人」とは、言い得て的を得ている表現。





ミワは時々立ち止まっては、観光客のリクエストに応えて写真に納まっている。
















三歩後ろから、脚光を浴びているミワの裾に気を払って新郎キョウイチは歩いた。





もちろん26歳の花婿も微笑みながら。



























これから二人はパッケージされたリムジンに乗って郊外の教会へと向かう。



双方の両親、仲人夫婦   合わせて8名の小さな挙式。









でも、彼女は最高に幸せな気持ちだったはずだ。



























































































































同じころ、  正確に言うと JST午前9時。




東京、 池袋、 高層ビルにあるオフィス。














28歳の女性が一日の仕事を控えて準備に追われていた。







ヨーコ。       独身。



















何も変わらない毎日。



そして、 今日もいつもと変わらない一日が始まろうとしていた。
































ただ同僚のキョウイチとミワは1週間の休暇を取っている。







給湯室で、ふと考える。

















なにもハワイで新婚旅行なんて‥と、 ヨーコは独りごちた。
















ビーチ、 カラオケ、 ゴルフ、 ショッピング、、、




遊びという遊びに思いを巡らせてみる。













でも、キョウイチは器用に遊ぶタイプじゃない。










ホテルの部屋で、 もしくはバーで、


静かに飲みながら小説でも読んでいるのがオチだろう。
































































キョウイチ…      なぜ私の頬を涙が流れようとするの?



























しかし、 その答えは 誰よりもヨーコ自身が知っていた。








































































































ヨーコとキョウイチは社内でも評判になるほど酒が飲めた。















それはそれは、人並み外れた強さだった。





底無し とは まさにこの事。






























































まだキョウイチがミワとの婚約を公にする前のことだった。









六本木の洒落たバーで、きついカクテルを何杯も飲み干したヨーコとキョウイチ。









































そのあとで、




大きな歩道橋の上から、 二人きり、 道路を疾走する車を眺めていた。












































ほんの『ノリだ』と思った。




















ヨーコは 「キスする?」 と キョウイチの目を見つめた。























キョウイチは ただ無言でヨーコの唇を・・。


















































5分にも10分にも感じられた、 甘く とろけるような口づけだった。
















































































しかし、 ヨーコとキョウイチはそこから先へと進む事はできなかった。









お互い、 何となく わかっていたから。




































「私たちは結婚できない」 と‥。





















































































































明るいホノルル郊外で、祝福されるミワとキョウイチ。












東京でコーヒーを飲みながら、仕事に没頭するヨーコ。













































































































































































































































































あれから28年という歳月が流れた。






















ヨーコは和装着付けの資格を取り、  そして、依然として独身である。








































ミワは離婚という道を選んだ。






ひとりで生きていけるタイプじゃないと強く思っていたのに。












































キョウイチには離婚しか生きる道はなかったと言えるだろう。





オンナ、ギャンブル、クスリ、、、 そして退職。















今まで考えなかった事、  つまり思いついた事は何でもやった。
















































何より 毎晩、 自宅でキョウイチの帰りを待っている、




ミワ の姿が正視できなかった。



































































































































結 婚












それは、幸せへと昇っていく「階段」なのか、






それとも 不幸へ真っ逆さまに落ちる「穴」なのか。
































ヨーコ      56歳   





ミワ        55歳    





キョウイチ     54歳 


























ひとりひとりに 確認 してみたいのだ。