5日が小寒、20日が大寒。コロナ禍の心理的な寒さも加わり、今年は一層寒さが募ります。
冬薔薇一輪のみのさびしくなった庭を眺めていたら、「カンギョウ」という言葉を思い出しました。中学生の頃までだったでしょうか、この季節の夜になると団扇太鼓の音にお題目が交じって聞こえてきました。ドンツクドンドンツクツク・・・ナンミョウホウレンゲキョウ・・白装束に団扇太鼓そして「南無妙法蓮華経」、不思議な集団に思えました。母に聞くと「カンギョウ」だと。「カンギョウ」が「寒行」~寒中にする行であると分かったのはかなり後のことでした。
私自身も寒い夜に声を出して歩いたことがあります。
「ヨマワリ」~「夜回り」でした。子ども会の行事の一つだったのか、大人がついていたように記憶しています。拍子木をひもで首にかけ、それを打ち鳴らしながら町内を廻るのです。「ひのよーじん。まっちいっぽんかじのもと」「火の用心」。風の強い夜は綿入れ袢纏を着ていてもとても寒かった。悴んで帰ると母が砂糖湯を作ってくれました。
寒風にチャルメラの聞こえる夜もありました。
夜鳴き蕎麦といえば本来は日本蕎麦のことなのかもしれません。このチャルメラの音はラーメンだったらしい。らしいというのは、一度も食べたことがないので分かりようがないのです。屋台のラーメンにしろお祭りの露店の菓子にしろ、母は屋外で売っているものを一切食べさせてくれませんでした。この辺は都会のように屋台が出ることもないので、いまだに屋台の経験がありません。震えながらの一杯が夢ですがままなりません。
今夜も冷えそう・・熱燗にしよう。
どこからか懐かしい太鼓や拍子木、チャルメラの音が聞こえるような気がします。