『ひとりぼっちのかえる』(興安・作 三木卓・文 こぐま社)を読んで、改めて「思いやり・感謝」について考えてみました。
題名通り、たった一人で生きている蛙がいます。お日さまが尋ねます。「たったいっぴきでくらしていて きみはさびしくないのか?」雨も、風も、地面も、風が、月が、星が同じように質問します。君は一人でさびしくないのかと。
蛙の答えはいつも同じ。「はい、さびしくなんかありません。」
太陽には「おひさまは、ぼくのお父さん」だからと。雨には「恵みの水をくれるお母さん」だからと。地面には、「優しく育ててくれるから」、風にはあこがれる「友だち」、月には「さびしくありません。あなたはとてもきれいで、やさしいめがみさまのよう。ぼくはあなたのあおいカーテンに つつまれているみたいです。」と。
蛙の答えを聞いたみんなは一様に喜びます。「そうおもってくれているんだ」と。蛙が周りの者たちの気持ちや思いを共有し、彼らとともに生きていることを伝えたからなのでしょう。
蛙は自分を取り巻き,生かし、成長させてくれているすべてのものに感謝しているのです。星が、蛙の歌う歌に対して「ありがとう」といいますが、蛙はすべてのものに対して感謝の気持ちを持っているのです。「いたずらこぞう」の風に対してさえ「あこがれちゃうよ」と答えるのですから。この感謝の気持ち~自分を取り巻き、気が付けば自分に寄り添って育ててくれているものたちへの「ありがとう」の気持ち~が「こころをこめた」歌になるのです。その昔から蛙が歌ってきた「うつくしい」歌によって星たちは輝き、仲間の蛙たちも応えはじめるのです。
蛙の歌は「思いやり・感謝」なのですね。周りの者への「恩」へ報いる行為が蛙の歌となって表出します。その歌うという恩返しの行為によって、周りの者たちは幸福な気持ちになるし、何より蛙自身が幸せになるに違いないのです。「思いやり」とはみんなが幸せになるために、なくてはならない大切な心性なのだと、この絵本は教えてくれています。
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