葉室麟 作品集 「銀漢の賦(ぎんかんのふ)」 5
第14回松本清張賞受賞作。
27.9.8(火)0949読破。
三人、日下部源五(郡方)、松浦将監(家老)、十蔵(百姓)の出会いから最後までを、日下部源五(郡方)の目や思いを通じて、その友情の尊さが語られていく。
・P242 「源五、わしに(松浦将監)に二度も友を見捨てさせるな(松浦将監が、十蔵を百姓一揆の首謀者として磔刑(はりつけけい)に処す)。」
・P256 峠で、日下部源五(郡方)、松浦将監(家老)の2人が、上意討ちの追っ手を撃退したあと、「夕斎(前家老)は失脚した時、ただ一人だけだったが。しかし、わしにには(松浦将監)友(日下部源五)がいた」
主人公達が、心血を注ぎ築いてきた月ヶ瀬藩を、末永く守りたいと願いが功を奏す。
松浦将監が、老中松平定信(まつだいらさだのぶ 天明7年(1787)老中主座、実在の人物)に訴え、藩主の国替えの意思を阻止した。
これを称え、「弧忠の行い」と綴っている。
これは、肥前唐津6万石藩主水野忠邦(みずのただくに)が老中になるため、遠江浜松藩7万石の国替えが題材になっているのではないかと推察します。
水野忠邦は、国替えに成功し、老中となり、12代将軍家慶(いえよし)のとき、「天保の改革」断行、余りに厳格な改革のため2年余りで失敗、隠居謹慎(いんきょきんしん)となる。後嗣は、2万石減封のうえ羽前山形(う ぜんやまがた)へ移封となる。水野家は、徳川家康の生母伝通院の実家で桓武平氏の祖先を持つ、忠邦を含め3人の老中を輩出している。
本小説では、「月ヶ瀬藩 6.5万石 → 下総古河藩 7万石(実高10万石) → 三河岡崎藩 → 月ヶ瀬藩 」、借銀の多い三河岡崎藩を救おうとしたよからぬ意図があったと・・・・。
この小説には、恋のせつなさ、夫婦愛、家族愛、約束をたがえないこと等、数多く盛られています。
銀漢とは、「天の川」さすとのこと。銀漢にまつわる漢詩を書き、松浦将監が十蔵に与えたものが、友を結ぶものとして描かれている。
源五が、「頭に霜を置き、年令を重ねた漢(おとこ)も銀漢かもしれんな」・・・・3人とも銀漢と思う。
素晴しい小説なので、是非一読をお勧めします。