【古森義久の緯度経度】朝鮮半島有事の危機はすぐそこに来ている! トランプ政権内外で「予防攻撃」論相次ぐ理由とは…
米国のトランプ政権にとって北朝鮮の脅威は当面、安全保障上の最大の危機として迫ってきたようだ。北朝鮮が核兵器と各種ミサイルの開発へとひた走り、無法な実験を重ねてきた歴史は長い。この数カ月、その好戦的な言動はとくにエスカレートしてきた。
ではトランプ政権はどう対応するのか。政権内外で「予防攻撃」という名の下での軍事手段が頻繁に語られるようになった。
ティラーソン国務長官は軍事行動を含む「あらゆる選択肢の考慮」を明言した。上院外交委員長のボブ・コーカー議員(共和党)が「米国は北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)を予防的に攻撃する準備をすべきだ」と述べた。
上院軍事委員会の有力メンバー、リンゼイ・グラハム議員(共和党)は北朝鮮のICBM開発阻止のため大統領に予防的軍事攻撃の権限を与える法案を出すと言明。ウォルター・シャープ元在韓米軍司令官は、北朝鮮がICBMを発射台に載せる動きをみせれば攻撃をかけることを提唱した。
1990年代から米側の対応策では軍事手段は断続して語られてきた。だがいまほど現実味を帯びたことはない。トランプ政権は歴代政権よりも確実に強固な姿勢を固めたようなのだ。
政権内ではマクファーランド大統領副補佐官(国家安全保障担当)が中心となり、軍や政府の関連機関から具体的な対策案を3月上旬までに集めた。軍事手段も含めての多様な提案がいま国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長、マット・ポッティンジャー氏を実務調整役として検討されているという。
トランプ政権内部の動きについて、これまで30年も米国政府内外で朝鮮情勢研究を専門にしてきたジョージ・ワシントン大学のラリー・ニクシュ教授に尋ねてみた。教授は現政権のアジア部門に近いとはいえ、あくまで外部からの考察の結果だと前置きして、以下の要点を明らかにした。
▽トランプ政権は北朝鮮の核武装とICBMの開発阻止のため、優先政策として中国に北朝鮮への石油輸出の全面停止など決定的な経済制裁を実施するよう最大の圧力をかけることを目指している。
▽そのためトランプ政権は当面の対中関係では北朝鮮問題が最優先課題だとみなし、中国が決定的な対北制裁を実行すれば他領域である程度の対中譲歩をしてもよいという構えがある。
▽ただトランプ政権は軍事攻撃案もかつてない真剣さで詰めており、最も現実的な方法は北朝鮮の北西部の弾道ミサイル発射基地などへのミサイルあるいは有人無人の航空機による限定的な爆撃案とみている。
▽核施設への直接攻撃は、核弾頭や核燃料の再処理・濃縮施設の位置が確認できず、山岳部の深い地下にあるとみられるため効果が期待できず優先されていない。
ニクシュ氏がさらに強調したのは、トランプ政権が米側の軍事攻撃が必ずしも全面戦争にはつながらないという認識を強め始めたようだという点だった。
これまでの軍事案はすべて北朝鮮の全面反撃で韓国側に甚大な被害が出るとの見通しで排除されてきた。だがトランプ政権下では拠点攻撃への北朝鮮側の全面反撃を抑止できるという見方が広まったというのだ。
いずれにせよ、朝鮮半島有事の危機はすぐそこまで迫ってきた。日本の反応の鈍さが改めて心配になる。(ワシントン駐在客員特派員)
自分だけかなぁ、野党は国益よりも政局を優先しているように感じるのは。