鉄道ファンはなぜ特急「北アルプス」が好きなのか その十分すぎる理由
名鉄の特急「北アルプス」の廃止に腹を立て、JR東海の列車運行を妨害した男性が逮捕されました。その行為は決して肯定できませんが、「北アルプス」が面白い列車という点については、否定する鉄道ファンは少ないかもしれません。この列車、実は「鉄分」を大変くすぐる列車なのです。
「鉄分」が反応しやすい「北アルプス」
2014年12月2日、東海道本線の線路へ自転車を投げ入れた鉄道ファンの男性が愛知県警に再逮捕されたと、朝日新聞が伝えました。同紙によると、この男性は以前にもウソの電話をかけてJR東海の列車運行を妨害。今年11月11日に逮捕されていました。
またこの鉄道ファンがJR東海に妨害行為を行った理由として、JRのせいで2001年、好きな名古屋鉄道(名鉄)の特急「北アルプス」が廃止されたからと報道されています。
決してあってはならない今回の事件ですが、ただ「北アルプス」という特急が好きだったという点だけについては、同意する鉄道ファンは少なくないと思われます。様々な個性を持っており、2001年に名鉄自身がその資料館で「廃止から10年・北アルプス号」という特別展を開催するような列車だったからです。
名鉄特急「北アルプス」のどんな点が「鉄分」をくすぐるのかというと、まず「直通」が挙げられます。
この列車は2001年に廃止された当時、名鉄の神宮前駅(名古屋市熱田区)から名古屋本線と犬山線を経由し、新鵜沼駅(岐阜県各務原市)より連絡線へ進入。JR東海の高山本線鵜沼駅に抜けて、高山駅(岐阜県高山市)まで走っていました。JRと第三セクター鉄道、また通勤電車の直通運転は珍しくないですが、名鉄のような大手私鉄の特急がJRへ直通運転する例はあまりありません。
しかもこの「北アルプス」、1984(昭和59)年まではさらに別の私鉄にも直通していました。高山本線の終点の富山駅から、富山地方鉄道へ直通。名鉄の神宮前駅と富山地鉄の立山駅という異なる私鉄の駅を国鉄(JR)線経由で結ぶという、かなり個性的な列車だったのです。
名鉄の車両とJRの車両が合体
「北アルプス」が「鉄分」をくすぐる点として、車両も挙げられます。JR高山本線は非電化のため、使うのは電車ではなくディーゼルカーです。もちろん「北アルプス」もそうで、電車ばかりがひっきりなしに発着する地下構造の新名古屋駅(現在の名鉄名古屋駅)へ、エンジン音を響かせ、排煙の香りを漂わせながら進入してくる「北アルプス」は高い非日常性と存在感がありました。
また「ディーゼルカー」というと性能が低そうに思うかもしれませんが、「北アルプス」に使用されていた名鉄キハ8500系は355psのエンジンを1両あたり2基搭載。最高速度は120km/hと電車と遜色のない性能を持っていました。
高山本線内では、JR名古屋駅始発の特急「ひだ」と連結して運転していたのもポイントです。JRのディーゼルカーと名鉄のディーゼルカーが合体し、1本の列車として走っていたわけです。このように違う鉄道会社の車両が連結して走る例は、特に近年では珍しく、この点も「北アルプス」の大きな個性でした。
また名鉄と高山本線との直通運転は、非常に歴史が古いのも特徴です。1932(昭和7)年から名古屋と高山本線沿いの温泉地、下呂を結ぶ列車が運転されています。
このように、多くの個性を持っていた特急「北アルプス」。それを好きだったと言われて、「なんで?」と疑問を抱くような列車ではないのです。鉄道ファンにとって。逆恨みは理解できませんけれども。
ちなみに特急「北アルプス」が廃止された理由は、東海北陸自動車道の延伸と名鉄自身が運行している名古屋と高山を結ぶ高速バスの運行開始、利用客の減少、電車ばかりの名鉄がディーゼルカーをわずかに保有する効率の悪さ、などとされています。
※初出時に、特急「北アルプス」が廃止された年を一部「2011年」と記述しておりましたが、正しくは「2001年」でした。修正してお詫び申し上げます。
2年半前の記事ですが、懐かしいので。