「とりあえず生ビール」の「生」って一体何だ? 意外と知らないビール業界の裏側(東洋経済オンライン) - goo ニュース
居酒屋のメニューでよく見かける「生ビール」と「瓶ビール」。改めて「この差は何?」と問われると、皆さんは答えられるだろうか?
ある人は「冷えたジョッキでグーッと飲む、クリーミーな泡の生ビールの方が絶対に美味しい!」と味の差を力説。「瓶ビールのほうが断然お得!」と価格の差を語る人や、「中華や焼き肉には生ビールだけど、おでんの時は絶対瓶ビール!」とシチュエーションの差を論じる人もいる。
「あなたはどっち派?」
訊ねただけで、やれ生ビールだ、やれ瓶ビールだと、これだけで結構話が盛り上がるわけだが、はたしてこの差は一体何なのか?TBSテレビ「この差って何ですか?」(次回は5月10日<日>よる7時~)取材班は、謎を解くべく、日本ビアジャーナリストの藤原ヒロユキ氏に話を伺った。
生ビールと瓶ビールに差はない!
藤原氏によると、何と「生ビールと瓶ビールに差はまったくない」という。ジョッキで飲むか、中身をグラスに注いで飲むかの違いだけで、ビールそのものは同じものだという。いやいやいやいや、そんなバカな・・・それじゃ、どっちのキレがいいとか、どっちの喉ごしがどうだとか、散々盛り上がったわれわれはいったい何なのだ?
「現在日本で製造されているほとんどのビールは、瓶・缶問わず、すべて『生ビール』」(藤原氏)なのだという。確かに、各メーカーから売られている様々なビールをよく見ると、しっかりと「生ビール」の表記がある。しかし、そもそも何が「生」なのか。
生チョコ、生めん、生キャラメル・・・「生」とつくだけで贅沢な味わいが楽しめて、何かしら付加価値がついている感じがするが、ビールの「生」って?そして「生ビールじゃないビール」があるとしたら、それは一体どんなビールを指すのだろうか。
そもそもビールは、麦汁にビール酵母を加えて発酵させ、ある程度熟成がすすみ、うまみが十分引き出されたタイミングで酵母を取り除き、それ以降の余計な発酵を止めて完成…となる。日本で最初にビールを製造しはじめた1872年頃からしばらくは、酵母を取り除くための濾過技術の程度が低かったため、加熱処理をして発酵を止めていた。これを「熱処理ビール」と呼んでいた。
ところが1960年代になると、濾過技術の精度が飛躍的に向上したため、加熱処理をしなくても十分に酵母を取り除き発酵を止めることができるようになった。それまでの「熱処理ビール」に対して「生ビール」と呼ぶようになったというワケだ。
つまり、日本に生ビールが誕生してからまだ50年ちょっと。現在では、昔ながらのビールファンのためにキリンビールの「クラッシックラガー」やアサヒビールの「アサヒスタウト」、サッポロビールの「サッポロラガー」などが、熱処理ビールとして製造・販売されているが、こんなビールの歴史に思いをはせながら、飲み比べてみるのも楽しいかもしれない。
それにしても、ここまで聞いてもやっぱり納得できないのが、缶ビールまで中身がまったく同じという衝撃の事実。どう考えても店で飲む生ジョッキと家で飲む缶ビールが同じとは思えないのだが――。
缶ビールを美味しく飲むための秘訣を伝授
藤原氏いわく、「缶ビールがいまいちだと感じてしまうのは、多くの人が缶からそのまま飲むせいではないか?」。そこで自宅で極上の生ビールを味わうための「三度注ぎ」の極意を教えていただいた。
まず、少し大きめのグラスを用意して、グラスの半分ぐらいまで勢いよく一気に注ぎ・・・泡が落ち着くまで少々の間待機。ここでどれだけしっかり泡が作れるかがポイントということで、躊躇せずに思い切り注ごう。
そして、残りのビールを注ぎたして飲み口ギリギリまで泡を作ったら・・・最後はグラスのはじから静かに注いで出来た泡がカップケーキのように盛り上がったら完成!
この、クリーミーでたっぷり出来た泡は、ビールの酸化を防ぎ炭酸や香りをキープするなどグラスの中で蓋の役割を果たす同時に、苦み成分を吸着してくれるため、ビールをおいしく味わうためには必要不可欠なのだ。ちなみに、せっかく作ったビールの泡も、グラスが汚れていたりすると長持ちしなくなってしまうため、グラス専用のスポンジでしっかり洗っておこう。
洗ったグラスは布巾などでふくと手の油や糸くずがついて台無し、ということもあるそうなので、グラスを逆さまにして自然乾燥するのがベスト。意外なのが、グラスを冷凍庫にいれてキンキンに冷やしておくのは絶対NGということ。中身が冷えすぎてビール本来の味があじわえなくなるうえ、グラスに出来た結露が泡づくりの妨げになるのだ。グラスを冷やすなら冷蔵庫で。また、缶ビールそのものは、いまの季節野菜室で冷やしておくくらいがちょうどいい。
せっかく買ってきた缶ビール・・・どうせ飲むなら手間を惜しまず極上の味わいを楽しみたいものだ。
アサヒビールの福島工場と、キリンビールの横浜工場を見学し、それぞれで試飲もさせてもらいました。
おいしい注ぎ方のレクチャーもあり、どっちかが『三度注ぎ』で、どっちかが『二度注ぎ』でしたよ。
…どちらも結局、工場の出来立てビールは美味しかった~ということで。