演劇、朗読、俳句ワークショップ、音楽ライブ、写真や短歌の展示…と盛り沢山の、奈良町家でのワーズウィングスの初のイベントについて、奈良まちづくりセンター(NMC)の会報誌に特集記事として掲載されたものを、まま、転載します。皆さん、本当にお疲れ様でした。ポップコーンも販売、完売!美味しかったね。
奈良町物語館
奈良町から表現の場を~ワーズウィングスの活動から ワーズウィングス代表・小町座主宰・NMC会員 小野小町
ワーズウィングス(Wordswings)という団体を2021年に立ち上げ、奈良町を中心に活動しています。2月18,19日の二日間、所属メンバーによるイベントを、奈良町物語館で開催しました。そのレポートも兼ねて、これまで奈良町で表現活動を続けてきた者として、その様子をお伝えできたらと思います。
●団体名のこと
ワーズウィングスは造語です。イギリスの高名な詩人「ワーズワース(Wordsworth)」の名前に「言葉&価値」が見え、それをヒントに、言葉が羽ばたき、様々なジャンルとコラボできたらと、名づけました。私ごとになりますが、約40年前、奈良教育大学在学時に戯曲賞を受賞し、若い頃、舞台や放送脚本の仕事をしたり、育児中に日本を代表する歌人、前登志夫に出会い歌の世界へ入るなど、いつも「言葉」が暮らしの中心にありました。思考を形成し人と対話し、自分を創り上げる言葉。私たちが今いる場所から、暮らしの中から、表現を通して言葉を発したい。そんな気持ちが活動の起点にあります。
●小町座の活動が始まり
暮らしの中からというと、私の立ち上げた小町座の演劇活動は16年になります。当初、親愛幼稚園の母親たちがメンバーで、その頃の子どもたちは今、大学生や社会人です。私の作、演出で、指導は厳しく、公演を見た方から「ほんとに母親の芝居?」とよく言われます。演劇評論家、神澤和明氏に「高い水準の舞台を発表し続けている」(2021『テアトロ』)と評されました。ご飯を作り、子どもの学校や家族の用事に自分の仕事…ここに「演劇」を入れるのは、とても大変で、出演者の努力には頭が下がります。
演劇は、エンタメとして舞台の完成度をあげることはもちろん、大事ですが、皆が戯曲と格闘していく作業に、私は一番意味を感じています。セリフを読みながら、自分の知らない世界や歴史~戦争や平和、環境や現代の問題を知り、他者への想像力を育んでいく…。舞台は華やかさが注目されがちですが、セリフに向き合う時間から学ぶことも多いと感じています。
そして現在、小町座は若い世代と共に作品を作る場になりつつあります。
奈良町物語館 2014 奈良県記紀万葉プロジェクト「やまと言の葉ものがたり」 小町座+市民参加
●演劇からジャンルが広がる
演劇は総合芸術。言葉、音楽、美術・照明…いろんなジャンルの人が関わって創り上げます。
地元の音楽家、小宮ミカさんもその一人。小西さくら通り商店街で7年前から流れている歌、「ならうたものがたり」の作曲(作詞・小野小町)を初め、小町座のラジオ番組の音楽も。こうした活動を支えてくれた人たちがワーズウィングスのメンバーです。
団体として依頼された初めての実施企画は、2021年10月のならまちセンターギャラリーでの「立版古」福田雄一展。紙で作った立体の組立画の展示は、NHKで放送され、8500人を超える方が来ました。また、私の書いた地元ゆかりの演目の朗読劇などを、公民館等の主催事業で披露してきました。
●奈良町物語館で「With Words Wings」開催
そして今年、2月18,19日の二日間、年1回のお祭り的な意味も含めてのイベントを開催しました。演劇、朗読、展示、コンサート他、盛り沢山のプログラムです。物販のポップコーンは就労支援事業所の「おむすび」に販売協力をお願いしました。
雨にも関わらず、椅子が足りなくなる程、盛況な時間帯もあり、なんとなく立ち寄ったが、短いものならと鑑賞する方もいました。物語館が、気軽に朗読や展示、音楽等に触れられる場としてあり、玄関を開けたままにしていたので、上演の声に「何をしているんだろう」と、のぞく人をよく見かけました。
ゲストは上田假奈代さん。上田さんは、西成で釜ケ崎芸術大学を主催し、地域に生きる人の表現の場を作り、対話や制作を続けてきた詩人として全国的に知られています。写真と共に、その活動を紹介してもらいました。また、彼女の俳句ワークショップはユニークで、一人一句作るのでなく、会話しながらイメージを広げ、共同で作りあげるスタイル。皆で楽しみました。
上田假奈代さんの俳句ワークショップ
●町家の座敷で物語る
小町座の公演「なゐのことばよあれ」は、3.11の震災を忘れない「言葉」を届けるコーナー。福島の歌人、立花正人さんの震災直後のエッセイや、被災した当時の小学生の作文等を読みました。決して明るくない内容ですが、皆さんが集中して聞くのが伝わってきました。
また、岡本かの子の小説を一人芝居として戯曲化した作品を2本、着物姿で上演。「物語館の空間は、なんだか家にいるようでとても演じやすかった。」とのこと。
朗読劇団「言の葉の羽」は、私がならどっとFMの番組に書き下ろした、奈良が舞台のラジオドラマを朗読、奈良町や近辺の映像とともに披露しました。絵本コーナーは、お客様も参加、中でも、鮨のネタの名前をどんどん出してもらうリズム遊びは、大盛り上がり!みんな童心に返って大笑いをしました。
●写真作品&マイフォト短歌
奈良公園や近隣の自然の写真を撮り続けている河村牧子さん。一昨年、ならまちセンターギャラリーで私の短歌と河村作品のコラボ展は、7500人が来場しましたが、その彼女の新作の写真。鹿や蝉、生きものへのやさしい眼差しに満ちた作品は好評でした。
もう一つは、奈良町をフィールドに学びを続ける、天理大学杉山研究室の展示。わらべうたフェスタ他で、大活躍の杉山研のメンバーは、小町座の演劇の出演や照明、映像サポート等、大変お世話になっています。今回は初めて短歌に挑戦!奈良町での自作写真に、歌をつけました。事前に天理大学に行き、歌の指導をしたのですが、その後、皆で検討しながら制作。「この作業過程が面白く意味があった。」杉山先生の言葉です。また展示だけでなく、来場者への大和茶の提供、会場設営、撤収、記録作業など、積極的に動く姿に、メンバー一同、感動しました。一方、学生たちから見れば、母親世代のメンバーが、ここまで真剣に演じることに驚き、びっくりした様子で、今後も一緒にやりたい、と言ってくれたことが、私たちには何よりの喜びでした。
小町座一人芝居「鮨屋の娘」
マイ・フォト短歌 自作解説
●コンサート&音楽談義
小宮作品は、これまで、ピアノの作曲・演奏活動がメインでしたが、今回は打楽器。それも、三昧琴他、珍しい楽器が並びました。蝋燭の火が灯り、倍音効果で音色が館内に広がっていく、その心地よさに「あの楽器ほしい。習ってみたい。」というお客様もいました。
小町座の音響操作担当のエイスケさんは、自分語りに初挑戦。弱視かつ知的ハンデがありますが、音楽を聞きセレクトする能力は独自のものがあり、彼が生まれてから22歳の現在までに聞いた音楽を実際に紹介しながらのトークでした。つらかった時に音楽があって良かったという話に共感の声が届いています。
最後に、一人芝居を熱演した、20代の出演者の言葉を。「芸術を通してたくさんの方と交流できる場が、これからもずっとどこかにあり続けて欲しいと願っています。」
奈良町物語館
奈良町から表現の場を~ワーズウィングスの活動から ワーズウィングス代表・小町座主宰・NMC会員 小野小町
ワーズウィングス(Wordswings)という団体を2021年に立ち上げ、奈良町を中心に活動しています。2月18,19日の二日間、所属メンバーによるイベントを、奈良町物語館で開催しました。そのレポートも兼ねて、これまで奈良町で表現活動を続けてきた者として、その様子をお伝えできたらと思います。
●団体名のこと
ワーズウィングスは造語です。イギリスの高名な詩人「ワーズワース(Wordsworth)」の名前に「言葉&価値」が見え、それをヒントに、言葉が羽ばたき、様々なジャンルとコラボできたらと、名づけました。私ごとになりますが、約40年前、奈良教育大学在学時に戯曲賞を受賞し、若い頃、舞台や放送脚本の仕事をしたり、育児中に日本を代表する歌人、前登志夫に出会い歌の世界へ入るなど、いつも「言葉」が暮らしの中心にありました。思考を形成し人と対話し、自分を創り上げる言葉。私たちが今いる場所から、暮らしの中から、表現を通して言葉を発したい。そんな気持ちが活動の起点にあります。
●小町座の活動が始まり
暮らしの中からというと、私の立ち上げた小町座の演劇活動は16年になります。当初、親愛幼稚園の母親たちがメンバーで、その頃の子どもたちは今、大学生や社会人です。私の作、演出で、指導は厳しく、公演を見た方から「ほんとに母親の芝居?」とよく言われます。演劇評論家、神澤和明氏に「高い水準の舞台を発表し続けている」(2021『テアトロ』)と評されました。ご飯を作り、子どもの学校や家族の用事に自分の仕事…ここに「演劇」を入れるのは、とても大変で、出演者の努力には頭が下がります。
演劇は、エンタメとして舞台の完成度をあげることはもちろん、大事ですが、皆が戯曲と格闘していく作業に、私は一番意味を感じています。セリフを読みながら、自分の知らない世界や歴史~戦争や平和、環境や現代の問題を知り、他者への想像力を育んでいく…。舞台は華やかさが注目されがちですが、セリフに向き合う時間から学ぶことも多いと感じています。
そして現在、小町座は若い世代と共に作品を作る場になりつつあります。
奈良町物語館 2014 奈良県記紀万葉プロジェクト「やまと言の葉ものがたり」 小町座+市民参加
●演劇からジャンルが広がる
演劇は総合芸術。言葉、音楽、美術・照明…いろんなジャンルの人が関わって創り上げます。
地元の音楽家、小宮ミカさんもその一人。小西さくら通り商店街で7年前から流れている歌、「ならうたものがたり」の作曲(作詞・小野小町)を初め、小町座のラジオ番組の音楽も。こうした活動を支えてくれた人たちがワーズウィングスのメンバーです。
団体として依頼された初めての実施企画は、2021年10月のならまちセンターギャラリーでの「立版古」福田雄一展。紙で作った立体の組立画の展示は、NHKで放送され、8500人を超える方が来ました。また、私の書いた地元ゆかりの演目の朗読劇などを、公民館等の主催事業で披露してきました。
●奈良町物語館で「With Words Wings」開催
そして今年、2月18,19日の二日間、年1回のお祭り的な意味も含めてのイベントを開催しました。演劇、朗読、展示、コンサート他、盛り沢山のプログラムです。物販のポップコーンは就労支援事業所の「おむすび」に販売協力をお願いしました。
雨にも関わらず、椅子が足りなくなる程、盛況な時間帯もあり、なんとなく立ち寄ったが、短いものならと鑑賞する方もいました。物語館が、気軽に朗読や展示、音楽等に触れられる場としてあり、玄関を開けたままにしていたので、上演の声に「何をしているんだろう」と、のぞく人をよく見かけました。
ゲストは上田假奈代さん。上田さんは、西成で釜ケ崎芸術大学を主催し、地域に生きる人の表現の場を作り、対話や制作を続けてきた詩人として全国的に知られています。写真と共に、その活動を紹介してもらいました。また、彼女の俳句ワークショップはユニークで、一人一句作るのでなく、会話しながらイメージを広げ、共同で作りあげるスタイル。皆で楽しみました。
上田假奈代さんの俳句ワークショップ
●町家の座敷で物語る
小町座の公演「なゐのことばよあれ」は、3.11の震災を忘れない「言葉」を届けるコーナー。福島の歌人、立花正人さんの震災直後のエッセイや、被災した当時の小学生の作文等を読みました。決して明るくない内容ですが、皆さんが集中して聞くのが伝わってきました。
また、岡本かの子の小説を一人芝居として戯曲化した作品を2本、着物姿で上演。「物語館の空間は、なんだか家にいるようでとても演じやすかった。」とのこと。
朗読劇団「言の葉の羽」は、私がならどっとFMの番組に書き下ろした、奈良が舞台のラジオドラマを朗読、奈良町や近辺の映像とともに披露しました。絵本コーナーは、お客様も参加、中でも、鮨のネタの名前をどんどん出してもらうリズム遊びは、大盛り上がり!みんな童心に返って大笑いをしました。
●写真作品&マイフォト短歌
奈良公園や近隣の自然の写真を撮り続けている河村牧子さん。一昨年、ならまちセンターギャラリーで私の短歌と河村作品のコラボ展は、7500人が来場しましたが、その彼女の新作の写真。鹿や蝉、生きものへのやさしい眼差しに満ちた作品は好評でした。
もう一つは、奈良町をフィールドに学びを続ける、天理大学杉山研究室の展示。わらべうたフェスタ他で、大活躍の杉山研のメンバーは、小町座の演劇の出演や照明、映像サポート等、大変お世話になっています。今回は初めて短歌に挑戦!奈良町での自作写真に、歌をつけました。事前に天理大学に行き、歌の指導をしたのですが、その後、皆で検討しながら制作。「この作業過程が面白く意味があった。」杉山先生の言葉です。また展示だけでなく、来場者への大和茶の提供、会場設営、撤収、記録作業など、積極的に動く姿に、メンバー一同、感動しました。一方、学生たちから見れば、母親世代のメンバーが、ここまで真剣に演じることに驚き、びっくりした様子で、今後も一緒にやりたい、と言ってくれたことが、私たちには何よりの喜びでした。
小町座一人芝居「鮨屋の娘」
マイ・フォト短歌 自作解説
●コンサート&音楽談義
小宮作品は、これまで、ピアノの作曲・演奏活動がメインでしたが、今回は打楽器。それも、三昧琴他、珍しい楽器が並びました。蝋燭の火が灯り、倍音効果で音色が館内に広がっていく、その心地よさに「あの楽器ほしい。習ってみたい。」というお客様もいました。
小町座の音響操作担当のエイスケさんは、自分語りに初挑戦。弱視かつ知的ハンデがありますが、音楽を聞きセレクトする能力は独自のものがあり、彼が生まれてから22歳の現在までに聞いた音楽を実際に紹介しながらのトークでした。つらかった時に音楽があって良かったという話に共感の声が届いています。
最後に、一人芝居を熱演した、20代の出演者の言葉を。「芸術を通してたくさんの方と交流できる場が、これからもずっとどこかにあり続けて欲しいと願っています。」