ことのはのはね~奈良町から

演劇、アート、短歌他、町家での出会いまで、日々を綴ります。

7/28 公演 町家劇場 を終えて

2018-07-30 | 演劇
町家劇場、満員御礼で終えました。皆様ありがとうございました。
追加席を急遽用意、入り口すぐ舞台に横向きに座っていただいたり、音響スタッフの真横に座っていただいたり…。
昔、通ったテント芝居の密度ほどではないですが、この身近さはお客様の感触が本当によくわかります。「笑っている」「少し眠い?」「うるっとしている!」などなど。どうも午後から、台風で警報が出ていたらしいのですが、なんとか雨も降らず…。町家の熱気に、台風もそれたのか?!(いえいえ、この夜の台風は奈良を直撃!びっくりしました。)
さて、私の大事な短歌の先輩から、以下の感想をいただきました。
「奈良町ならではの手触りのある朗読と短編劇、良かったです。「ことのは」に力がありました。現代人はややもすればTVやスマホの「映像」表現が幅をきかせているため、朗読を「聴く」力が衰えているように思います。「旧友と昔ばなしをするやうにしみじみちかき真夜のラジオは」私の作ですが、ラジオの時代は聞き手がもっと近い位置で想像力を働かせていた思います。(中略)今回の朗読は手仕事の確かさがあるように感じました。」
最後の演目、テイチクうたものがたり」ですが、テイチクに父がいた、兄がいた、というお客様もいて、終わってから声をかけて下さいました。戦前のドラマが中心でしたので、「戦後編を是非、書いて下さい!」と言われました。
さて、キャストですが、あまり誉めないでおきましょう。スタートに立った皆さん、まだまだこれから。年を経てもこんなに成長するわよ!を見せてくださいね。
さて、終わったばかりですが、8/24(金)午後6時と7時の2回、この町劇の会場、さんが俥座で、夜の語りをします。こちらは奈良県と奈良市の共催の「ならまち遊歩」のイベントの一つ。「猿沢池三部作」と題して、書き下ろした短編を朗読します。無料。出入り自由ですので、夜の町家の良さを感じにいらしてください。
最後に、町劇第二回目の公演は、12月上旬予定。「町劇のクリスマス」。ご期待ください。


小町座「新聞ものがたり」

「テイチクうたものがたり」

全員集合!  以上撮影・河村牧子  




7/14  エレベーター企画「女優ものがたり」 公演 

2018-07-15 | 演劇
私が三十年前書いた戯曲の再演、演出はエレベーター企画の外輪能隆さん。彼はその三十年前に一緒に演劇活動をしていて、アーティスティックな演出でしっかりとした芝居を構成する、実力派の演出家です。なので、全く心配もなく、楽しみに伺いました。案の定、舞台空間は、綿、大きな綿の布団のようなものが瀧の流れのように敷き詰められ、その上に客も座る、といった、外輪ワールド。この平たい雲のような空間は、真っ白なので、映像が映り、照明も効果的。小劇場ならではのわくわく感があります。
登場人物は4人+ポチ(犬)。なんと、ポチ役は演出の外輪くん。ポチが出るとそっちに目がいきます。演出家が役者をくってしまう…。
お客様も笑ってほしいところで笑ってくださり、ほっとしました。
一方、私は舞台を見ながら、味わったことのない感覚に入っていきました。若い私の書いたもので未熟ではあるが、1人だった頃の自由さが、言葉に羽がついたように、飛んでいっているのを見て、変な感傷というか、かつての書いていた時間の全体が、妙にリアルにのしかかってきたのです。結婚し、家庭人となり、何を背負っていたというほどのことはないのですが、11年前に小町座を立ち上げ、今、町家の企画運営に関わりながら、朗読劇をまた立ち上げていますが、こうしたこととは関係ない、ただセリフを戯曲にだけ向かっていた、自由さに、妙に驚いてしましました。もちろん、戯曲的には、今書くものの方が、意図も構成もしっかりしています、なのに、今日の「女優ものがたり」の言葉の跳ね方は、若さゆえの気楽さもあるでしょうが、当時の演劇を取り巻く環境の自由度も感じてしまいました。そのことは、終演後に外輪くんとのトークでも言いました。
三十年は平成の時代にまま、重なります。今回の再演に感謝したいのは、自分の中でリセットすべきものがある、昔にまま戻るのではなく、しかし、再度、今日聞いたセリフの調べの正体をきちんと考えることが、本当に書きたい戯曲へつながるような気がしています。再演に感謝。
さて、役者さんたちは、外輪メソッド?!に鍛えられ、よく演じました。今回は母と子のブラックファンタジーといった芝居なのですが、登場人物は記号的で、だからこそ、つかみきれない普遍性もあるとは思いますが、唯一、人間的?な主人公の友達、フツ子役の沢井里依は、お得なキャラではあるのですが、弾けて楽しかった。小さな体のバネがきいてましたね。
7/15は三回(11時、15時、19時)、7/16は二回(11時、15時)とまだ五回公演があります。当日ありとのことですので、evkk1807@gmail.com までお問い合わせください。
写真は、アフタートークの様子。演出家の外輪くんは、ポチの衣装のまま。暑かったと思います!




6/30 奈良町にぎわいの家「森川杜園と柴田是真」

2018-07-03 | にぎわいの家・奈良関連
3年前に、奈良町にぎわいの家、開館の折に考えたことは、一つがシンボルとなるマークを作りたいということと、奈良町ときいて名前がすぐ出てくるような人をクローズアップしたいということでした。シンボルマークは、二十四節気オリジナルマークとして(デザイン・金田あおい(藍寧舎)、来館者の皆さんにとても好評です。(24種類のスタンプとオリジナルハガキ、是非、ご来館の折にどうぞ。)
さて、後者の奈良町ときいたら誰?と調べていた3年前、見つかりました!奈良町にぎわいの家の二軒隣に、奈良人形、一刀彫の名人、森川杜園が住んでいたのです。同じ奈良町に住んでいるのに、それまで私は杜園の名前も知らず…。改めて作品を調べてみると…これがとても良いのです。更にわかったことは、この杜園の生涯が小説として発表されていました。「芸三職 森川杜園」、大津昌昭 著 がそれです。大津先生は長年、教育者として活躍されていた方ですが、今から二十五年前に奈良県立美術館での杜園の大回顧展を見られ、そこから興味をもたれ、小説となったとのことですが、本当に大津先生の著作に出会えたのは、幸運でした。更に、読んでびっくり!この小説は、杜園が生涯を語る、語りのスタイルで書かれているのです。またその語りが内容も調子も良くて…。私は戯曲を書くので、こうした語りのスタイルが、こんなにうまく成立している本があるなんて!と、本当に驚きました。大津先生はまるで劇作家のようです…。この小説…語りを朗読劇にしたい!となり、開館一年目、市民参加による「杜園語り」を、私の構成、演出で20名の出演者と作りました。これが第一回。
第二回目は、杜園と出会った人をクローズアップして、10代の杜園に多大な影響を与えた、国学者の穂井田忠友(ほいだ・ただとも)についての大津先生の講演と、その出会いに絞った朗読劇。
昨年の三回目は、岡本彰夫先生による「奈良人形と杜園」についての講演。
そして、今年の四回目が「森川杜園と柴田是真」。絵師になろうとしていた10代の杜園に、一刀彫りをすすめたであろう、柴田是真との物語をお話と朗読での企画です。
柴田是真は、近代を代表する蒔絵師。ウィーン万博にも出品したその作品は、構図が大胆、華があって、緻密で…伝統的なものをふまえて、その上に新しいものをのせていく作風です。その是真と杜園の出会いを、朗読するのですが、なんと、今回、大津先生が是真となって朗読を披露して下さいました。
杜園は小町座の西村智恵、ナレーションは私という、3人での朗読です。西村さんの杜園は伸びやかで、先生の太い声とあいまって、良い朗読でした。
大津先生は、音楽の専門家でもあり、第一回目の企画の時、私の演出の様子を「ここはクレシェンド、デクレシェンド」など、音楽用語で伝えて下さいましたが、お声もよくて、声量のすごいことといったら、七十半ばとはとても思えません。また是真の豪快な感じがぴったりで。先生自身も、「まさかこんな機会があるなんて。」と言われていました。
また、今回、特別に、杜園の彫った作品を、金田充文さんが持参、披露して下さいました。手向山八幡宮の狛犬二対の模造で、裏には杜園が書いた字も記されています。美術館の目録にも掲載されているもので、こういった素晴らしいものが、何気に自宅にあるところに、つくづく奈良の凄さを感じます。
杜園については、昨年、その二軒隣のお宅から、能舞台の松の板絵が、春日大社に運ばれる時に、その板絵を拝見する機会もあり…。この松がまた素晴らしくて…。来年は5回目を迎える杜園企画。大津先生の本から、更に掘り下げて読みたいと思います。ただし、私が読むのは今回が最後ということで…。



 杜園の狛犬!