眼やにと汚れで、ネトネトだった仔猫・・。その眼には、光は届いていなかった。
わたし達二人は、白けた・・。何かいけないモノを見てしまった気がした。
しかし、仔猫は、手さぐりで、おかあさんにひっつき、しっぽにじゃれたり、お乳を飲んだりしていた。
そんな姿をみて、だ~りんは、毎日、何回も、仔猫をつかまえ、
顔を拭いては、親猫のもとに返す作業をくりかえした。
もちろん、飼うつもりは毛頭ないので、丁重にお返ししていた。
母猫は、すごく怒っていたが、何しろ仔猫は目が見えないのですぐ捕まり、作業ははかどった。
そんな日が、二週間以上続き、仔猫の眼は、だんだん透き通ってきて、
ちゃんと見えていることがわかった。
ウチの中で、顔ふきのあと、ビー玉遊びに興じることもあって、少し馴染んできた。
そんな、ある日・・・顔を拭いて、ひとしきり遊んだ仔猫は、窓から出ていく際に、
すっごい目ヂカラを残して、振り向いて・・そして出て行った。
そして、それから、親子ともにぷっつりと姿をけした。私の脳裏には、目ヂカラだけが焼き付いていた。