女性研修医が点滴の注射針を刺すのに苦労されました。少し私は静脈が細いそうです。最初の1本は上手くいかず詰め所へ戻り針を替えて2本目で上手く入りました。
後で看護師に聞くと、両肘の内側、ぼんの窪と言われるところからは採血の際に刺し、早く点滴を落とす必要がある開業医などではここから点滴することもあるようです。同じ静脈なのですが入院中はゆっくり注射が適していて、手に近い表面の浮いた静脈に刺すのだそうです。手術した夕方3本目の点滴、フルマリンキットという抗生物質は袋が小さく早く落ち、チューブに血が逆流しました。詰め所へ行って固まらない薬剤を注射器で入れて処置してもらいましたが、2日目の朝やはり固まって入りませんでした。腕を替えてまた針を看護師に刺してもらいました。
手術予定は11時15分から局所麻酔+静脈内沈静下に口唇腫瘍を摘出術
となっていました。
定刻に看護師が迎えに来て、歩いて看護師と中央エレベータから3階の中央手術室へ直行でした。看護師さんに「貴方はここの勤めは長いの」と聞くと、「いいえ、まだひよこです」と、マスクを取って見せてくれたらほんと高校生のような乙女でした。
手術室へは大きなステンレス扉を、カードか掌紋を識別器に当て、それからペタルを足踏みして開けて入ります。手術室に入る男性職員の後、お母さんに抱かれた2歳未満の女児が入り、その後へ我々が続きました。入るとすぐ椅子に座ります。そこで人定尋問と何の手術か聞かれます。そこで手術帽を冠らされます。小さな女の子と母親が帽子を冠らされました。「あんな小さな赤ちゃんも手術ですか、可哀想に」とつぶやきました。
手術室は10室くらいあるのでしょうか、前にも入ったことがある8号室で、結構中は広く20畳以上あるようです。器械がいっぱいです。手術台に案内され真っ白のビニシーツをめくろうとしたら、「それはそのまま」と制止されました。
狭い寝台に身を横たえいつも「狭いので大きく動くと落ちます」と注意されるので、今度は要領を得ています。
壁の時計を確認するようにしています。台に乗ったのが定刻11時15分丁度を指していました。アナログ時計盤であるのはよろしい。手術帽をテープで固定され、何か上張を掛け腰にベルトが巻かれ固定されます。俎板の鯉です。研修医は壁際のモニターで腫瘍の画像を眺めていました。
オペ看護師は3人くらい紫色の制服でした。この期に及んでくだらない雑談をします。
「この間どこかの病院が患者を間違え、取る必要もない肺を取ってしまったとテレビで観ました」、「そうそう40台の女性です。そのためお名前を聞くのです」、「名前を聞いても、70代の肺がんのお爺さんの検体と取り違えたなんて、お粗末過ぎるよね」と警告しました。
「今度は極所麻酔なので導尿のフォーレは入れないよね」、「入れません、安心なさい」、男のお宝に挿入するフォーレは一晩中痛いのです。そして抜く時は焼け火箸です。それと胃管は苦痛です。
「ガーゼ1枚落としました」、「ガーゼ1枚、了解」と相棒同士が確認して準備が進み丁度11時半執刀医が入室されました。「では始めますよ」、「少しぼんやりするよ」と点滴から静脈に薬剤を入れられました。執刀医とは違う先生で麻酔医でしょう。主治医が「目隠ししますよ」、頭巾を被せ両目を覆い、顎も隠され「麻酔の注射をします」、と腰に力をいれグイッと歯茎にでしょうか注射されました。片足を上げ震えました、それが2回、次いでそれからメスは入った感じでしたが、すっかり眠くなって眠ったらしく手術が終わったと告げられ、時計を見ると丁度12時15分でした。僅か1時間の手術でした。
終わっていつの間に運び込んでくれたか、ベッドへ移され病室へと看護師さんが運んでくれました。今はエレベーターも大きくストレチャーは使いませんね。