先日、大分県へ狂言を観に行ってきました。
会場は平和市民公園能楽堂。私にとっては、初の能楽堂。
ここが能楽堂ねぇ、ほほ~うと、きょろきょろと周りを見渡して自分の席に座って
再び周りを見渡せば、舞台はもちろん目に入るが、客席までもが目に入ってくる。
座っている場所にもよると思うが、会場全体が見渡せる。
通常ホールなら、客席は観客の後姿しかみないのだけど、
能楽堂だと観客の表情がわかっちゃうんですね。
それって、いままでとは違う感じ。
なんだろう。一体感なのかな。
狂言は「入間川」と「悪太郎」でした。
狂言のおはなし:深田博治
「入間川」
大名:野村万作 太郎冠者:高野和憲 入間の何某:石田幸雄 後見:岡 聡史
「悪太郎」
悪太郎:野村萬斎 伯父:野村万之介 僧:深田博治 後見:高野和憲
「入間川」
長らく都に来ていた遠国の大名が、太郎冠者を連れて本国へ帰っていました。
この大名は都で、なにか勝訴したみたいなんです。
大名はきっと、うれしかったんでしょうね。その感じが大名から伝わってくるんですよ。
観てるこっちもうきうきしちゃって、やったね!感じ。見えるもの全てがキラキラ見えるのがわかるんです。
そして、二人は入間川へ行き当たったんです。
どこを渡ればいいんだろうと思っていたら、川の向こう側に人がいて、
大名がその人に尋ねたんですが、その尋ね方が悪かったみたいで、それがそのまま
川の向こう側の人に対応にあらわれたみたいなんです。
まぁ、あらわれたというか、大名の姿がその人に写し出されたんでしょうね。
で、太郎冠者が、大名の聞き方が悪かったから、もう一度ていねいに聞いてみたらいいと思うと言ってたんです。
ここで私は、えぇ?と思いました。
太郎冠者といえば、そんなしっかりしたキャラクターじゃないのに、この太郎冠者は
しっかりものだったからです。しっかりした太郎冠者もいるんですね。
そして、大名がちゃんとした聞き方で尋ねると、川の向こう側の人はちゃんと答えてくれたんです。
その人は、ここは川底が深いから、もうちょっと向こう川の方から渡った方がいいですよ
といいました。
でも、大名はその人の言うことをきかずに、目の前の川を渡っちゃったんです。
そしたら、そこの川は深くて大名は「あれ~」とおぼれそうになっちゃって
やっとこさ川から這い上がりました。
そして大名は「おのれ!なんということを!成敗してくれる!」というんです。
教えた人は、まってくれ、自分はちゃんと教えたではないかと主張。
そしたら大名は、昔から入間では「入間様(いるまよう)と言って逆さ言葉を使うはずだと怒っちゃってるんです。
そんな無茶苦茶なぁ、そんな風習もあるかもしれないけど、その土地の人全てがそういうわけじゃないよね。
それって、今でもあること。
でも、その教えた人は機転が利いたみたいで、大名が聞くことに対して、
逆さ言葉を使って返答していったんです。。
そしたら、大名はその逆さ言葉にうけちゃって、気分がよくなったようなんです。
これって「ほらね、やっぱり」というのもあったろうし、
勝訴した気分のよさも復活してきて「まっ、いいか」という気分にもなったんじゃないかな。
それから大名は超ごきげんな感じになっちゃって、教えた人が入間様を言うたびに
うけちゃって、うけちゃうたびに刀とか着物とかあげちゃうんです。
でも、ハッと気がついたんでしょうね。調子にのりすぎたってね。
最後には、大名が入間様をくつがえして、あげたものを全部奪い返してしまったんです。
そして、そそくさとどこかに逃げていっちゃったんです。
。。。なんかこのお話は、飲み屋でお酒を呑んでいて、盛り上がっちゃって気分良くなって、
「よ~し、みんな分おごってやる」となっちゃって、
次の日目覚めたら、ちょっと後悔してしまうような感じのお話だな。。。
気分がウキウキしたときは自分にご注意ですね。うんうん。
この大名のウキウキ感はめちゃくちゃ伝わってきて私までウキウキ。
間違いなく光を放たれていました。
「悪太郎」
悪太郎とは、悪い人ということではなく「暴れん坊」などのことらしいです。
悪太郎を演じるのは野村萬斎様。
萬斎様は、もさもさのお髭に薙刀を持って超きらびやかな羽織に帽子。
あの羽織に帽子は、きっと流行の服と髪型なんですね。
そんな暴れん坊の悪太郎がいつも小言をいう伯父さんを脅かしに行くんです。
伯父さんの家に行って、伯父さんに失礼なことをするにもかかわらず、
お酒を散々と飲みまくるんです。
その悪太郎の姿は「怖いものなし」の若者。
私の想像するところ、17歳~20歳くらいかな。
そして、散々お酒を飲みまくって、伯父さんの家を出て帰ろうとするんです。
その帰る道すがら悪太郎は道端に寝込んでしまいます。
伯父さんは、悪太郎のあとを追いました。そしたら、道端に寝ている悪太郎を発見!
悪太郎はお酒の臭いをぷんぷんさせていました。
まったくこんなところに寝ちゃって。。。本当に悪太郎は。。。
と、きっと伯父さんはそんなことを思ったはず。
そして、悪太郎が身につけていた流行の羽織(ジャケット?)を脱がせ、
そして、流行の髪型も髪を剃ってしまって坊主頭にしてしまい、悪太郎の薙刀を処分して、
頭の上にはお坊さんの衣装を置いて、悪太郎に「今後は南無阿弥陀仏と名づける」といいのこして
その場を立ち去りました。
悪太郎が目を覚ましました。
悪太郎はその伯父さんの話を夢うつろで聞いたいたみたいで、
それを仏のお告げと信じて「南無阿弥陀仏」の名前で仏修行することを決心するんです。
でも。あれ?薙刀がない。あれれ、自分をかっこよくみせる羽織を着ていない。
しかも自慢のヘアースタイルも姿を消し坊主頭。。。
悪太郎は「え~ん、え~ん」と泣いちゃったんです。
自分を大きくみせるアイテムがなくなっちゃったんだもんね。悲しかったろうねぇ。
と、その時、向こうの方から「南無阿弥陀仏~南無阿弥陀仏~」と言いながら
お坊さんがやってきました。
悪太郎は、「自分の名前を呼んでる」と当たり前に思い、お坊さんが「南無阿弥陀仏~」というと、
「ナニ?」「ナニか用?」みたいな返事をするんです。
お坊さんは「はてはて??」と思い、気でも狂っているのか相手にしないと思ったんですけど、
あんまりしつこいから話をしてみたんですね。
私も「南無阿弥陀仏」って何?と聞かれると、お経としか説明できないなぁ。
語句解説には「阿弥陀仏に帰依する」意の仏語。これを唱えて極楽浄土を願う。念仏。とある。
そうなんだ。
なにか悪太郎とともに1つ知ることができたような気がしました。
悪太郎は怖いもの知らずの若者。でも、このことをきっかけに「南無阿弥陀仏」を知ることができました。
「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」という諺がありますが、
悪太郎は、暴れん坊だけれども、どこか素直なところがあるみたいで、
これから先も「それはいったいなんですか」と聞いて、もしかしたら、
笑われたりして恥をかいたりしたかもしれないけど、そうやって大人になっていって
いつしか自分が教えることもでてきたかもしれない。
そして、あの時伯父さんに坊主頭にされたなぁとか、お坊さんに出会ったなぁと
なつかしく思い、あの日が愛おしく、感謝する日が来たかもしれない。
若い日の失敗って(その度合いにもよりますが)その時は恥ずかしいものだけど、
大人になるにつれて、それも愛おしくなっていって、いつしか宝物になるんじゃないかな。
宝物って、探すだけじゃなく、つくっていくのもでもあるんですね。
そんなことを感じるお話でした。
今回は「狂言のお話」のところで、「にほんごであそぼ」で観ていた「蚊相撲」をやってくれました。
萬斎様が「やっとな、やっとな」と扇子を振れば、蚊となっている石田博治さんが
ふわふわと気持ち離れていくもののまたやってくる。
「蚊相撲」とはよく言ったものですね。
蚊との格闘って、ホントそんな感じですもんね。
会場は平和市民公園能楽堂。私にとっては、初の能楽堂。
ここが能楽堂ねぇ、ほほ~うと、きょろきょろと周りを見渡して自分の席に座って
再び周りを見渡せば、舞台はもちろん目に入るが、客席までもが目に入ってくる。
座っている場所にもよると思うが、会場全体が見渡せる。
通常ホールなら、客席は観客の後姿しかみないのだけど、
能楽堂だと観客の表情がわかっちゃうんですね。
それって、いままでとは違う感じ。
なんだろう。一体感なのかな。
狂言は「入間川」と「悪太郎」でした。
狂言のおはなし:深田博治
「入間川」
大名:野村万作 太郎冠者:高野和憲 入間の何某:石田幸雄 後見:岡 聡史
「悪太郎」
悪太郎:野村萬斎 伯父:野村万之介 僧:深田博治 後見:高野和憲
「入間川」
長らく都に来ていた遠国の大名が、太郎冠者を連れて本国へ帰っていました。
この大名は都で、なにか勝訴したみたいなんです。
大名はきっと、うれしかったんでしょうね。その感じが大名から伝わってくるんですよ。
観てるこっちもうきうきしちゃって、やったね!感じ。見えるもの全てがキラキラ見えるのがわかるんです。
そして、二人は入間川へ行き当たったんです。
どこを渡ればいいんだろうと思っていたら、川の向こう側に人がいて、
大名がその人に尋ねたんですが、その尋ね方が悪かったみたいで、それがそのまま
川の向こう側の人に対応にあらわれたみたいなんです。
まぁ、あらわれたというか、大名の姿がその人に写し出されたんでしょうね。
で、太郎冠者が、大名の聞き方が悪かったから、もう一度ていねいに聞いてみたらいいと思うと言ってたんです。
ここで私は、えぇ?と思いました。
太郎冠者といえば、そんなしっかりしたキャラクターじゃないのに、この太郎冠者は
しっかりものだったからです。しっかりした太郎冠者もいるんですね。
そして、大名がちゃんとした聞き方で尋ねると、川の向こう側の人はちゃんと答えてくれたんです。
その人は、ここは川底が深いから、もうちょっと向こう川の方から渡った方がいいですよ
といいました。
でも、大名はその人の言うことをきかずに、目の前の川を渡っちゃったんです。
そしたら、そこの川は深くて大名は「あれ~」とおぼれそうになっちゃって
やっとこさ川から這い上がりました。
そして大名は「おのれ!なんということを!成敗してくれる!」というんです。
教えた人は、まってくれ、自分はちゃんと教えたではないかと主張。
そしたら大名は、昔から入間では「入間様(いるまよう)と言って逆さ言葉を使うはずだと怒っちゃってるんです。
そんな無茶苦茶なぁ、そんな風習もあるかもしれないけど、その土地の人全てがそういうわけじゃないよね。
それって、今でもあること。
でも、その教えた人は機転が利いたみたいで、大名が聞くことに対して、
逆さ言葉を使って返答していったんです。。
そしたら、大名はその逆さ言葉にうけちゃって、気分がよくなったようなんです。
これって「ほらね、やっぱり」というのもあったろうし、
勝訴した気分のよさも復活してきて「まっ、いいか」という気分にもなったんじゃないかな。
それから大名は超ごきげんな感じになっちゃって、教えた人が入間様を言うたびに
うけちゃって、うけちゃうたびに刀とか着物とかあげちゃうんです。
でも、ハッと気がついたんでしょうね。調子にのりすぎたってね。
最後には、大名が入間様をくつがえして、あげたものを全部奪い返してしまったんです。
そして、そそくさとどこかに逃げていっちゃったんです。
。。。なんかこのお話は、飲み屋でお酒を呑んでいて、盛り上がっちゃって気分良くなって、
「よ~し、みんな分おごってやる」となっちゃって、
次の日目覚めたら、ちょっと後悔してしまうような感じのお話だな。。。
気分がウキウキしたときは自分にご注意ですね。うんうん。
この大名のウキウキ感はめちゃくちゃ伝わってきて私までウキウキ。
間違いなく光を放たれていました。
「悪太郎」
悪太郎とは、悪い人ということではなく「暴れん坊」などのことらしいです。
悪太郎を演じるのは野村萬斎様。
萬斎様は、もさもさのお髭に薙刀を持って超きらびやかな羽織に帽子。
あの羽織に帽子は、きっと流行の服と髪型なんですね。
そんな暴れん坊の悪太郎がいつも小言をいう伯父さんを脅かしに行くんです。
伯父さんの家に行って、伯父さんに失礼なことをするにもかかわらず、
お酒を散々と飲みまくるんです。
その悪太郎の姿は「怖いものなし」の若者。
私の想像するところ、17歳~20歳くらいかな。
そして、散々お酒を飲みまくって、伯父さんの家を出て帰ろうとするんです。
その帰る道すがら悪太郎は道端に寝込んでしまいます。
伯父さんは、悪太郎のあとを追いました。そしたら、道端に寝ている悪太郎を発見!
悪太郎はお酒の臭いをぷんぷんさせていました。
まったくこんなところに寝ちゃって。。。本当に悪太郎は。。。
と、きっと伯父さんはそんなことを思ったはず。
そして、悪太郎が身につけていた流行の羽織(ジャケット?)を脱がせ、
そして、流行の髪型も髪を剃ってしまって坊主頭にしてしまい、悪太郎の薙刀を処分して、
頭の上にはお坊さんの衣装を置いて、悪太郎に「今後は南無阿弥陀仏と名づける」といいのこして
その場を立ち去りました。
悪太郎が目を覚ましました。
悪太郎はその伯父さんの話を夢うつろで聞いたいたみたいで、
それを仏のお告げと信じて「南無阿弥陀仏」の名前で仏修行することを決心するんです。
でも。あれ?薙刀がない。あれれ、自分をかっこよくみせる羽織を着ていない。
しかも自慢のヘアースタイルも姿を消し坊主頭。。。
悪太郎は「え~ん、え~ん」と泣いちゃったんです。
自分を大きくみせるアイテムがなくなっちゃったんだもんね。悲しかったろうねぇ。
と、その時、向こうの方から「南無阿弥陀仏~南無阿弥陀仏~」と言いながら
お坊さんがやってきました。
悪太郎は、「自分の名前を呼んでる」と当たり前に思い、お坊さんが「南無阿弥陀仏~」というと、
「ナニ?」「ナニか用?」みたいな返事をするんです。
お坊さんは「はてはて??」と思い、気でも狂っているのか相手にしないと思ったんですけど、
あんまりしつこいから話をしてみたんですね。
私も「南無阿弥陀仏」って何?と聞かれると、お経としか説明できないなぁ。
語句解説には「阿弥陀仏に帰依する」意の仏語。これを唱えて極楽浄土を願う。念仏。とある。
そうなんだ。
なにか悪太郎とともに1つ知ることができたような気がしました。
悪太郎は怖いもの知らずの若者。でも、このことをきっかけに「南無阿弥陀仏」を知ることができました。
「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」という諺がありますが、
悪太郎は、暴れん坊だけれども、どこか素直なところがあるみたいで、
これから先も「それはいったいなんですか」と聞いて、もしかしたら、
笑われたりして恥をかいたりしたかもしれないけど、そうやって大人になっていって
いつしか自分が教えることもでてきたかもしれない。
そして、あの時伯父さんに坊主頭にされたなぁとか、お坊さんに出会ったなぁと
なつかしく思い、あの日が愛おしく、感謝する日が来たかもしれない。
若い日の失敗って(その度合いにもよりますが)その時は恥ずかしいものだけど、
大人になるにつれて、それも愛おしくなっていって、いつしか宝物になるんじゃないかな。
宝物って、探すだけじゃなく、つくっていくのもでもあるんですね。
そんなことを感じるお話でした。
今回は「狂言のお話」のところで、「にほんごであそぼ」で観ていた「蚊相撲」をやってくれました。
萬斎様が「やっとな、やっとな」と扇子を振れば、蚊となっている石田博治さんが
ふわふわと気持ち離れていくもののまたやってくる。
「蚊相撲」とはよく言ったものですね。
蚊との格闘って、ホントそんな感じですもんね。
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