ヤスの雑草日記(ヤスの創る癒しの場)

私の人生の総括集です。みなさんと共有出来ることがあれば幸いです。

○くずれの美学に関して想うこと。

2010-12-02 10:27:59 | Weblog
○くずれの美学に関して想うこと。
 これを書いているときには、すでに放映を終了しているのかも知れないが、今日は、NHKの「セカンドバージン」というテレビの連ドラについての観想からはじめたいと思う。「セカンドバージン」というドラマが、放映されるに値する唯一の意味というのは、僕の感覚からすると、鈴木京香という女優さん一人の存在があるからだろうと思う。ここにドラマの筋立てをつらつらと書く意味もないので略すことにするが、物語の内容としても凡庸だし、主人公の鈴木京香のお相手役の、若手男優ときたら、物語の中の鈴木京香が惚れる年下の男としての幻想だに抱かせないようなミスキャストだし、その他の配役も、とり立ててどうということもない。
 物語の中の鈴木京香は、45歳のキャリアウーマンだが、美しかった頃の膚のハリもツヤも失われてきつつあるし、きれいな顔にも歳相応の疲れと人生に倦んだ憂愁とがないまぜになった女性として登場する。女優さんとしての鈴木京香は、役者としていつもトレーニングを欠かさずに体をしぼり、うっとりとさせられるほどに、膚の色艶が濃密で、皺ひとつない。少なくとも、そのようにシトウトに見せるだけの努力を惜しまない女優さんだ。が、彼女は、このドラマの主人公になりきるために、敢えてトレーニングを中断し、体重も増やしたと聞く。かつては、文句のつけようもなかった美しき女性が、人生の半ばをとっくに通り過ぎて、美がまさに崩れんとしている、危うい女性を演じているのである。美が崩壊しつつあるように、主人公の人生観もまた、一つの分岐点に立っているのである。こういう役どころに挑んだ鈴木京香の女優魂は評価されるべきだと僕は思う。アメリカのロバート・デ・二―ロなんていう役者兼監督などは、まるで自分の体そのものが、実験道具であるかのように究極のデブになってみたり、ガリガリにやせ細ってみたりもする。彼の役作りはその意味でも並みではない。「タクシー・ドライバー」で、はじめて主役に抜擢されたときのデ・二―ロが、ここまでの役者だとは思いもしなかった。ロバート・デ・二―ロとまではいかないにしても、鈴木京香は、やはり、日本の女優さんとしては、群を抜いた存在だろうと思う。
 さて、一般化して、美についての僕なりの観想を。
 やはり、若さと美しさという二つの概念は決してアンビバレンスなものではないだろう。しかし、若さゆえに、美しさを際立たせることなく、美を疎外していることだってある。だから、若さ=美ではない。要するに美を若いなりに、どのように意識化できるかの問題なのだろうと思う。時代に特有の風俗が影響しないはずがないから一概には言えないが、それにしても、ある時代に特有の風俗に同化しつつ、若き自分の美しさとは何ぞや、と自問することのない美は、ある意味、偶然性のもたらしたものに過ぎないのではなかろうか。問題なのは、すでに若さを喪失した年代の男女の美に対する、思想なき抗いである。顔に皺が増えたと言っては、馬鹿高いファウンデーションを壁のように厚塗りし、明らかに日頃、食い過ぎているのに、脂肪が増えたと言っては、効果の期待出来ないジムに通って、余計な汗を流し、極端な話をすれば、その帰り道にビールをグイッとやる。頭が禿げたと言うと、誰にでも分かるのに、高い金を払って、カツラなんかを被る。しかし、余談だが、なんで特に男のカツラって、ひと目見てニセモノって分かる代物なのだろうか?かといって、開き直りなのかも知れないが、禿げてきたら、ツルツルに頭を剃る人もいたりするが、どう考えても東洋人にはスキンヘッドは似合わないな。あれで、眉もついでに剃ってしまえば、まるでヤーさんだ。松山千春のスキンヘッドはやはりおかしい。もう一方で、所謂1・9分けという醜悪な禿げ隠し。それを売りにして、したたかに飯のタネにしている大阪のお笑い芸人は別として、隠しようもないのに、隠しているつもりの一般人のおっさんには、もういい加減にそんなアホウなことは止めなさいと言いたくなる。もし、頭髪が薄くなったら、それなりに切り揃えて、清潔に見えるようにさえしておけばいいじゃあないか。
再度言いたい。若さが美しさの基準などではない。くずれの美というものの妖艶さを僕たちは鈴木京香から学ばないとイカン。男は、男なりにアレンジして学ぼうではないか。老いの美しさも絶対にあると僕は思うな。しかし、いま思いつくのは一つだが、歯槽膿漏で、他人に話をするだけで、顔を歪めたくなるほどの口臭を晒しているのはどうかと思う。いくら老いても、エチケットは守らないと、老いそのものを否定されかねない。病的なそれは、歯医者で治療すればいいし、そうでなければ、歯ぐきまで気を配りながら、日に何度かしっかりと歯を磨く。こういうことには気をつけましょう。そうすれば、崩れの美しさの意味が分かります。老いの意味も分かります。老いたるお仲間たちよ、がんばって、生きましょう!

推薦図書としては、ちょっと書いていることとは外れるかもしれませんが、美とは何ぞやということで、「ドリアン・グレイの肖像」をぜひ。唯美主義的な美の鑑賞をしてください。

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