今年の世界選手権の個人TTはレムコ・エヴェネプールの連覇に終わりました。スタート直前にチェーンが外れるというアクシデントでパワーメーターが使えなかったにも関わらず、2位のフィリッポ・ガンナに6秒という僅差ながら勝利して見せたのです。オリンピックに続き世界大会の金メダルを手にしたレムコですが、171cmという小柄な身体のどこにあんなパワーがあるのか不思議でなりません。
おそらく今シーズンの個人TTでレムコが負けたのはツール・ド・フランスの最終ステージだけでしょう。2級山岳(距離8km/平均5.8%)を登坂する33.7kmのコースでしたが、ポガチャルに1分14秒差の3位と完敗しているのです。ジロでも最後の個人TTでガンナを逆転で破っているポガチャルが、どうしてこの場に居なかったのか不思議です。
純粋な個人TTではまだレムコには勝てないと思っているのでしょうか?まあ、ポガチャルの狙いはロードレースの方なので、疲れを考慮したのかもしれません。あるいは、スロベニアにはTTはログリッジでロードレースはポガチャルという住分けがあったのかもしれません。
それにしてもレムコは本当に逆境に強い選手だと思います。今回はスタート前にチェーンが外れ、オリンピックのロードではパンクというトラブルがありながら、平然とそれを克服しているのですから。ユース年代のサッカーでベルギー代表のキャプテンを務めるほどの選手でしたが、膝を痛めロードレース界に身を転じ、ジュニアクラスのレースで勝ちまくり、ベルギーでは神童と呼ばれるようになるのです。
19歳でプロデビューすると1年目からクラシカ・サンセバスティアンでの史上最年少ワールドツアー勝利を皮切りに様々な最年少記録を更新していくのです。翌年も順調に勝ち星を重ねるも、イル・ロンバルディアでダウンヒルのスピード超過で橋から崖下に10mも転落し、骨盤骨折や肺挫傷など選手生命を絶たれそうなほどの重傷を負ってしまうのです。サッカーに続き彼を襲った悲劇で、心が折れてしまっても不思議ではない状況から。レムコは不死鳥のように蘇ってみせたのです。何というメンタルの強さでしょう。
このメンタルの異常な強さがレムコを支えていることは間違いないでしょう。彼が神童と呼ばれる所以は彼の身体がロードレーサーにとって理想的なものから来ているようですが、この鬼メンタルも要因のひとつなのは間違いないでしょう。パンクやチェーンが外れる程度のことでは動じないのも当然なのかもしれません。それにしても近年のTTでパワーメーターの数値無しでも勝ってしまうというあたりはまさに神童の名にふさわしい存在でしょう。
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