東京国立博物館「挂甲の武人 国宝指定50周年記念特別展「はにわ」」。
2024年10月29日(火)。
第3章 埴輪の造形
埴輪が出土した北限は岩手県、南限は鹿児島県です。日本列島の幅広い地域で、埴輪は作られました。それらの埴輪は、当時の地域ごとの習俗の差、技術者の習熟度、また大王との関係性の強弱によって、表現方法に違いが生まれています。その結果、各地域には大王墓の埴輪と遜色ない精巧な埴輪が作られる一方で、地域色あふれる個性的な埴輪も作られました。ここでは各地域の高い水準で作られた埴輪や、独特な造形の埴輪を紹介します。
重文・埴輪 天冠をつけた男子。福島県いわき市 神谷作101号墳出土。 古墳時代・6世紀。
福島県蔵(磐城高等学校保管)。
美豆良(みずら)を肩まで垂らしたヘアスタイルに、両手を前に捧げ胡坐(あぐら)をかいて座る端正な顔立ちの男性です。三角形の冠のひさしの先端には7つの鈴が上下に揺れています。左腰には大刀と弓を射る時の防具である鞆(とも)を下げた盛装のいでたちです。衣服や冠、頬は赤く彩色されており、威儀を正し拝礼する若き王の姿をほうふつとさせます。
馬形埴輪。三重県鈴鹿市 石薬師東古墳群63号墳出土。 古墳時代・5世紀。
三重県蔵(三重県埋蔵文化財センター保管)
馬は、古墳時代に朝鮮半島から渡来して急速に普及し、農耕や軍事、儀式などに用いられました。馬形埴輪の大半は、数多くの馬具を身に付けた「飾り馬」です。この埴輪も飾り馬を忠実に模していますが、頭部の表現が独特です。被りものか、たてがみを垂らした状態を表したと思われ、全国的に見ても類例のない珍しいものです。