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金子勝 日本は知識経済化ーイノベーティブ福祉国家へ③知識経済化からイノベーティブ福祉国家へ 

2025年02月09日 13時43分18秒 | 社会

日本は知識経済化ーイノベーティブ福祉国家へ トランプ・IT長者のフェイクファシズムに抗して

慶応大学名誉教授 金子勝さんに聞く

2025/2/8   [現代の理論] 第40号  DIGITAL─2025冬号 VOL.40 特集 混迷の世界をどう視る

 

5.知識経済化からイノベーティブ福祉国家へ

こういう深刻な産業の遅れを我々はどう克服するのかが最重要です。そこで教育の無償化と科学技術予算の充実、学術会議や大学自治への不当な介入をやめること、総じて自由な研究を大きく広げていくことが極めて大事になってくるのですが、成果が出るまでには時間がかかる。それで、当面は政府のDX(デジタルトランスフォーメーション/デジタル技術で生活を変革すること)とGX(グリーントランスフォーメーション/脱炭素社会に向けて再生可能なクリーンエネルギーに転換すること)に対するオルタナティブをしっかり出していくことが大事になります。

DXはまずマイナ保険証をやめさせる本当の意味での医療DXは、まず地域単位にきちんと病院や診療所、介護施設や訪問看護、さらに薬局のネットワークを作る個人情報の保護を徹底する。個人の医療情報や薬情報が見られるなどということはアメリカではありえない。要するに、自分の医療情報に誰がアクセスしたか、本人が分かるようにする。そういう形の情報保護はヨーロッパでは当たり前。その上で地域単位で医療の安心と効率化を同時に達成していく仕組みにする。しかも、訪問医療・介護と病院などでの医療を融合させていくことによって、病院の医療費の削減にもなる。そして安心もできるわけで、配置も簡単だからいろんな所にITを仕組めばよい。

もう一つ、健康機器の情報へ24時間アプローチする仕組みがあります。そうした分野はまだ競争できます。ブロードバンドを確保して、本人が様々な医療健康指標を24時間クラウドで管理し、見られる状態にする。例えば血中酸素や血糖値、血圧とか、様々な情報を取れるデバイスを開発しながらやっていく。

今の日本では、オムロンなどの会社はあるものの、彼らはソフトを作れないため実際は輸入代理店のようになっている。その開発を進めることによって、本当の意味のDX、医療DXを実現できると思います。ITゼネコンと言われる古臭い企業体を作り直して新たにクラウドに投資をさせて、我々がそれをセキュリティを含めて管理できるような能力を身につけていく。それこそが真のDXだと思います。

GXも変えていく。ばかばかばかしいコストの高い原発を止めていく。今あるのは、オンサイトPPAというやり方で、発電事業者が、個人の敷地や屋根に太陽光発電設備を事業者の費用で設置・維持管理をした上で、発電された電気をその個人に供給する仕組みです。個人が投資しないで、再生可能エネルギーを使って蓄電池をセットしてクラウドで電気料金をコントロールする。

さらに、スマートグリッドで蓄電池に電気を地域単位で貯めながら、コンピューターで全体をコントロールするという分散型の電力システムを作ることによってIT化します。ITの技術者が必要になり、雇用も生みます。遅れた知識経済化を、今の政府の間違ったDXやGXを正しながら先端に向かっていく。

実際に蓄電池の開発を見れば、テスラは、電力抑制のための蓄電池の開発と自動車用の蓄電池の開発を一緒に進めています。両者は技術的にシンクロしているわけです。そのように我々も、新しいDX、GXをやることによって突破口にしていく。古い利益団体を解体し、従来型のITゼネコン以外のところで、新しい事業者や若い優秀な技術者が活躍できる場を政府がたくさん作ることによって伸ばしていく。そういう形で新しい産業を作れば日本も伸びます。教育や福祉、対人サービスを軸にした医療などで雇用を伸ばして賃金を上げていきます。

その時大事なのは女性の雇用をその領域の中で増やしていくこと。それができれば、今の状況よりも大きく改善してくるはずです。

 

6.新たな経済学でこの国のオルタナティブを

要するに、アベノミクスを徹底総括した後に、我々はどこで間違ったのか、確認することが大事です。1990年代、北欧諸国はうまくいったのに日本はなぜうまくいかなかったのか、その反省の中からやるべきことを選択していく。ミクロ経済学、マクロ経済学はもう役に立たなくなっているわけです。行動経済学やビッグデータの分析など新たな流れも出ていますが、新たな社会ビジョンはありません。

赤字国債で減税しても景気は全然良くなりませんし、未来も描けません。当面皆苦しいからそれにすがるのでしょうが、赤字国債であれば円安、インフレになるだけですからなんの意味もない。だから、産業政策や教育政策という、いわば通常の経済学が言わなかったことを見るべきです。そして、成功した国から何を学ぶのかという視点から見ると、この国は悪夢のアベノミクスを選択してしまったと、間違いをしっかり総括して、この国の道を選び直すことが何より大事です。そういう意味では、野党がきちんとしたオルタナティブを作ってくれることを強く望みます。

 

金子勝 1952年東京都生まれ。東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。慶應義塾大学経済学部教授を経て、同大学名誉教授。立教大学大学院特任教授の後、2023年から淑徳大学大学院客員教授。専門は、制度経済学、財政学、地方財政論。著書に『金子勝の食から立て直す旅』(岩波書店)、『閉塞経済』(ちくま新書)、『新・反グローバリズム』(岩波現代文庫)、『新興衰退国ニッポン』(共著、現代プレミアブック)、『「脱原発」成長論』(筑摩書房)、『資本主義の克服「共有論」で社会を変える』(集英社新書)、『日本病―長期衰退のダイナミクス』(岩波新書・児玉龍彦との共著)、『平成経済 衰退の本質』(岩波新書)、『メガリスク時代の「日本再生」戦略』(ちくま選書・飯田哲也との共著)、『人を救えない国』(朝日新書)、『現代カタストロフ論』(岩波新書・児玉龍彦との共著)、『高校生からわかる日本経済』(かもがわ出版)、『裏金国家』(朝日新書)など多数。

金子勝 日本は知識経済化ーイノベーティブ福祉国家へ②アベノミクスの失敗 日本経済・産業の大衰退



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