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新型コロナ 公式検証されず5年「ダイヤモンド・プリンセス」の経験を後世に活かしてほしい

2025年02月06日 19時45分24秒 | 社会

公式検証されず5年…「ダイヤモンド・プリンセス」の経験を後世に活かしてほしい、元乗船者の願いが通じない

2025年2月6日 東京新聞

 

金子勝@masaru_kaneko

無責任国家】ダイヤモンドプリンセス号に閉じ込め、集団感染実験場と化した失敗の検証はまったくされない無症状者を検査もせず放置した厚労省の感染症対策と「専門家」たちも責任を問われない。権力者たちは永遠に無謬。この国の無責任体質が失われた30年を生む。

 

 新型コロナウイルスによるクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の集団感染から5年。当時の乗船者らは当事者参加による真相究明と検証を強く求めてきたが、政府は否定的な姿勢を崩していない。初期対応の遅れや、情報が伝わらない中で強いられた隔離のあり方も問われた。教訓は次の危機に生かされるのか。(木原育子、中川紘希)

 

ダイヤモンド・プリンセスの集団感染 2020年1月20日に横浜港を出港した後、香港で下船した男性の感染が2月1日に判明。3日に横浜港に戻ったが、乗客らは船内待機を余儀なくされた。下船が始まったのは19日で完了は3月1日。56カ国・地域の乗客3711人のうち712人が感染、13人が死亡した。他にオーストラリア帰国後に亡くなった1人がいる。

 

◆5年を経た今も公式の検証は果たされていない

 3日、横浜港。かつてダイヤモンド・プリンセスに乗船した人たちが、色とりどりの花を海へとささげた。東京都内に場所を移して開かれた追悼の集いでは、元乗船者らが沈痛な表情で当時の惨状を振り返った。

新型コロナウイルスの感染者が確認され、横浜港の沖合に停泊していた大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」=2020年2月4日、本社ヘリ「おおづる」から(坂本亜由理撮影)

 

 「5年を経た今も公式の検証は果たされていない。被災者や被害者の声を基本に据えた検証と対策が制度的にも保障されるべきだということを強く訴えたい」。当時の乗船者の一人で「全国連絡会」共同代表の千田忠さん(81)=札幌市=が声を振り絞った。

 5年前の2月3日に横浜港に停泊した同船。有効な治療薬やワクチンがなく、受け入れられる病院もない中で、政府は早々に「14日間の船内隔離」を決めた。乗船者には十分な情報が伝えられないままだった。

 あの対応で本当に良かったのか。遺族の無念を目の当たりにした元乗船者らは事故から1年後に全国連絡会をつくり、これまで150回を超える勉強会を開き、対応を検証してきた。

◆なぜ?調査される事故と、されない事故があるのか

 この日の集いには、他の事件事故で突然大切な人を奪われた遺族らも参加した。事実解明のための検証が十分になされていないとして、国や行政に要望を続けた経験があるからだ。

 2006年、東京都港区のマンションのエレベーターに挟まれた事故で、高校2年の長男・大輔(ひろすけ)さんを亡くした市川正子さん(72)は「命を守るために国が何をし、どう再発防止に動いたか。検証を求めることはどの事件や事故でも共通している」と話した。市川さんも再三にわたって検証を求め、再発防止策がまとまったのは10年後だった。

 2005年に4人が死傷した足立区の東武伊勢崎線竹ノ塚駅近くの踏切事故で当時75歳の母を亡くした加山圭子さん(69)も「何度も国に要望を続けた。(規模によって)調査される事故とされない事故があるのはおかしい」と訴えた。

◆柳田邦男さん「感染症にも運輸安全委のような機関が必要」

 集いには航空事故、医療事故の評論を数多く執筆してきたノンフィクション作家の柳田邦男さん(88)の姿もあった。

 柳田さんは「ダイヤモンド・プリンセスの集団感染は災害であると同時に、事故の様相を多分に含んでいる」と切り出した。「事故が起きる背景を分析し、論理的にどこに問題があったのか検証しなければならない。感染症は国民の命に関わる。被害者も大変な規模だったのに、それができていないのは大きな問題だ」と怒りをあらわにした。

 感染症の被害にも、国の「航空・鉄道事故調査委員会(現在の運輸安全委)」に匹敵する機関を設置すべきだとし「全国連絡会の取り組みは大変意義深い。日本の医療を変える転換点になる」と語気を強めた。

◆オーストラリアでは230ページの検証報告書、日本は2ページ

 国土交通省は2023年9月に再発防止策をまとめた報告書を公表している。ただ、全体の約30ページのうちダイヤモンド・プリンセスの章に割かれたのは2ページのみ。患者対応の遅れや医薬品不足が問題だったとした。同省産業港湾課の柳幸一課長補佐は「重要港湾に水際・防災対策連絡会議を設置するなど、できる限りのことはやっている」と説明する。

 一方、ダイヤモンド・プリンセスと同規模の船内感染が起きたオーストラリアの場合、2020年5月には独立した調査委員会を立ち上げ、公聴会も経て8月に230ページに及ぶ詳細な検証報告書を公表している。

 感染症対策を担ってきた厚生労働省は「総合的な話を聞きたければ、内閣感染症危機管理統括庁に聞いてください」との対応。

 統括庁の進大輝参事官補佐は「船内のゾーニングや、科学的見地に基づく対応だったかなど全体の話になると厚労省は答えにくいかもしれない」と話す。

◆当時担当した厚労省、検証は事後新設された統括庁に丸投げ

 当時の対応部署ではなく、新設の省庁が回答するのは責任逃れではないかと問うと、「全体的な大きな方針に対応するのが統括庁だ」と繰り返した。既に有識者会議等で検証してきたとし「検証が不十分との声は承知しているが、再検証の予定はない」と言い切った。

 新型コロナウイルスは、2023年5月に感染症法上の5類に移行し、行動制限が解けた人々の警戒感は緩んでいる。一方、新たな変異株が次々と生まれ、重篤な症状や後遺症も。世界の死者は700万人以上になり、今も増え続けている。

 ダイヤモンド・プリンセスの事例も根拠として昨年6月には、非常時に自治体に対する国の指示権を拡大する改正地方自治法が成立した。国と自治体間の調整の円滑化を狙いとするが、野党は「自治体への国の不当な介入を誘発する」などと指摘した。

◆SARSも新型インフルも検証されず、教訓もなし

 統括庁が昨年7月、今後の感染症に備えて改定した「新型インフルエンザ等対策政府行動計画」も「国の権限を強化する内容」と懸念の声が上がり、ダイヤモンド・プリンセスの元乗船者からは「現場の声が反映されていない」と批判されている。

 再発防止のための検証は十分と言えるのか。

 集団感染後のダイヤモンド・プリンセスに乗り込んだ神戸大の岩田健太郎教授(感染症)は「2002年に始まった重症急性呼吸器症候群(SARS)、2009年の新型インフルエンザの対応も検証されず教訓も考えられていなかった。今回も同じだ」とみる。

 船内の感染管理ができていないとして動画投稿サイト「ユーチューブ」で告発した岩田氏安全な区域とそうでない区域の区分けが不十分な船内で感染が拡大し、船を出た後の感染者も追跡しきれなかったことなどを指摘。「できなかったことなどを専門的に検証するべきなのに、『頑張ったよね』というだけの情緒的な物語にしてしまった」と批判する。

◆「コロナは終わった」と思われているようだが…

 感染症の歴史に詳しい長崎大の飯島渉教授(医療社会史)も「社会の中でコロナは終わったことのように捉えられており、ダイヤモンド・プリンセスをはじめ感染症対応の検証は十分にできていない」と述べる。

クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」(後方)から下船した人たちを乗せ港を出るバス=2020年2月19日、横浜市鶴見区の大黒ふ頭で(嶋邦夫撮影)

 

 同船において、乗客に十分な医療を提供することと、船内から出さないようにする感染症の水際対策は両立が難しい課題だったと指摘する。その上で知見のない新たな感染症に対し、「行政や医療の関係者がどのように判断したのかはもっと分析されていい」とさらなる検証の必要性を説く。

 コロナ患者を受け入れた病院には感謝の声が上がる一方、クラスター発生などで批判にもさらされ、五輪は延期を余儀なくされた。飯島氏は「医療記録を残すことも重要だが、社会全体が感染症にどう反応し、どう対応したかも記録に残すべきだ。それが次の新興感染症に適切かつ冷静に対応するために役立つのではないか」と話した。

◆デスクメモ

 ダイヤモンド・プリンセスの集団感染の発覚前から自民党幹部は早くも「憲法に緊急事態条項を」と口々に唱え、感染者の行動歴を独自に発表してしまう首長もいた。災害の不安に乗じ目の前の人権より「公益」を押し出そうとする強権的な論理。これも教訓とされず繰り返されるのか。(恭)



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