2020年11月京都童心の会 通信句会
【選評】その2
○青島巡紅選
特選
63 ハロウイーンかぼちゃマスクつけずに哄笑す 金澤ひろあき
南瓜にマスクをさせたものも見かけたが、多くは「マスクつけずに哄笑」したもの。早くマスクを外して大笑いしながら人混みの中を歩いてみたい。ハロウィンは収穫祭の行事、コロナ禍で言えばワクチンなど薬が完成する日になります。一人でも多くのが祈れば、というフレーズがありますが、この日を心待ちにしているのは世界中の人達ですから、しっかり手を取り合えば、ハロウィンのようにはしゃげる日も一層早く来ることでしょう。
並選
① 1 焼芋包む父の命日 野谷真治
亡くなった父に対する息子ではの優しさ、温もりが伝わってきます。焼芋は故人の好物だったのでしょう。故人は心の中では永遠の人となります。
② 8 また耳鳴りかいいや本物の救急車 木下藤庵
「耳鳴り…ピーコロナ」も面白かったのですが、「耳鳴り…救急車」のこちらのほうが臨場感があったので取りました。でも、耳鳴りの音とサイレンの音の取り合わせ、わざとらしいかも。僕も耳鳴りには悩ませれているのですが、緊急車両のサイリンにはドップラー効果の音差がありますが、耳鳴りにはありません。平坦です。人それぞれかもしれませんが。
③ 16 西山に沈む夕日や稲を刈る 宮崎清枝
収穫の秋、夕映に映し出される稲を刈る人。日本の懐かしい原風景。農耕文化が築いた国ですから。
④ 43 ぶらり旅楓並木を通りぬけ 野原加代子
「ぶらり」本当に旅行に出かけているのか、「ぶらり」散歩して気分を味わっているのか、それは問題ではない。「楓並木を通り抜け」ることによって、何か心に重たくとは言わないが、心にあった嫌な気分が紅葉の風に洗われたことがうかがえる。
⑤ 52 紅浮きて又引き込みぬ紅葉鮒 中野硯池
紅葉の岸辺。釣りの様子。釣り上げかけた鮒が横腹を見せると見事な赤の帯がある。その帯が反撃に出て糸をぐいっと水中に引き込んで行く。魚と人の真剣勝負。釣り人は勝ったのか負けたのか、気になるところ。
⑥ 58 こおろぎの鳴くや命の一二三 金澤ひろあき
フルート、クラリネット、オーボエが音を重ねていく華やかさとは真逆の寂しさ。乾き切った葉が擦れるような音が一つ、一つ、また一つと聞こえてくる。夏の旺盛だった合唱が嘘のような鳴き声。蛙の合唱もそうだが、生命がある間はどれだけか細く貧弱になっても鳴き続ける。即身仏になる僧侶の鈴のように。切なくも愛しい生命。余韻の残る句です。蛇足、リルケの「秋」を思い出しました。「けれどもただひとり 落ちていくすべてのものを/限りなくやさしく その両の手で受けとめる人がいる(最終連)」
⑦ 71 蝶がひらりお経を止める 白松いちろう
僧侶が何かのはずみでクシャミをしたり、急に笑い出したりする。そんな類いのこと。蝶が手を止めなければならないところに留まったのでしょうか。タイミングが取れずお経も止めてしまった。優しい僧侶です。(笑!)
⑧ 74 金婚迎えても君に胸キュン 白松いちろう
少女漫画に出てくるワンシーンのようです。人生を共に歩んだ夫婦にしか感じられない胸キュンですね。
⑨ 81 ラーメンを食べたい夜のウゴ地蔵 裸時
寒い夜の雨後なら石像だって熱いラーメンを食べたくてなるよね。酒のように五臓六腑に沁み渡る人の心に石像の頬が染まる。いや、紅かな。化粧地蔵。
⑩ 92 美しい日本語で遊ぶ句会かな 坪谷智恵子
蛇口を捻れば水が出るようにずさんに使われている日常の言葉。自分の発した言葉を書き留め、更に心にしっくりくるように仕上げて出す作品。後者には、味に人の好みや嫌いを超えた自分の味がある言葉の集合であり、各人のテイストが現れているでしょう。しかもそれらは自主的なもの、正に「遊ぶ」です。
⑪95 八十路過ぎコロナの夏をよくぞ過ぎ 蔭山辰子
災害や疫病は忘れた頃にやって来る。まさにそんなことに「八十路過ぎ」で遭遇するとは。その実感が出ています。報告口調に諧謔感があるように思います。
⑫103 アッという間におせちの広告ドサッ 蔭山辰子
御中元、御歳暮、おせちとか毎年2ヶ月前になると来るわ来るわ、広告の洪水。でも、大抵は心の中で思っていたり、会話に常套句として出てくるだけ。書き出したことは大きい。
⑬ 106 秋風に混じる方言称念寺 三村須美子
明智光秀ゆかりの地のお寺。そのお寺に様々な地方から人が訪れていて会話が風に乗り耳に伝わる。厳かな中にも賑やかな雰囲気が伝わってきます。
⑭ 109 国宝を外された城天高し 三村須美子
地震か何か災害で国宝でなくなった城が一層高く見える。何かのインタビューで、ロイヤルファミリーから一般市民になって肩の力が抜けて気楽ですね、と言った人がいました。盗撮もされないしね、とも。この城も枠から解放されて背筋をうーんと伸ばしているのでしょう。修復されるまでの自由満喫。
⑮ 114 犬逝って残る襖 のかじりあと 三村須美子
思い出のトリガーが眼の前にあるというのはとても辛いことですが、哀しみが癒されていく目安ともなるもの。人であれ動物であれ、思い出してあげること、哀しみを伴ず思い出してあげること、これも供養の一つだとか。
○宮崎清枝特選
36 どんぐりや幼子集め手のひらに 野原加代子
幼子とおばあちゃん?がどんぐり拾いの有様をお上手に俳句になさって居られることに感心致しました。
【選評】その2
○青島巡紅選
特選
63 ハロウイーンかぼちゃマスクつけずに哄笑す 金澤ひろあき
南瓜にマスクをさせたものも見かけたが、多くは「マスクつけずに哄笑」したもの。早くマスクを外して大笑いしながら人混みの中を歩いてみたい。ハロウィンは収穫祭の行事、コロナ禍で言えばワクチンなど薬が完成する日になります。一人でも多くのが祈れば、というフレーズがありますが、この日を心待ちにしているのは世界中の人達ですから、しっかり手を取り合えば、ハロウィンのようにはしゃげる日も一層早く来ることでしょう。
並選
① 1 焼芋包む父の命日 野谷真治
亡くなった父に対する息子ではの優しさ、温もりが伝わってきます。焼芋は故人の好物だったのでしょう。故人は心の中では永遠の人となります。
② 8 また耳鳴りかいいや本物の救急車 木下藤庵
「耳鳴り…ピーコロナ」も面白かったのですが、「耳鳴り…救急車」のこちらのほうが臨場感があったので取りました。でも、耳鳴りの音とサイレンの音の取り合わせ、わざとらしいかも。僕も耳鳴りには悩ませれているのですが、緊急車両のサイリンにはドップラー効果の音差がありますが、耳鳴りにはありません。平坦です。人それぞれかもしれませんが。
③ 16 西山に沈む夕日や稲を刈る 宮崎清枝
収穫の秋、夕映に映し出される稲を刈る人。日本の懐かしい原風景。農耕文化が築いた国ですから。
④ 43 ぶらり旅楓並木を通りぬけ 野原加代子
「ぶらり」本当に旅行に出かけているのか、「ぶらり」散歩して気分を味わっているのか、それは問題ではない。「楓並木を通り抜け」ることによって、何か心に重たくとは言わないが、心にあった嫌な気分が紅葉の風に洗われたことがうかがえる。
⑤ 52 紅浮きて又引き込みぬ紅葉鮒 中野硯池
紅葉の岸辺。釣りの様子。釣り上げかけた鮒が横腹を見せると見事な赤の帯がある。その帯が反撃に出て糸をぐいっと水中に引き込んで行く。魚と人の真剣勝負。釣り人は勝ったのか負けたのか、気になるところ。
⑥ 58 こおろぎの鳴くや命の一二三 金澤ひろあき
フルート、クラリネット、オーボエが音を重ねていく華やかさとは真逆の寂しさ。乾き切った葉が擦れるような音が一つ、一つ、また一つと聞こえてくる。夏の旺盛だった合唱が嘘のような鳴き声。蛙の合唱もそうだが、生命がある間はどれだけか細く貧弱になっても鳴き続ける。即身仏になる僧侶の鈴のように。切なくも愛しい生命。余韻の残る句です。蛇足、リルケの「秋」を思い出しました。「けれどもただひとり 落ちていくすべてのものを/限りなくやさしく その両の手で受けとめる人がいる(最終連)」
⑦ 71 蝶がひらりお経を止める 白松いちろう
僧侶が何かのはずみでクシャミをしたり、急に笑い出したりする。そんな類いのこと。蝶が手を止めなければならないところに留まったのでしょうか。タイミングが取れずお経も止めてしまった。優しい僧侶です。(笑!)
⑧ 74 金婚迎えても君に胸キュン 白松いちろう
少女漫画に出てくるワンシーンのようです。人生を共に歩んだ夫婦にしか感じられない胸キュンですね。
⑨ 81 ラーメンを食べたい夜のウゴ地蔵 裸時
寒い夜の雨後なら石像だって熱いラーメンを食べたくてなるよね。酒のように五臓六腑に沁み渡る人の心に石像の頬が染まる。いや、紅かな。化粧地蔵。
⑩ 92 美しい日本語で遊ぶ句会かな 坪谷智恵子
蛇口を捻れば水が出るようにずさんに使われている日常の言葉。自分の発した言葉を書き留め、更に心にしっくりくるように仕上げて出す作品。後者には、味に人の好みや嫌いを超えた自分の味がある言葉の集合であり、各人のテイストが現れているでしょう。しかもそれらは自主的なもの、正に「遊ぶ」です。
⑪95 八十路過ぎコロナの夏をよくぞ過ぎ 蔭山辰子
災害や疫病は忘れた頃にやって来る。まさにそんなことに「八十路過ぎ」で遭遇するとは。その実感が出ています。報告口調に諧謔感があるように思います。
⑫103 アッという間におせちの広告ドサッ 蔭山辰子
御中元、御歳暮、おせちとか毎年2ヶ月前になると来るわ来るわ、広告の洪水。でも、大抵は心の中で思っていたり、会話に常套句として出てくるだけ。書き出したことは大きい。
⑬ 106 秋風に混じる方言称念寺 三村須美子
明智光秀ゆかりの地のお寺。そのお寺に様々な地方から人が訪れていて会話が風に乗り耳に伝わる。厳かな中にも賑やかな雰囲気が伝わってきます。
⑭ 109 国宝を外された城天高し 三村須美子
地震か何か災害で国宝でなくなった城が一層高く見える。何かのインタビューで、ロイヤルファミリーから一般市民になって肩の力が抜けて気楽ですね、と言った人がいました。盗撮もされないしね、とも。この城も枠から解放されて背筋をうーんと伸ばしているのでしょう。修復されるまでの自由満喫。
⑮ 114 犬逝って残る襖 のかじりあと 三村須美子
思い出のトリガーが眼の前にあるというのはとても辛いことですが、哀しみが癒されていく目安ともなるもの。人であれ動物であれ、思い出してあげること、哀しみを伴ず思い出してあげること、これも供養の一つだとか。
○宮崎清枝特選
36 どんぐりや幼子集め手のひらに 野原加代子
幼子とおばあちゃん?がどんぐり拾いの有様をお上手に俳句になさって居られることに感心致しました。
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