コロナ禍の前後、もう3~4年前に、竹中平蔵氏がラジオで「ネット社会ではなりすましによる様々な被害から自らを防衛するために個人を識別するマイナンバー制度が絶対必要。」といった趣旨の熱弁を振るっているのを聞いた記憶がある。
その頃、既にマイナンバー制度についての議論が進んでいたので、この件も彼が一枚噛んでいるのだろう。
趣旨はそのとおりだと思うが、カードに銀行口座などが紐付けされることに抵抗があった。
彼はアメリカの新自由主義に基づくコストパフォーマンス至上社会への作り替えの先陣を切ることに関しては動物的嗅覚がある。
政府諮問会議に入って法律・制度を変え、非正規労働者を大量に生み出した陰でちゃっかり利益誘導していたとの話しもある。
カードの本当の狙いは判らない。
紐付けの間違いをはじけない杜撰な制度設計で信頼性を失ったマイナンバー制度が大混乱している。
「立ち止まってやり直すべき。」という大多数の意見を無視して、岸田政権は来年の秋には健康保険証の紐付け(保険証の廃止)を強引にスタートしようとしている。
既にマイナンバーカードを所有し、健康保険証を紐付けしている身としては、この先、〝被害を被らないために〟相当に注意を払わなければならない。
このことに限らず、岸田政権の数の力で押し切る乱暴な政治は目に余る。
何故、こうなっているのか考えることがある。
元公務員としての身びいきでも何でも無く、あくまで推測だが、この陰には霞が関を中心とする公務員の不足と過剰労働があるのではないか。
公務員組織の疲労である。
諸外国に比べて日本の公務員数が多いわけではないと言われてきたことはある。
問題は過剰労働によって正確性が衰えていることにあるのではないか。
政治家は利益誘導は得意だが政策立案能力は殆ど無いので霞が関の幹部に丸投げする。
霞が関は竹中氏のような有識者にヒントを求めて政策として肉付けする。
一度出来上がると役人の〝無謬性の神話〟(誤りを起こすはずが無いという思い込み)によって、枝葉は別として、幹の部分は絶対に変えない。
変えると自身の出世に影響するからだ。
枝葉部分は何とか絆創膏を貼って切り抜けようとするのだが、公務員のマンパワーが絶対的に不足しているから、十分な修正、点検が出来ないまま見切り発車となる。
最近は政界の不祥事が相次ぎ、その対応もあって公務員の労働環境は劣悪と言われていて、人も集まらなくなっいると聞く。
おのずと霞が関は民間と地方行政組織に仕事を押しつける格好にならざるを得ない。
これらの組織もマンパワーは不足しているだろう。
〝無謬性の神話〟だけが生き残る中で。
岸田首相の強引さは本人の性格というより、政治家としての資質が無いために役人に丸投げし、その答えに丸乗りしていることの裏返し現象ではないか。
役所は質量とも衰え、正確性が低下しているので〝惨状〟が次から次に巻き起こる。
選挙民が質の高い政治家を選ばない限り、サービス機関の行政への需要が増大し複雑化する社会で、こうした悪循環が繰り返されるのは国民にとって損失であることに気付いて欲しいと元公務員として思う。
小さなミスが重なって重大事故が起きるとの説もある。
いろいろなとろで今までは考えられないような事故が起きないとも限らない。
選挙は大事だ。
せめて野党政治家の質の向上に期待するより今のところ方法が無い。