徒然日誌(旧:1日1コラ)

1日1枚画像を作成して投稿するつもりのブログ、改め、一日一つの雑学を報告するつもりのブログ。

至の月、階段と迷路の街にて 23

2019-12-02 18:01:59 | 小説








 本文詳細↓




 気がついたら、声に出ていた。僕が口に詰めていていたはずの布は、いつの間にか風に翻弄されながら谷底へと落ちていった。
 アダムに頭を思いっきり殴られ、エクレアさんには弾かれたような勢いで振り向かれ、僕自身はというとすぐに手で口を塞いだけど、時既に遅し。
 悪魔たちはこぞって僕に手を伸ばしてきた。
 瞬間、ダァンッ! と脳みそを揺らすような大きな音がして、悪魔たちが一瞬驚いたように動きを止めた。
 「赤色因子をターゲットに固定。攻撃術式『愛(かな)しみの風よ、今ここに』展開」
 布を吐き捨てたエクレアさんが、銃を目の高さまで水平に持ちあげて構えていた。
 「世界に緋色の奇跡を見せつけよ!」
 悪魔の服や皮膚に付着した赤い塗料から火の手が上がった。驚いているのかそれとも賞賛しているのか、悪魔たちが声をあげている隙に僕たちは走り出した。
 「馬鹿者がっ! 何をしておるのだ、おぬしは!」
 「わざとじゃないんだ。ずっと話しかけられてて、それを無視しようとして彼女のことばかりを考えてたらつい……」
 「まんまと奴らの術中にハマっておるではないか! 言わんこっちゃないとはこのことよ!」
 「お二人とも、とにかく救貧院へ急ぎましょう。祭壇の中ならきっとやり過ごせます。司祭様から、何か怖いモノに追われたらそこへ隠れるよう言われてるんです」


コメント
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