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ちょうど、薪の入った籠を背負ったおじいさんが通りがかったので尋ねてみた。
「すみません。この町で、情報通な種族の方を探しているんですが心当たりはありませんか? 少し聞いてみたいことがあって……」
「そうだねえ……。エルフのお嬢様方は、この時間だと北の泉で沐浴をしているだろうから邪魔できないし……。ああ、この先の噴水のところへはよく風の精霊エアリエルたちが来ているよ」
栗色の瞳を穏やかに細めておじいさんは町の奥を指差した。礼を言って別れたあと道なりに進むと、噴水はすぐに見えた。三段に重なった噴水は思ったよりも大きくて、水の中を覗き込んでみればいくつもの種族が気持ち良さそうに泳いでいた。
「すみません、風の精霊エアリエルはいませんか?」
噴水の周りを歩きながら何度かそう呼びかけていると、やがて小さな光の粒を纏った緑の風がやってきた。
『私たちを呼ぶのはだあれ?』
『あら、悪魔にからかわれたお坊ちゃんだわ』
『でも無傷だったのよねえ』
『素晴らしい強運だわ』
『よい運命の星の下に産まれたのよ』
首筋や指先を、または足下を何かが通り過ぎていく感覚はあっても、姿は見えなかった。声もどこか反響しているような感じで、一体どれほどの数の精霊が来ているのか分からなかった。