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「信じてよいのか? あやつも同じ悪魔であろう!」
「私は信じてます」
叫ぶでもなく、彼女はただそう言い切った。なら僕はそれを信じようと答えて次のブロックへ飛び降りようとしたとき、突然僕の体が宙に浮いた。アダムに力一杯掴まれた髪が痛かった。
とっさに上を仰げば、傍らに大きな書物を浮かせた初老の悪魔が、両手を広げて佇んでいた。
ダダァンッッ!
「紫因子をターゲットに固定。対魔術式『理絶ちて、罪を断つ』展開。世界に紫紺の奇跡を知らしめよ!」
紫色の花が咲いたと思うと、ふっと体が軽くなり、真っ逆さまに落ちはじめた。
「緑因子をターゲットに固定。捕縛術式『糸絡まりて天岩戸』を展開、世界に碧羅の奇跡を構築せよ!」
続けて、こちらが叫び声をあげるよりも早く、エクレアさんの第二射が近くの三角屋根に当たって、太い蔓がバッと周囲に向かって伸びた。
「トルヴェール様、上手く掴まってください!」
言われた通り、必死に手を伸ばして蔓の先に指が触れると、とたんにぐいっと巻き取られた。
屋根の上で締めつけられる前に、エクレアさんが銃の先で突くと、蔓は光の粒子となって消えた。
「ご無事ですか?」
「どうにかね。……アダム、生きてるか?」