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……蒼い月の、銀の庭。あなたは大いなる旧き者。
……誰もその名を呼ばないわ。だって私たちは小さな人形箱(ドールハウス)の住人だもの。
……旧き者を知るのは旧き者。私たちは知らないわ。
……開かずの錠に結ぶ金の鍵。それはあなたを呼ぶ名がなるのでしょう。
……教えてあげよう、教えてあげる。
……嫌われた森の奥深く、薔薇姫のもとを訪ねなさい。
……今はもう昔の無邪気な悪戯姫のところへと。
煙にまかれたような奇妙な余韻を残して、エアリエルたちは去っていった。
「まあそう容易くは教えてくれぬわな。とにもかくにも、嫌われた森にいる薔薇姫とやらのところへ行くしかあるまい」
「そうだな。けど、薔薇姫ってことは、やっぱり例の呪いと関係があるのかな」
「さあの。まあ罹るのは女子(おなご)だけと言うし、おぬしは大丈夫であろう」
それからいろいろ聞いて回って、嫌われた森が東に広がる小高い山のことだと分かった。
「どうして嫌われた森なんて呼ばれるんですか?」
大工仕事をしていた人間の男性に尋ねてみると、
「毒の沼があるとか鳥に化けた悪霊に仲間が攫われるとか、昔から曰くがあってエルフも近づかねえのさ」