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どれだけ像を見つめていたかは分からなかった。そんな僕が我に返ったのは、アダムに振り下ろされた特性木槌が頭にクリーンヒットしたからだった。
「いいかげんにせんか! いつまでそのマヌケ面を晒すつもりだ!?」
「いっったい! え、というかなんだそのハンマー⁉」
「凄かろう。我の七つ道具のひとつよ」
「どこに隠し持ってるんだ、そんなの!?」
「秘密だ!」
思わず状況も忘れてアダムと言い争っていると、朗らかな笑い声が響いた。
「アハハッ。あぁ、おかしなこと……。久しぶりに笑ったような気がするわぁ」
それはたぶん独り言だったのだと思う。ひとしきり笑ったあと、女性は揶揄うように呟いた。
「それに憧れるのは止めておいたほうが賢明よ、坊や。彼女は数いる天使の中でも一番のろくでなしと言われてるんだから」
天使。ろくでなし。
「っ、もっと詳しく教えてください、『彼女』のことっ! ずっとずっと探してて……でも何も分からなくて……お願いします! 僕はもう一度、『彼女』に会いたいんです!」
我ながら、なんとも拙いセリフだった。これじゃあ分かるものも分からなかったろうに。僕は何も考えず、ただ必死で女性に縋り付いていた。