徒然日誌(旧:1日1コラ)

1日1枚画像を作成して投稿するつもりのブログ、改め、一日一つの雑学を報告するつもりのブログ。

理の月、旧世と懐古の町にて 15

2019-12-24 18:59:57 | 小説



 




 本文詳細(12/24 21:55修正)
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 「臆病な種族たる人間は、言葉よりも物、物よりも行動を欲する。彼はどこまで自分を愛してくれているのかしら? そんな我侭だけど可愛らしい願いを叶えるためのおまじないよ」
 実は魔法をかけた本人以外にも、薔薇姫の呪いを解く方法はあるらしい。それは、『全身に浮かんだ紋様を、消えてなくなるまで男性が吸い取ること』だった。けれどそのためには、女性は秘(かく)しておきたいところまで相手に全身を曝け出さなければならず、男は得体も知れず気味が悪い花の紋様を吸わねばならない。
 そこまで聞くとたしかに、恋しい相手の愛の深さを測るにはもってこいだろうと思った。
 「この魔法にかかるには、同じ相手に百回愛していると言わなければならないの。そこまでしていれば、普通は問題なく愛を確かめあえるものなんだけど……」
 そうじゃない人が多かった。エルゼノーラさんが残念そうだったのは、そういうわけだった。
 「この廃墟に居着いた頃、近くに町があると知って戯れにかけてみたのよね。何か深い考えがあったわけでもないし、すぐに忘れてしまっていたわ。意味も理由もないですし、明日の天満つ時を待って解いておきます」
 町を寂れさせるほどの呪いも、戯れに過ぎないと言われると、人間として思うところはあった。けど、当然と言い聞かせるしかできなかった。共に同じ世界で生きていても、何を愛し、何に涙し、何を罪とするかなんてものは、個体間ですら違うのだ。


コメント
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