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エクレアさんは楽しそうな顔でそれ以上のことを教えてはくれなかった。救貧院のドアまで見送りにきてくれたエクレアさんは、最後に司祭様からの伝言を教えてくれた。
『探し人なら、世界でも最も古い町のひとつ、旧世と懐古の町へ行くのはいかがでしょう』
「そうか……分かった、ありがとう。司祭様にも伝えておいてもらえるかな」
「はい。確かに承りました。あなたに、真なる天地の喜び多からんことを」
「本当に色々とお世話になりました……。あなた方に、真なる天地の喜びが多からんことを」
最後に深くお辞儀をして、僕は救貧院をあとにした。
そして、エクレアさんが言っていたことはすぐに分かった。なんと、僕たちが入ってきた入り口のすぐ傍に、月桂樹の葉が描かれた緑の旗がはためいていたのだ。
昨日と同じく入口の傍に座っていたゴブリンのおじさんに話を聞くと、
「悪魔どもの気まぐれだろ。連中は街を勝手にバラバラにしやがるし、元の通りにもしていかねえ。エクリプスの夜が開けたら、ただでさえめちゃくちゃな街がもっとめちゃくちゃになってるってぇのは、ここに長くいる連中の間じゃ常識さ」
とのことだった。
……夕べの僕らの話を聞いて、司祭様が口添えしてくれたのだろうか?