徒然日誌(旧:1日1コラ)

1日1枚画像を作成して投稿するつもりのブログ、改め、一日一つの雑学を報告するつもりのブログ。

理の月、旧世と懐古の町にて 13

2019-12-22 10:01:38 | 小説



 




 本文詳細↓



 太陽はまたもう少し西に流れて、黄色やオレンジの光が端からにじみつつあった。
 「『彼女』は危険な人なんですか? でも、僕が昔会ったときは全然そんな感じしなかった。だからかな、あなたにそう言われても、ピンとこないんです。『彼女』のことは、僕が直接『彼女』と話して、知りたい」
 じゃあどうして女性に縋り付いたのか。言えなかったけど、僕はちゃんとその答えを知っていた。
 ……あの蒼い月夜が夢ではなかっのだと、はっきりさせたかった。それだけだ。
 文献を探して、流れの商人に聞いてみて、旅人に言伝を頼んで、それでも十年以上何もなかった。ただの妄想だったら、そう考えて怖くならなかった日はなかった。けど、そんなまとわりつく悪夢の霧も、今日晴れた。
 『彼女』は――天使ナイトウォーカーは、この世界に実在する。
 「……ありがとうございます。『彼女』の名前を、教えてくれて」
 姿勢を正して、僕はただ頭を下げた。女性は何も言わずに僕の頭から手を離した。

 「時に、おぬしは魔女だな?」
 もう用はないからと辞そうとしたら、肩の上で器用にふんぞり返りながらアダムが女性に訊いていた。
 「ええ、エルゼノーラと申します。初めてお目にかかりますわね、《雲を歩き海を呑む放浪者》」




コメント
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