このピアニストを知る人は今日どれほどいるのだろうか?
試しに検索してみると、亡くなった時に出た記念CDは今でもアマゾンをはじめ、色々な所で手にすることができるようだ。
このピアニストは長年日本に住み、演奏と教育に尽力してきた人だ。
それにもかかわらず、名前で検索すると上記のCD紹介の他には、ひとりだけ受験の時に(だったかな)レッスンに行ったという記事が見つかるだけだ。
僕も名前だけは学生時代から知っていた。でもそれは誰かの経歴に書かれている名前として知っているに過ぎなかった。外国人がきわめて少ない時代だったから目立ったのであり、そのピアニストがどの様な演奏をし、レッスンをするのかを小指の先ほども知っていたわけではなかった。
少し前に偶然からこの人の録音を手に入れて聴いた。そして驚いた。
僕の学生時代にこれほど力量のあるピアニストが日本に住み、活動していたのだとは!
エッガーを名前しか知らなかったのは、僕が昔から所謂音楽界事情にまったく興味がなかったせいもあるだろう。
それにしても大きな話題になっていたならば、もう少し違った反応をしたのではなかろうか。師事した教師としてエッガーの名を載せている知己の誰からも彼について聞いたことはないのである。
録音にはシューベルトやトスティの弾き歌いまで入っているのだが、歌がまた実に上手い。そのまま声楽科の教授になっても良い。
昔ベルリンにロスヴェンゲという名テノールがいた。この人は化学専攻から独学で大歌手になったデンマーク人である。
少し脱線するが、当時の大歌手の経歴を見ると面白い。独学もロスヴェンゲのお家芸ではない。パツァークという名テノールもそうだし、バリトンでありながらテノール並の人気があったシュルスヌスなども郵便局員だったという。そうした話はそのうちに紹介しよう。
ロスヴェンゲは強靭な喉を持っていたらしく、公演を一度たりともキャンセルしなかったばかりか、キャンセルした同僚の代役として飛び入りで出演までしたという。
僕はこの歌手の録音を幾つか持っている。時には情念が燃え上がりすぎるのでは、と感じるほどだ。
エッガーの話が往年の大テノールの話になってしまったが、エッガーの歌うのを聴いてふとロスヴェンゲと同じような資質の人だと感じたからだ。(次の記事では出来ればロスヴェンゲを取り上げてみたい)
エッガーのピアノ演奏にようやく戻る。ショパンの「葬送ソナタ」からも歌で感じた特性ははっきりと聴き取れる。テンペラメントというのかしらん、奔放でありながら決して崩れたところのない見事な演奏である。叩き潰した音などはどこにもない。どうしてどうして、極めて高い能力を有したピアニストだ。
このような人が日本に住みながら、なぜ話題の中心の一人になっていなかったのか。僕には不思議でならない。大抵の場合がそうだ。神棚の上に祭り上げるか、無視を決め込む。エッガーの場合は後者かもしれぬ。もっとも、CDの宣伝文句には最後の巨匠とある。祭り上げて無視を決め込んだのだろうか。
生前に会う機会がなかったことが返すがえす残念な思いがする。せめて残された録音を聴こう。そして本ブログを読んだ人にも聴いてもらいたい。
テクニックについてはこちら
試しに検索してみると、亡くなった時に出た記念CDは今でもアマゾンをはじめ、色々な所で手にすることができるようだ。
このピアニストは長年日本に住み、演奏と教育に尽力してきた人だ。
それにもかかわらず、名前で検索すると上記のCD紹介の他には、ひとりだけ受験の時に(だったかな)レッスンに行ったという記事が見つかるだけだ。
僕も名前だけは学生時代から知っていた。でもそれは誰かの経歴に書かれている名前として知っているに過ぎなかった。外国人がきわめて少ない時代だったから目立ったのであり、そのピアニストがどの様な演奏をし、レッスンをするのかを小指の先ほども知っていたわけではなかった。
少し前に偶然からこの人の録音を手に入れて聴いた。そして驚いた。
僕の学生時代にこれほど力量のあるピアニストが日本に住み、活動していたのだとは!
エッガーを名前しか知らなかったのは、僕が昔から所謂音楽界事情にまったく興味がなかったせいもあるだろう。
それにしても大きな話題になっていたならば、もう少し違った反応をしたのではなかろうか。師事した教師としてエッガーの名を載せている知己の誰からも彼について聞いたことはないのである。
録音にはシューベルトやトスティの弾き歌いまで入っているのだが、歌がまた実に上手い。そのまま声楽科の教授になっても良い。
昔ベルリンにロスヴェンゲという名テノールがいた。この人は化学専攻から独学で大歌手になったデンマーク人である。
少し脱線するが、当時の大歌手の経歴を見ると面白い。独学もロスヴェンゲのお家芸ではない。パツァークという名テノールもそうだし、バリトンでありながらテノール並の人気があったシュルスヌスなども郵便局員だったという。そうした話はそのうちに紹介しよう。
ロスヴェンゲは強靭な喉を持っていたらしく、公演を一度たりともキャンセルしなかったばかりか、キャンセルした同僚の代役として飛び入りで出演までしたという。
僕はこの歌手の録音を幾つか持っている。時には情念が燃え上がりすぎるのでは、と感じるほどだ。
エッガーの話が往年の大テノールの話になってしまったが、エッガーの歌うのを聴いてふとロスヴェンゲと同じような資質の人だと感じたからだ。(次の記事では出来ればロスヴェンゲを取り上げてみたい)
エッガーのピアノ演奏にようやく戻る。ショパンの「葬送ソナタ」からも歌で感じた特性ははっきりと聴き取れる。テンペラメントというのかしらん、奔放でありながら決して崩れたところのない見事な演奏である。叩き潰した音などはどこにもない。どうしてどうして、極めて高い能力を有したピアニストだ。
このような人が日本に住みながら、なぜ話題の中心の一人になっていなかったのか。僕には不思議でならない。大抵の場合がそうだ。神棚の上に祭り上げるか、無視を決め込む。エッガーの場合は後者かもしれぬ。もっとも、CDの宣伝文句には最後の巨匠とある。祭り上げて無視を決め込んだのだろうか。
生前に会う機会がなかったことが返すがえす残念な思いがする。せめて残された録音を聴こう。そして本ブログを読んだ人にも聴いてもらいたい。
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