季節はずれのインテルメッツォ(続)

音楽、文学、絵画、スポーツ、シェパード等々についての雑記帖。

24時間耐久レース

2016年06月22日 | スポーツ
先週末、有名なルマン24時間耐久レースが開催された。
無論、スタートからしばらくと最後の1、2時間を見ただけなのであるが。

耐久レースと聞くと何やら頑丈さを競うだけのような印象を与えるが、今日のレースはとんでもないレベルにある。僕は全くの素人だから、ただただ驚くしかないのだが、丸一日かけてのレースでも(当然真夜中でも)区間によっては時速300キロを優に超す。

そのような過酷なレースをずっとリードしていたのはトヨタのマシーンだった。ただ、驚くなかれ、24時間近く経った時点で2位のポルシェとの差はたったの30秒くらいだった。

残り時間があと5分ばかりになり、その差は急に90秒に開き、もう誰もがトヨタの初優勝を疑わなかった。ピットのドライバーやメカニック、そしてお偉方たちの安堵と喜びを押し殺した顔がなんども映し出され、独走態勢に入ったトヨタ車だけをカメラは追うようになった。当然のことだ。

しかし信じられないことが起こった。ドライバーが「ノーパワー!ノーパワー!」と叫び、あろうことかマシーンは止まってしまった。

いったい誰がこのことを予想しただろう。いったい誰がこの現実を受け入れられたであろう。ドライバー、メカニカー、その他全ての関係者、いや、世界中のTV観戦者でさえもが凍てつくような時間の中に立ちすくんだに相違ない。

今まで幾度となく書いてきたことだが、今回の結末の後、夢をありがとう、などと言うものはいない。僕がサッカーについて、これ以上強くなるはずがないと断定する、あのフレーズを発することは不可能である。改めてそれを思うしかない。

夢を夢で終わらせないだったか、そんなフレーズで語られる音楽の世界のことも頭をよぎった。ふわついた言葉はふわついた心からしか出ない。当たり前のことだが。

このレースを僕は忘れることはあるまい。