東埼玉病院 リハビリテーション科ブログ

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当院理学療法士による治験の運動機能評価

2018年09月06日 | 神経難病

当院は本邦で設立された筋ジストロフィー臨床試験ネットワーク(通称MDCTN:Muscular Dystrophy Clinical Trial Network)という組織に加盟しております。

MDCTNとは筋ジストロフィーに関連する臨床研究・開発の促進を目的として設立された組織で、現在は40施設が加盟して運営されています。

これは1999年に米国中心の臨床研究ネットワークCINRG(Cooperative International Neuromuscular Research Group)、2007 年にヨーロッパ中心の臨床試験ネットワーク TREAT-MND(Translational Research in Europe Assessment and Treatment of Neuromuscular Diseases)と世界中で臨床研究ネットワークが設立される中、本邦でも設立された組織になります。

具体的には後述します神経・筋疾患患者登録システムremudyと連携して被験者リクルートメントの支援や臨床試験に必要な情報の開示、研究事務局として研究資金の一元管理などを行っています。



また臨床研究・開発に関する取り組みだけでなく、情報交換の場として年に1度のワークショップの開催といった活動も行っております。

詳しくはHPをご参照いただければと思います。

http://mdctn.ncnp.go.jp/


そしてこのMDCTNや製薬関連企業からの直接受託などを通して、当院では治験管理室が主導となり神経筋疾患の臨床研究が行われるのですが、現在運動機能の評価は理学療法士に依頼されることが多いです。

そのためリハビリテーション科では現在、研修を受けた4名の理学療法士で治験評価を行っております。

このような仕事があることも当院理学療法士の特色の一つと言えるかもしれません。

理学療法士は運動機能評価を行う臨床研究の依頼があった際、臨床試験ごとに運動機能評価の研修を受講します。

受講後には試験を行い、認定証をもらった理学療法士のみが臨床研究の運動機能評価を行うことができます。

これまでの研究では臨床試験に理学療法士が関わることが少なく、標準化された運動機能評価は行われておりませんでしたが、これからはより正確性・再現性のある運動機能評価を通して臨床研究の評価が行われるようになってきています。

その具体的な運動機能評価については今後の治験への影響もあるためこちらで具体的な記載はできないのですが、歩行機能や立ち上がり動作、階段昇降など基本動作を6分間歩行試験、10m歩行試験、timed and up go testなどの評価指標を用いて量的・質的に評価することで臨床試験の効果検証を行うことが多いです。

評価項目が膨大であることと対象が小児の患者でやんちゃな子も多いため、評価には時間と体力を要しますが、とてもやりがいのある仕事であり、いい勉強の機会にもなっています。


いわゆる神経筋疾患は希少疾患と言われ、臨床研究を行うにも対象となる患者さんが集まらないことが大きな障壁となります。

そこでさきほど紹介したMDCTN以外にも神経筋疾患患者登録remudy(Registry of Muscular Dystrophy)というシステムが運用されています。

これは臨床試験・治験の対象となる患者さんを登録するシステムで、それにより患者さんと製薬関連企業・研究者の橋渡しをすることを目的としています。

登録された患者さんの情報よりそれぞれの疾患の疫学・自然歴も明らかになりつつあり、その他詳細なデータについてもウェブサイト上で公開され、登録者を含む患者・家族や医療従事者、一般の閲覧者に療養や診療の情報として、また臨床研究の計画の参考となる情報として利用されています。

多くの疾患について登録システムがHP上にて運用されております。在宅で埋もれている患者さんもおり、ぜひ積極的に患者登録をして頂けたらと思いますが、その際は主治医に相談してみてください。

http://www.remudy.jp/


話が逸れてしまいましたが、神経筋疾患において多くの基礎研究が長年行われ、現在は病気自体の治療を対象とする治療法の多くが臨床試験・治験目前に迫っております。
そのような中で信頼性・再現性のある評価を実施し、微力ながら新たな治療法の確立に尽力していきたいと思います。

C5(PT)


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