今回は「間質性肺疾患治療を考える会」の第1回目として、日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社様主催にて「IPF(特発性肺線維症)についての勉強会」を東埼玉病院の大会議室にて行いました。
開会の辞は当院呼吸器疾患部門部長の堀場昌英先生が務め、講演は東埼玉病院呼吸器科の諸井文子先生が「抗線維化薬を使用した特発性肺線維症の検討」についての症例報告し、特別講演では国際医療福祉大学医学部呼吸器内科学主任教授の津島健司先生が「特発性間質性肺炎の診断と治療~実臨床における経験をふまえて~」について演じてくださいました。
水曜日の業務後にも関わらず、会場には他の病院医師やコメディカルのスタッフも集まり、会場は終始たくさんの人で賑わっていました。
ところで「特発性肺線維症(以下IPF)」について皆様はどの程度ご存知でしょうか。今回は勉強会の中心でもあったIPFについて簡単にまとめたいと思います。
① IPFとはどんな病気なのか?
簡単に言えば、肺の間質組織に線維化が起こる病気を「肺線維症」と呼び、原因が不明なものの中で最も多いのが「特発性肺線維症(以下IPF)」です。
診断後、約35ヶ月で死亡に至ると言われている、非常に怖い病気です。
② IPFの病気の仕組み
IPFは間質の線維化が徐々に悪化していく病気です。IPFの病気の進行速度と経過は、患者さんそれぞれで異なります。そのため数年単位で徐々に進行する方も居れば、急速に進行することもあります。また、原因は分かっていませんが、数日から1ヶ月の間に突然息苦しくなり、呼吸機能が急激に悪化する場合があります。これを急性増悪と呼びます。
③ 呼吸機能の確認
IPFでは、呼吸機能を維持し、悪化させないことが大切です。そのため、定期的に検査をしながら呼吸常態を確認し、悪化が見られたら速やかに治療を開始します。
④ IPFの特徴的な症状
IPFの特徴的な症状として「空咳(からせき)」、「労作時の呼吸困難」、「バチ(状)指」などがあります。
「空咳(からせき)」は痰の出ない、コンコンといった咳が出ます。
「労作時の呼吸困難」は労作時(身体を動かした時)の息切れのことです。坂道や階段の上り下りなどで身体に負荷がかかることで酸素の取り込みが低下しての息切れを起こします。また症状が進行するにつれて、着替えや入浴などのごく軽い負荷でも息切れが起こるようになります。
「バチ(状)指」は指先が太鼓を叩く「バチ」のように盛り上がり、爪が丸くなった状態になります。IPFの患者様の25~50%程度に見られると言われています。この症状自体には痛みは伴いません。
⑤ 検査方法
IPF患者様は、病気の進行や治療の経過を確認するために、様々な検査を定期的に行う必要があります。以下に検査の例を挙げます。
「スパイロメトリー」:肺活量や1秒率など肺の機能を調べる検査で、病気の進行度や治療の経過を確認するための重要な検査です。
「動脈血液ガス分析」:ガス交換や酸素化、酸塩基反応の異常を調べる検査で歩行試験(6分間歩行検査)と共にIPFの重症度を確認するために実施します。
「歩行試験(6分間歩行検査)」:身体を動かしている状態で、呼吸機能を検査し、呼吸やガス交換の状態を確認します。
「画像検査」:胸部X線検査や高分解能CTなどがあり、肺の線維化がどの部位に、どのぐらいの広がりで起きているのかが分かります。
「血液検査」:病気の状態を把握するために間質性肺炎のマーカー(KL-6やSP-Dなど)を測定したり、薬の副作用を検査するために肝機能や腎機能の値を測定します。
「肺生検」:手術で胸を開くか、胸腔鏡という器具を身体の外から挿入して肺の一部を切り取ります。切り取った肺の組織や細胞を顕微鏡で検査し、病気の診断を確定します。
「気管支肺胞洗浄」:肺の一部を生理食塩水で洗浄し、洗浄液を回収します。回収した洗浄液に含まれる細胞や成分を検査し、病気を診断します。
⑥ 治療方法
「薬物治療」:お薬を使った治療は、病気の進行を抑え、呼吸機能を保つために行います。病気の進行を抑えるためにも、IPF治療は長期間に渡ることを理解しておきましょう。(※お薬の使用に当たって、主治医や薬剤師の指示に従ってください。)
「運動療法(呼吸リハビリテーション)」:呼吸困難の軽減や心身機能を改善するために、呼吸リハビリテーションが行われることがあります。運動療法を円滑に行うための身体作り(コンディショニング)や平地を歩いたり、エアロバイクをこいだりする運動療法は呼吸リハビリテーションの中心的なプログラムです。主に生活の質(QOL)や運動耐用性の改善、呼吸困難の改善、必要な医療サービスの減少に繋がります。
「在宅酸素療法」:呼吸機能の低下に伴って、肺で十分に酸素が取り組めずに酸素不足になった場合には、呼吸を楽にするために、酸素を吸入しながら生活する在宅酸素療法が行われることがあります。自宅に設置した機器や携帯用の容器から酸素を吸入します。
終わりに、IPFの治療では、ご自身の病気を正しく理解し、病気が悪化しないように治療を続けていくことが大切です。分からないことや不安に思うことは、そのままにせず、主治医や看護師、薬剤師に相談しましょう。
皆様が、より安心して生活を続けていくために、お役に立てましたら幸いです。
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水曜日の業務後にも関わらず、会場には他の病院医師やコメディカルのスタッフも集まり、会場は終始たくさんの人で賑わっていました。
ところで「特発性肺線維症(以下IPF)」について皆様はどの程度ご存知でしょうか。今回は勉強会の中心でもあったIPFについて簡単にまとめたいと思います。
① IPFとはどんな病気なのか?
簡単に言えば、肺の間質組織に線維化が起こる病気を「肺線維症」と呼び、原因が不明なものの中で最も多いのが「特発性肺線維症(以下IPF)」です。
診断後、約35ヶ月で死亡に至ると言われている、非常に怖い病気です。
② IPFの病気の仕組み
IPFは間質の線維化が徐々に悪化していく病気です。IPFの病気の進行速度と経過は、患者さんそれぞれで異なります。そのため数年単位で徐々に進行する方も居れば、急速に進行することもあります。また、原因は分かっていませんが、数日から1ヶ月の間に突然息苦しくなり、呼吸機能が急激に悪化する場合があります。これを急性増悪と呼びます。
③ 呼吸機能の確認
IPFでは、呼吸機能を維持し、悪化させないことが大切です。そのため、定期的に検査をしながら呼吸常態を確認し、悪化が見られたら速やかに治療を開始します。
④ IPFの特徴的な症状
IPFの特徴的な症状として「空咳(からせき)」、「労作時の呼吸困難」、「バチ(状)指」などがあります。
「空咳(からせき)」は痰の出ない、コンコンといった咳が出ます。
「労作時の呼吸困難」は労作時(身体を動かした時)の息切れのことです。坂道や階段の上り下りなどで身体に負荷がかかることで酸素の取り込みが低下しての息切れを起こします。また症状が進行するにつれて、着替えや入浴などのごく軽い負荷でも息切れが起こるようになります。
「バチ(状)指」は指先が太鼓を叩く「バチ」のように盛り上がり、爪が丸くなった状態になります。IPFの患者様の25~50%程度に見られると言われています。この症状自体には痛みは伴いません。
⑤ 検査方法
IPF患者様は、病気の進行や治療の経過を確認するために、様々な検査を定期的に行う必要があります。以下に検査の例を挙げます。
「スパイロメトリー」:肺活量や1秒率など肺の機能を調べる検査で、病気の進行度や治療の経過を確認するための重要な検査です。
「動脈血液ガス分析」:ガス交換や酸素化、酸塩基反応の異常を調べる検査で歩行試験(6分間歩行検査)と共にIPFの重症度を確認するために実施します。
「歩行試験(6分間歩行検査)」:身体を動かしている状態で、呼吸機能を検査し、呼吸やガス交換の状態を確認します。
「画像検査」:胸部X線検査や高分解能CTなどがあり、肺の線維化がどの部位に、どのぐらいの広がりで起きているのかが分かります。
「血液検査」:病気の状態を把握するために間質性肺炎のマーカー(KL-6やSP-Dなど)を測定したり、薬の副作用を検査するために肝機能や腎機能の値を測定します。
「肺生検」:手術で胸を開くか、胸腔鏡という器具を身体の外から挿入して肺の一部を切り取ります。切り取った肺の組織や細胞を顕微鏡で検査し、病気の診断を確定します。
「気管支肺胞洗浄」:肺の一部を生理食塩水で洗浄し、洗浄液を回収します。回収した洗浄液に含まれる細胞や成分を検査し、病気を診断します。
⑥ 治療方法
「薬物治療」:お薬を使った治療は、病気の進行を抑え、呼吸機能を保つために行います。病気の進行を抑えるためにも、IPF治療は長期間に渡ることを理解しておきましょう。(※お薬の使用に当たって、主治医や薬剤師の指示に従ってください。)
「運動療法(呼吸リハビリテーション)」:呼吸困難の軽減や心身機能を改善するために、呼吸リハビリテーションが行われることがあります。運動療法を円滑に行うための身体作り(コンディショニング)や平地を歩いたり、エアロバイクをこいだりする運動療法は呼吸リハビリテーションの中心的なプログラムです。主に生活の質(QOL)や運動耐用性の改善、呼吸困難の改善、必要な医療サービスの減少に繋がります。
「在宅酸素療法」:呼吸機能の低下に伴って、肺で十分に酸素が取り組めずに酸素不足になった場合には、呼吸を楽にするために、酸素を吸入しながら生活する在宅酸素療法が行われることがあります。自宅に設置した機器や携帯用の容器から酸素を吸入します。
終わりに、IPFの治療では、ご自身の病気を正しく理解し、病気が悪化しないように治療を続けていくことが大切です。分からないことや不安に思うことは、そのままにせず、主治医や看護師、薬剤師に相談しましょう。
皆様が、より安心して生活を続けていくために、お役に立てましたら幸いです。
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