大規模な太陽光発電施設の開発計画が相次ぐ志摩市で、
環境や景観の悪化を懸念する市民が中止を求めている。
計画地は、三重ブランドにも認定されている「的矢カキ」の産地・的矢湾に面した山林。
カキ養殖業者から開発の影響を不安視する声も上がり、署名活動に発展している。
計画地は、同市磯部町の山林で、開発面積は約十九万四千七百平方メートル。
市内有数の眺望で人気を集める的矢湾大橋の近くにあり、
周辺にはテーマパーク「志摩スペイン村」やホテルもある風光明媚(めいび)な場所だ。
計画の中止を求めて署名運動をしているのは「伊勢志摩国立公園を大切にする市民の会」。
相次ぐ太陽光発電施設の開発を問題視する住民有志で昨年九月に発足した。
会は「山林を切り崩せば、山の保水力も低下する」と濁水流出など環境への影響を指摘。
「的矢湾大橋の近くに施設ができれば、観光業への悪影響も出かねない。
ナショナルパークを目指す国立公園で、観光資源の劣化は許されない」と主張している。
計画地近くで九十年前からカキの養殖を続ける佐藤養殖場の四代目社長、
佐藤文彦さん(47)は「樹木を伐採すれば、濁水が海に流れ込む。
そうなれば養殖しているカキが死滅しかねない」と危機感を募らせ
「山を削ってまで造る必要があるのか」と訴える。
伊勢市の業者が志摩市に開発の届け出を提出したが、
登記簿によると、東京都の太陽光発電事業者が昨年十一月に計画地を買い取った。
同社は取材に「担当者が不在で応じられない」と回答したが、
市によると、漁業関係者に向けた説明会を二十四日に開く。