旅先の不便

　旅先では思わぬ事で不便な目にあう事があります。気候の違いや生活習慣の違いや文化の違いや宗教観の違いなど、我々が普段当たり前に享受している事が旅先では得られない事は数多くあります。

　たとえば、スイッチを入れれば電気が点く事や、冷蔵庫に物を入れておけば冷える事が当たり前と我々は普段思っていますが、24時間電気が来ていない町は世界に沢山あります。デジタルカメラや携帯電話の充電も計画的に行わなければならないですし、コンビニに行っても冷えた飲み物はありません。

　旅先での不便さを回避するためにどうすればよいかとか、何を持って行けば良いかについて、多かれ少なかれ旅行前に情報収集をすると思います。私も旅に出る直前には衣類の用意の参考にするために現地の”天気予報”を見ることがよくあります。お客様からも”何を持って行くとよいですか”という質問はよく寄せられます。

　現地で起こり得る問題に対処するための持ち物、旅先で便利な物などなど、こういった物に考えを巡らせているとあっという間に荷物はどんどん膨れ上がります。そして旅先ではそれらを管理する苦労が付きまとう事にもなってしまいます。

　しかし、考えてみれば旅先が人跡未踏の地であったり、不毛の地でない限りは人間が一生を送ることが出来るだけの物は現地で調達できるはずです。我々の日本での日常生活と同じ内容を実現するものが調達できないだけの事です。

　現地で暮らす人たちと同じ暮らしが自分にできるのであれば、気候に見合った服装（それも現地で購入できますが）さえ身に着けていれば、後はパスポートとお金が必要なだけのはずです。
　
　現地へ行ってから”持ってくれば良かった”と思う物があったとしたら、それは普段自分がいかに恵まれた環境にいるかの再認識になるかもしれません、逆に現地でしばらく過ごしているうちに”絶対必要と普段思っていたけれど、意外と必要なかった”と日常生活の無駄に気付かされることもあるかもしれません。そういう再発見の体験も旅の魅力の一つだと思います。

　旅先の不便さに”備える”のではなく、不便さを受け入れて旅する事の方が旅先の人々の生活をより深く体験し、感じる事につながるはずですし、そういう体験こそが情報として知る事とはまた違った、実際にそこに身を置いて得られる財産だと思うのであります。　
　旅先の少々の不便はむしろ進んで体験して、その中での創意工夫もまた楽しんでみせる位の気持ちで旅をしたいものではありませんか。