旅のウンチク

旅行会社の人間が描く、旅するうえでの役に立つ知識や役に立たない知識など。

食文化に対する寛容さ

2014年03月11日 | 旅行一般
 以前から時々スーパーで見かけては気になっていた”サメ”。”棒ざめ”とか”もうかざめ”などが切り身で店頭に並んでいる事があります。私の生まれ育った地域では食する事のない食材。どう料理して良いのかもわからないので気になるけれども結局手に取る事は最近までありませんでした。

 これが高級な食材なら最初から気にもかからない(つまり手に取る候補にも入ってこない)のですが、比較的安めの食材。目にするたびに気になります。帰省した際には母親に”サメってどう食べる?”と聞いてみましたが私の郷里の地方ではサメを食べる習慣は無く、”東京ではサメ売ってんの?”と逆に興味深々”気がついてへんだけかもしれんから見に行ってみよう”とわざわざスーパーへ出かける始末です。私の手元の料理本を何冊かめくってみましたがサメのレシピはありません。しかし、便利な時代になったものでインターネットには多数のレシピが掲載されています。ある日、スーパーの”見切り品”に棒ざめが乗っているのを見た事がきっかけとなり、ついにサメのレシピを調査。煮魚が定番のようですが、揚げ物系でもいけると判明。ついに我が家のメニューに今年からサメフライが加わる事になりました。
 
 その後、何人かの友人とサメを食べるかどうかの話題で話す機会がありましたが、”そんなの売ってる?””たまに見るけど食べ方知らないね”といった答えしか返ってきませんでした。というわけで私は今のところ私の周辺ではサメ食の先人となったわけです。

 文化というのは地域の特徴と絡み合いながら発展、分岐していく物だと思いますが特に食文化はこの傾向が強いので、自分の知らない地域に行っての”食”との出会いは旅の大きな楽しみの一つです。それと同時に時として食習慣の違いは”異文化”である事を鮮明に示してしまう一面もあって、自分の食べない物を食べる人たちの事は”野蛮”と見える事もあるようです。クジラやイルカを食べる事に対する反応もここに入るのだと思います。

 日本人は異なった食文化に対して比較的寛容なのか、あるいは好奇心が旺盛なのか、はたまた宗教的、文化的タブーが希薄なためか、他からもたらされた食材に好奇心こそ覚えても、頭ごなしに拒否したり、見慣れない食材を”ゲテモノ”と分類したりする人はあまり多くありません。スーパーカブで旅するタイ北部では昆虫を食べるのが恒例になっています。さすがに抵抗を感じる人が多いですが断固拒否する人はおられず、結局好奇心に負けて皆食べておられます。そして、意外な美味しさを発見されてもいるようです。
 
 郷に入っては郷に従えと言いますが、私は異文化に対して自分の文化との比較で評価するのではなく、とりあえず好奇心を持って受け入れてみる事ができる点で、日本人は旅人として有利な精神土壌を持っていると思います。自分たちは比較的何でも受け入れられるだけに、逆に自国の文化を他国に表現することがあまり上手くないとも言えます。だから、今後もクジラを食べたり、イルカを食べたりする事はきっとずっと批判にさらされていくのでしょう。我々は自分たちの食文化にとらわれず、これからも世界のいろいろな場所に美味しい物と出会いに出かける事にしましょう。


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