旅のウンチク

旅行会社の人間が描く、旅するうえでの役に立つ知識や役に立たない知識など。

ケチケチ日本2

2007年01月03日 | 旅行一般
過去のカナダ、オフロードファンライド、ウエストクートニーエリアのコースでの にエコロッジを設定していた事があります。スロカーン湖の岸に位置するそのエコロッジ、ヴァルハラ・ティピキャンプはティピを主な宿泊施設とし、倒木を利用して造ったロッジが点在するそのエリアへは唯一の交通手段はスロカーン湖を横断するボートのみ。もちろん電気やガスは無く、燃料は自然に倒れた木々を使用。その他にも周辺の自然環境との調和に気を配った運営は、今風に言えばロハスな生活。なかなか興味深い場所だったのですが、残念ながら数年前に閉鎖されてしまいました。

ある年、ツアーガイドのデイブがスロカーン湖での宿泊の当日の朝、突然"今日の夕食はオマエ達でシャブシャブをつくれ"と言い出したのです。朝食を終えた後、私とゲストとして同行していただいていたO氏はカズロという小さな町でシャブシャブの材料を探しまわり、どうにかソレっぽい食材を掻き集めてスロカーンへ向かったのでした。

スロカーンに到着して、ティピキャンプのオーナーと1年振りの再会を祝った後で、今夜の食事は我々が用意するという事をガイドのデイブが発表。ティピキャンプのオーナーは"それじゃあ、キノコでも取りに行こう"と、私を連れて小雨の降る森へ分け入ります。様々なキノコを採集してきて、薪ストーブでお米を炊くと共にキノコをダシ代わりにしたシャブシャブ風ナベのできあがりです。

お客様たちの協力もあって、日本人にとっては、"シャブシャブからはかなり遠いけれど、それなりにおいしい牛ナベ"。カナダ人にとっては"シャブシャブ"が無事できあがって、それぞれに満腹を味わったのでした。

何度かのおかわりを終えた後、皆が満腹したのを見た私たちは、食事に使った食器類を片付けはじめたのでした。その時、ご飯もナベもまだ残っていたのです。というよりも、これは計算済み。私たちの計画では、これは明日の朝、オジヤにする予定で、そのためにタマゴも買い込んであるのです。

片付けを手伝っていた日本人は全員、その計画に感づいていて、同意していて、誰もナベやご飯には手を触れようとしません。ところがティピキャンプのオーナーはシャブシャブの残りの入ったナベをサッと手に取ったのです。

その瞬間、周囲にいた日本人全員が"No!No!!"と叫びます。ティピキャンプのオーナーは"このままにしておくの??"私は"いいからそのままにしておいて"ティピキャンプのオーナーは私達が、食事の用意をするだけでなく、後片付けも自分達だけでやろうとしているのだと誤解して"料理はあなた達がやってくれたんだし、あなた方はゲストなんだから後片付けは私がやります"と言います。酔っぱらって、英語が上手く出てこない私は"とにかく、そのままナベとライスは置いておいて"。

疑問符だらけのティピキャンプオーナーにデイブが助け船を出します。"この連中は時々、奇妙な事を言うけど、気にしないで、言うとおりにしておいて。"

翌朝、寝惚け眼で起きてきた私とO氏。おもむろに、キッチンに火を起こして、昨日のライスをナベに投入。タマゴをブチ込んでオジヤの完成。そしてそれを当然のように日本人全員が食器を持ってナベの周囲に集ります。

それを見ていたティピキャンプのオーナーは、皆が何の説明も受けぬままにその残飯オジヤを当然のごとく食べはじめるのを見て、ようやく状況が飲み込めた様子で、自分も食器を手にナベの元へ。そして、その中に昨日とは違う料理ができあがっているのを見て驚愕。それを口にして更に驚愕。私に"キミ達、日本人は何とスマートなんだ!!。そして何とスバラシイ文化を持っているんだ!!"と。

言われている私はまだイマイチ目が覚めておらず、心の中で"この人、何を興奮してるのかな。"と。結局、わかりませんでした。

その後、ガイドのデイブが時々、"ヴァルハラティピキャンプのオーナーが日本人の食習慣にイタく感動していた"と言っても、なかなかピンと来なかったのですが、最近、ロハスなどというカタカナが流行しているのを見ているうちに、ふとこの事が頭をかすめて、突然、形を結んだのでした。

自然との調和を目指し、研究し、実践しているティピキャンプのオーナー。その人物をいとも簡単に感動させた、一般日本人の"日常"生活。欧米のロハスを学ぶのも良いけれども、日本の生活習慣をもう一度見なおしてみるのも良いかもしれませんね。


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