顧客対応

　私がまだPC9801NS/Rというノートパソコンを使用していた頃の話。つまりWindows95なんて世の中に存在しなかった時代ですが、航空会社の予約システム関連の仕事をしている人物と居酒屋で飲んでいた時に、”パソコン通信“なるものについての話題となりました。その人物の”ビデオしか見る事ができなかったテレビにアンテナを繋いで放送を見る事ができるようにした感じのものです“。この言葉にいたく感銘を受けた私は早速”パソコン通信“に必要な物資と基本的な知識をその人物から聞き出して週末には秋葉原へ向かったのです。

　秋葉原にはその頃からすでにパソコン量販店的なお店が存在し、そのうちの一軒に入った私は“モデム”なるものの多彩な品揃えに目を見張り、動揺を隠す事ができませんでした。どの品物を買ったらよいのか判らない私は応対に忙しそうな店員の手が空くのをじっと待って自分の所有しているPCの形式等を告げて“どの製品がよいのでしょうか”と質問したわけです。応対してくれた店員は数多くのモデムの中から４点ほどのモデムを出して“このあたりが対応機種になりますね。”とのこと。

とはいえ、あまり予備知識も持ち合わせていない私はこの４つの機械の違いが判りません。デザインと価格が違うのはわかりますが、通信速度などは同じようです。そこで更に“それではこの４点の違いを教えていただけませんか？”と尋ねたのです。すると店員は一言。“普通は皆さん雑誌とかで自分で機種を決めて来るわけですからねぇ”

　私は“それじゃ、あんたは何のためにいるんだよ”ととっさに浮かんだ言葉をかみ殺したうえで“聞き方が悪かったですね。それではあなたが私の立場ならどれを買いますか？”と聞きなおしました。”うーん、これかなぁ。安いから。“結局、私は”お忙しいところお邪魔しました。”とその店を何も買わずに立ち去り、近くのまったく店員が顧客応対をしない別のお店でその【これかなぁ。安いから】を買いました。

　さて、話は変って自分の本業の話。先日、電話でソウル往復航空券の問合せを受けたのです。“○○月ＸＸ日出発で▼▼月◎◎日帰国の一番安いソウル往復航空券はいくらですか。”とのご質問です。私は“時間帯とかは気にしますか？それとも遅くに現地到着、午前中現地出発のフライトでもかまわないですか？”と尋ねました。すると“ハァ？そんなこと聞いてるんじゃなくて、一番安いものを教えてって言ってるのよ！”

　うーん、私の接客は今の世の中では“余計なお世話”なのかなぁ。

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