旅のウンチク

旅行会社の人間が描く、旅するうえでの役に立つ知識や役に立たない知識など。

あたりまえの便利

2007年10月16日 | ライフスタイル
過去、私がアジアの国々を旅していた時に手放せなかった装備があります。それは蝋燭。いや、キャンドルと言っておきましょうか。それも特にアウトドア用など凝ったものではなく、普通に町のバザールで手に入れたものです。

日本では100万人のキャンドルナイトなどなど、特別な機会にしかもはや使わなくなった蝋燭ですが、アジアの旅では場所によっては現役の必需品です。日本のように当り前に電気が来ている社会に住んでいれば、ロマンチックな気分にもなるでしょうが、頻繁に停電する国では、停電となると、街灯を含めて街中のあらゆる明りが消えてしまうわけですから、天候が悪い場合などは、キャンドルナイトなどという余裕の世界ではなく、自分の手も見えないほどの暗さです。実際、私が泊まっていた安宿の多くでは、たいていの場合、部屋の中でキャンドルを灯した痕跡がいくつも残っていて、そういう意味では旅人の標準装備と呼べるでしょう。

夜、まだ起きているうちに停電となって、安宿の部屋に蝋燭を灯す時、よく思い出したのは子供の頃。子供の頃は近所に落雷などがあると簡単に停電になりましたし、そんな時、母はやはり蝋燭を灯していた記憶があります。そして、やはりあの頃は各家庭に蝋燭は必需品だったのだなとも思うのです。

停電となると、明りだけではなく、冷蔵庫も停まります。そして、それが1日に何度も当然のように発生し、しかも外気は熱帯の世界。そうなると食料品の備蓄は、ほぼ効かない事になります。そのため、これらの地域では意外と新鮮な食料品を口にしているのだなと感じたりもしたものです。

毎日、当り前のように電気やガスや水道を使う事ができる今の我々の日常はそのような世界から比べると便利なものですね。

私は幼ない頃には電気&蝋燭の世界をわずかですが体験し、人生の多くを電気全開の世界で過ごし、旅に出て再び電気&蝋燭の世界へ戻ったわけですが、そこで気がついたのは、いつのまにか自分の中で"便利"が"当り前"に変化してしまっていたという事です。もちろん、これを社会の進歩と呼ぶ事もできるわけですが、一方で自分の環境に対する適応力を下落させているのかもしれません。私にとっては停電の際に蝋燭を灯せば足りる事でした。もっと適応力のある人なら夜になったら寝てしまうだけでしょう。しかし、"旅にノートパソコンは必需品"と考えている人にとっては一大事でしょう。

電気だけでなく、こういう物は沢山あります。例えば1日に一度はコンビニに寄る人は、多分、日本以外の国では大変な不便を感じる事になると思います。

様々な人々の努力の上に成り立っている便利な社会を活用する事はかまわないのですが、それが当たり前だと感じるのではなく、"便利だな"と感じる心を時々呼び醒してみるのも良いのではないでしょうか。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿