旅のウンチク

旅行会社の人間が描く、旅するうえでの役に立つ知識や役に立たない知識など。

時間と効率の脈絡ない関係

2016年07月25日 | ライフスタイル
 スーパーカブで旅するタイ北部の企画の最初の頃はバンコク往復のシンガポール航空(今はもうなくなったバンコク直行路線)を使っていて、復路はバンコク夜発のフライトでした。それまでオセアニア方面やカナダのツアーが中心だった私にとってとても久しぶりの中距離路線。カナダの場合でバンクーバーまでの直行便が8時間強である事を考えればタイへのフライトは2時間近くも短いので体力的に楽だと考えていたのですが、実際には現地から帰国するとなかなか疲れが取れず、”年をとったのかなぁ”と感じたりしたものです。

 喫煙していた頃は飛行時間の長さは自分にとても堪える事項だったのですが、タバコを吸わなくなってからは特にこれといって機内で苦痛なことはありません。飛行機での移動も旅の内と考えている私としては、機内サービスを放棄した飛行機に乗って、”いかに安く旅したか”を自慢のネタにする趣味もありませんから、機内ではワインやビールを飲んで、機内食を賞味して、映画を見て、機内での時間もそれなりに楽しんでいるます。ただしフライトが夜便となると話は少し変わって、機内の時間は専ら睡眠時間です。

 バンクーバーから東京までのフライトであれば、機内食を食べたりする事に時間を費やしても6時間前後は眠ることができます。ところが、バンコクからの夜便となると眠れて5時間前後。これなら日本に着いたら寝不足なのは無理もありません。この事に気が付いて以降、空港の搭乗ゲート前の待合室で極力眠ろうと考えはするのですが、添乗員たる私としては飛行機に乗り込むまではあまり油断しているわけにもいきません。

 幸い、スーパーカブで旅するタイ北部タイ&ラオス路線バスの旅の帰国日は土曜か日曜に設定していることがほとんどなので、帰国した日は洗濯機に洗濯物を放り込んだらすぐに睡眠不足の回復に全力を尽くすようにしていますが、少し遠回りしてでもあと3時間位長く飛んでくれないかと思えたりもします。

 時間が短い事が良い事という傾向に何事も流されてしまいがちですが、実はそうとも限らないのです。

 過去に何度か、私の個人的な趣味として自家製パンを焼いているという事に触れましたが、これは”時々気が向いたら焼いている”のではなくて、自分が食べるパンはすべて自家製しているという頻度です。

 最初はドライイーストを買ってきて焼いていたパンも今は自家製天然酵母で焼いているのですが夏場になるとなかなか衛生管理が完璧でないためか雑菌が繁殖してしまう事も多くてドライイーストに戻る事もあります。

 自家製天然酵母で焼く場合、とにかく発酵に時間がかかることが最初の頃の悩みだったのですが、今の悩みはドライイーストに戻ったときに発酵時間が短すぎる事です。自家製天然酵母なら夕食後、食器を洗った勢いでパン種をこねて、翌朝まで放置すればちょうど8時間位の一次発酵の時間が稼げます、朝早起きして成型して最終発酵させてオーブンで焼結。ちょうど良いサイクルです。自宅兼事務所のE&Gではこの日はパンを焼く良い香りが楽しめます。

 ドライイーストだと一次発酵が夏場の気温なら一時間弱。タイミングを逃さないように見守らなければなりませんし、その後、成型から最終発酵の時間も短く、なおかつ過発酵までの時間さえ短いのでずっと監視できる休みの日しかパンを焼くのは難しい。”寝てる間に”というわけにはいきません。

 何事も時間が短ければよいというわけではありませんね。

 そんな事を考えるうち、”何もしないけれど必要な時間”は睡眠時間と同時進行させるのが効率よいのだと気が付きました。何事も”効率”という観点で測る事自体、少し気持ち悪い観点ですが、それでも”何事もスピード”という観点にストップをかける別の視点をもたらしてくれる事でもあると思います。

 今は新幹線で京都まで2時間半程度。京都で10時に始まる会議には東京を7時半に出れば間に合う便利な時代ですが、大抵の人にとって朝7時半に東京駅に行くのは思いのほか早起きではありませんか。京都まで9時間位かかる簡易寝台の夜行列車が存在したら、前夜23時前後に乗って、ビールでも飲んで駅弁食べて、翌朝京都で朝食食べて、それから会議のほうがずっと楽な気もします。何より9時間にかけて楽しめる列車の”旅”の魅力。


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