旅のウンチク

旅行会社の人間が描く、旅するうえでの役に立つ知識や役に立たない知識など。

犬を食べる村

2009年04月28日 | 旅の風景
かれこれ20年近く前の話。私はその時、チェンマイからのトレッキングツアーに参加していました。この時で既に何度目かの参加となるタイ北部のトレッキングツアーは、徒歩、象、ボート、筏などを使って山岳小数民族の村々を巡り、宿泊も小数民族の村に泊るツアー。ただ、チェンマイからのツアーは年々インフラ整備が進んでいる嫌いがあって、この時のツアーも、宿泊先の村には、もはや外国人旅行者を迎えるためにトイレやシャワーが設置されていたり、私達が村に到着する直前に民族衣裳に着替えているのではないかと疑いたくなるような人々の行動に若干興覚めしていました。同じグループにはカナダ人やフランス人の旅行者がいるのですが、彼らにとってはアジアであるだけで非日常ですから、そんな妙な疑いを抱くこともなく楽しんでいる様子です。

アカ族の村を宿泊先とする日、村に到着する前に、このツアーのガイドを勤めるタイ人ガイドが我々に”アカ族は犬を食べる習慣がある。"と説明しました。ただ、日常的に食料としている訳ではなく、なにか特別な事があった際に皆で犬を食べるとの事でありました。

さて、村に入っていくと意外な事に他の村と同様、犬は飼われています。まあ、鶏をたべる村でも鶏が飼われていますからあたりまえではありますが、どうしてか、犬を食べる村には犬がいないようなイメージが私にはあったわけです。

本日の宿舎に割当られた小屋に荷物を下すとガイドがやってきて皆を少しはなれたところにある小屋へ案内しました。中を覗くと皮を剥がれた犬が台の上に乗っていて、犬を料理している真っ最中です。ガイドが言うには、この村で家を1軒新築したお祝いをするのだとの事なのですが、どうもヤラセっぽい感じでもありました。…多分観光客向けのヤラセでしょうね。

さて、犬料理についてです。犬を料理していた村の人達は案の定、”あんた達も食べるか?”という話になって、このあたりもヤラセっぽい感じだったのですが、意外な事に同じグループの欧米人旅行者は口を揃えて”いらない”と。ガイドの顔を伺うと少し拍子抜けした感じです。これにより、ガイドはこの日の夕食を作るひつようが発生したのですが、”食べる”と言った私だけは別です。

ガイドが用意した食事を他のメンバーに混ざって食べていると、犬を料理していた人々が呼びに来ました。他のメンバーに”ホントに犬食べるの?”と言われながら場所を移動した私は村の人々に混って犬を食べてみます。少しカレー風味で調理された犬肉は、何もなく不可もない料理に仕上がっておりました。

翌日、他のメンバーと一緒に朝食を食べて村を歩いていると、昨日は吠えなかった村の犬が激しく吠えかかってきました。最初は見慣れない人間に対して番犬としての仕事を果しているのだと思っていたのですが、一緒に歩いているカナダ人旅行者が、”オマエは犬を食べたから、オマエに吠えてるんだ”と言いはじめました。最初は、そんな訳がないと思っていたのですが、彼らが逸れを証明するために私から少し距離を置いて歩きはじめると、明かに私だけに犬が吠えている事がわかりました。不思議なことに、私と一緒に犬をたべた村人には見向きもせず、何頭もの犬が私だけに吠えかかります。

犬なりの感覚で自分の仲間を食べた他所者に怒りをぶつけていたのかもしれません。


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