旅のウンチク

旅行会社の人間が描く、旅するうえでの役に立つ知識や役に立たない知識など。

ある旅人の帰国

2007年10月31日 | 旅行一般
旅行から帰ったお客さまから帰国のご報告をいただく事があります。メールであったり、電話であったり、あるいは立ち寄っていただく方もおられて、新しい情報を教えていただいたり、現地で見つけた面白ネタを教えていただいたり、あるいは旅行中感じた事をストレートに話していただいたり、いろいろです。私の側は、とりあえず私の手配が命に関わるほどの事態は巻き起こさなかった事にホッとすると共にその方の旅がどんな物だったのかに思いを馳せるわけです。

時には羨しいほどに良い旅をしてきた方もおられますね。今年、今のところ(まだ今年は終わっていませんから)私の独断と偏見において1位に位置しているのはインドとスリランカに行かれたSさん。

出発前から、何度か足を運んでいただいて、何時間も旅について語り合った後、旅立っていった彼は、帰国したその足で、荷物を抱えたまま立ち寄ってくれました。日に焼けて、少し痩せたのか線が鋭くなった顔つきが旅立つ前より精悍なイメージを醸し出します。

一頻り今回の旅で出会った様々な出来事を話した後、彼は話します。

"今回、宗教紛争なんていうものはこの世の中に存在し得ないという事を感じましたよ。彼らの宗教観で積極的に人を殺すなんてありえない。"

これは私も感じていた印象だったので、

"そうですね。宗教紛争に見えるけど、だいたいが経済紛争なんですよ。"

と答えます。

"そうそう。それがよ~くわかりました。"

私は同じ事を感じるようになるまで、ずいぶん多くの国を訪れたものです。それを"たった"の数週間の旅で掴んできたわけですから、"本当に良い旅してきたね。"と心から感じさせられました。

彼は続けます。

"僕はね、この歳になってからインドに行って本当によかったと思ったんですよ。もし、もっと若い頃行ってたら、こんなに色々感じたり考えたりするだけの基礎になる経験も知識もない。日本で社会人として暮らしていて、社会を知って、それから、違う社会を見たからこそ見えるものが沢山ありました"

なるほど。だから私は同じ事を感じるのに時間がかかったわけですね。
とはいえ、私は自分については全く逆の印象を持っています。

"その点、僕は、全く逆。若い時に何にも考えずに旅に出たおかげで、自分が消化できないものを消化しようとして、いろいろ考えるようになったし、色々な事に興味を持つようになった。旅に出なかったら、何でもわかっていると自分で勘違いしながら、ずるずる毎日を送っていただけかもしれない。"

と話しましたが、 どんなタイミングであれ、自分で感じる事、感じるための感覚器を常に作動させて旅をする事、その事が自分を変えてくれる事がたくさんあると思います。

日常では味わえない贅沢を味わうために海外に行くのもよいでしょう。ノンビリするために旅行に行くのも良いでしょう。でも、どんなに良いホテルに泊まったとか、そんな事は旅が良い旅だったかどうかの基準ではありませんね。


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