金曜日の朝8時前、会社の更衣室で制服に着替えていると携帯が鳴りました。
主人からでした。
出るとまったく知らない人の声で、今、救急車でご主人を搬送しているのですぐに病院へ来て欲しいと言われ搬送先の病院名を告げられました。
とりあえず制服のまま、上司に事情を話して駆けつけました。
救急の待合室で2時間ほど待って、ようやく処置室に呼ばれましたが、頭を打って出血しており今検査をしていること、検査結果にもよるが今日はこちらで措置入院となるので後で入院手続きをしてください、という担当女医の5分ほどの簡単な説明で、また待合室で待つように言われました。
救急外来はとにかく待たされるということがわかっていたので、財布や手帳と一緒に朝刊と文庫本を持ってきていて待つこと自体は苦になりませんでしたが、やはり主人の状態が気になって落ち着きませんでした。
その後1時間ほどして部屋に呼ばれ、主人の最近の体調等を訊かれました。
先の処置室で説明してくれた女医とは別の男性医師でしたが、こちらの顔も見ずパソコンのモニターに向き合ってキーボードを忙しなく叩きながらの問診で、非常にぞんざいな物言い。
しかし、この男性医師との出会いが不幸中の幸いだったのです。
日頃の飲酒量を訊かれて、缶ビール……と言いかけたら「350? 500?」と半ば怒鳴り声で畳みかけるように訊いてきたので、質問に答える気を無くし「恐れ入りますが先生のお名前を教えていただけますか」と言いました。
名札はつけているけれど、こちらからは見えない位置につけていたのです。
男性医師は一瞬えっ? と固まりましたが、名札をこちらに向けて名乗り、私はそのフルネームを手帳に記入しました。
その瞬間から男性医師の態度は急変し、こちらに向き直り敬語を使って話しかけて来ましたが、私は先ほどこちらで措置入院をするように言われ承諾したが撤回する、処置が終わった時点で連れて帰る、と言って部屋を出ました。
男性医師は「何かお気に触ったのなら謝ります、措置入院を取り止めるのは……」と慌てて追って来ましたが、今お話しした通りです、処置が終わったら呼んでいただきたい、とだけ答えて待合室の椅子に腰掛け本を開きました。
すぐに先の女医が飛んできて、措置入院の必要性を訴え、処置が終わっても自宅に帰せない、ここがダメであれば別の病院へ搬送する必要がある、と言いました。
待合室で待っている間、脳外科のある西宮市内の病院を検索していたら去年入院した病院が出ていたので、その病院名を告げ、そちらに搬送してもらうようお願いしました。
受け入れてもらえるかどうかわかりませんでしたが、とにかくこんな病院に大事な夫の命を預けられるか! という一心でした。
幸いその去年入院した西宮市内の病院(おネエの看護士さんがいた病院)が受け入れを承諾してくれ、処置が終わった夫は救急車で搬送されることになりました。
運びこまれた病院を出たのが午後2時半過ぎで4時までに向こうの病院へ行くように言われたので、タクシーで会社へ戻り、西宮の病院へ私も後を追いました。
男性医師の態度もそうでしたが、実はこの病院ダメだ、と感じたのは待合室のトイレでした。
夫の勤務先から搬送されたその病院は、その地域ではおそらくいちばん大きな病院でした。
ホテルと見紛うほどの高層建築で、普通外来のあるロビーは吹き抜けがあり天井は高く、クラシック音楽が流れる非常に立派な病院でありましたが、救急外来は暗く汚く、トイレはおそらく掃除もきちんとしていないであろうと思われるほどでした。
同じ病院内でのこの差はなんなんだ。
そして入院の説明でひっかかったのが、大部屋を希望しても大部屋がいっぱいで個室しか空いていなかった場合、普通は個室料金は請求されないのですが(今までの病院はどこもそうだった)、ここは個室料金をいただきますということでした。
それもべらぼうに高い。
まあこれだけの外観の病院なので覚悟はしていたけれど、やはり腑に落ちない。
そう、腑に落ちないことが多すぎました。
救急措置担当の女医の見立ても、てんかんによる転倒で頭を打ったのではないかというもので、まったくの見当違いだと思われる言動が見受けられました。
もし万が一のことになっても、ここでは絶対にそうさせたくはない! と強く思いました。
西宮の病院で病室に落ち着いた夫は、意識も戻ったようで、普通に会話することが出来、主治医の先生もこのまま異常がなければ週明けにも退院できるでしょうとのことで、ホッと胸を撫で下ろし私は家に帰りました。
翌朝、病院へ行く前に夫にLINEをしましたが、返信がありません。既読にもならない。
イヤな予感がして急いで病院へ行くと、変わり果てた夫がいました。
主人からでした。
出るとまったく知らない人の声で、今、救急車でご主人を搬送しているのですぐに病院へ来て欲しいと言われ搬送先の病院名を告げられました。
とりあえず制服のまま、上司に事情を話して駆けつけました。
救急の待合室で2時間ほど待って、ようやく処置室に呼ばれましたが、頭を打って出血しており今検査をしていること、検査結果にもよるが今日はこちらで措置入院となるので後で入院手続きをしてください、という担当女医の5分ほどの簡単な説明で、また待合室で待つように言われました。
救急外来はとにかく待たされるということがわかっていたので、財布や手帳と一緒に朝刊と文庫本を持ってきていて待つこと自体は苦になりませんでしたが、やはり主人の状態が気になって落ち着きませんでした。
その後1時間ほどして部屋に呼ばれ、主人の最近の体調等を訊かれました。
先の処置室で説明してくれた女医とは別の男性医師でしたが、こちらの顔も見ずパソコンのモニターに向き合ってキーボードを忙しなく叩きながらの問診で、非常にぞんざいな物言い。
しかし、この男性医師との出会いが不幸中の幸いだったのです。
日頃の飲酒量を訊かれて、缶ビール……と言いかけたら「350? 500?」と半ば怒鳴り声で畳みかけるように訊いてきたので、質問に答える気を無くし「恐れ入りますが先生のお名前を教えていただけますか」と言いました。
名札はつけているけれど、こちらからは見えない位置につけていたのです。
男性医師は一瞬えっ? と固まりましたが、名札をこちらに向けて名乗り、私はそのフルネームを手帳に記入しました。
その瞬間から男性医師の態度は急変し、こちらに向き直り敬語を使って話しかけて来ましたが、私は先ほどこちらで措置入院をするように言われ承諾したが撤回する、処置が終わった時点で連れて帰る、と言って部屋を出ました。
男性医師は「何かお気に触ったのなら謝ります、措置入院を取り止めるのは……」と慌てて追って来ましたが、今お話しした通りです、処置が終わったら呼んでいただきたい、とだけ答えて待合室の椅子に腰掛け本を開きました。
すぐに先の女医が飛んできて、措置入院の必要性を訴え、処置が終わっても自宅に帰せない、ここがダメであれば別の病院へ搬送する必要がある、と言いました。
待合室で待っている間、脳外科のある西宮市内の病院を検索していたら去年入院した病院が出ていたので、その病院名を告げ、そちらに搬送してもらうようお願いしました。
受け入れてもらえるかどうかわかりませんでしたが、とにかくこんな病院に大事な夫の命を預けられるか! という一心でした。
幸いその去年入院した西宮市内の病院(おネエの看護士さんがいた病院)が受け入れを承諾してくれ、処置が終わった夫は救急車で搬送されることになりました。
運びこまれた病院を出たのが午後2時半過ぎで4時までに向こうの病院へ行くように言われたので、タクシーで会社へ戻り、西宮の病院へ私も後を追いました。
男性医師の態度もそうでしたが、実はこの病院ダメだ、と感じたのは待合室のトイレでした。
夫の勤務先から搬送されたその病院は、その地域ではおそらくいちばん大きな病院でした。
ホテルと見紛うほどの高層建築で、普通外来のあるロビーは吹き抜けがあり天井は高く、クラシック音楽が流れる非常に立派な病院でありましたが、救急外来は暗く汚く、トイレはおそらく掃除もきちんとしていないであろうと思われるほどでした。
同じ病院内でのこの差はなんなんだ。
そして入院の説明でひっかかったのが、大部屋を希望しても大部屋がいっぱいで個室しか空いていなかった場合、普通は個室料金は請求されないのですが(今までの病院はどこもそうだった)、ここは個室料金をいただきますということでした。
それもべらぼうに高い。
まあこれだけの外観の病院なので覚悟はしていたけれど、やはり腑に落ちない。
そう、腑に落ちないことが多すぎました。
救急措置担当の女医の見立ても、てんかんによる転倒で頭を打ったのではないかというもので、まったくの見当違いだと思われる言動が見受けられました。
もし万が一のことになっても、ここでは絶対にそうさせたくはない! と強く思いました。
西宮の病院で病室に落ち着いた夫は、意識も戻ったようで、普通に会話することが出来、主治医の先生もこのまま異常がなければ週明けにも退院できるでしょうとのことで、ホッと胸を撫で下ろし私は家に帰りました。
翌朝、病院へ行く前に夫にLINEをしましたが、返信がありません。既読にもならない。
イヤな予感がして急いで病院へ行くと、変わり果てた夫がいました。